『ナタリー』

欲しいのは優しさではなく
その目を見た日に運命られた何か


『ナタリー』


赤い革張りのソファに身体を預け
歌うような「また明日」を聴く
また明日があることを喜び
その声の響きに震えながら眠る

突き放す目が指が声が
いつか自分名義のものになるよう
泣き言も言わずに日々を過ごせば
また明日また明日と続いてく

夜しか逢えない人ならこんなにも
苦しまずに済んだだろうか
でも今ではこの苦しみも
素晴らしいものだと思えるんだ

見た目より器用な指は
繊細な仕草で柔い部分だけ
ちゃんと痛めつけてくれるから
この目を刳り貫いて贈りたくなる

だからお返しにその目も
刳り貫いてガラス瓶に飾りたい
同じ棚に二人の眼球が並ぶなら
それはどれほどの幸せだろうか



「優しくしたい気持ちを突き放すのはいつも君のくせに」

『ナタリー』

『ナタリー』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-22

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