『ナタリー』
欲しいのは優しさではなく
その目を見た日に運命られた何か
『ナタリー』
赤い革張りのソファに身体を預け
歌うような「また明日」を聴く
また明日があることを喜び
その声の響きに震えながら眠る
突き放す目が指が声が
いつか自分名義のものになるよう
泣き言も言わずに日々を過ごせば
また明日また明日と続いてく
夜しか逢えない人ならこんなにも
苦しまずに済んだだろうか
でも今ではこの苦しみも
素晴らしいものだと思えるんだ
見た目より器用な指は
繊細な仕草で柔い部分だけ
ちゃんと痛めつけてくれるから
この目を刳り貫いて贈りたくなる
だからお返しにその目も
刳り貫いてガラス瓶に飾りたい
同じ棚に二人の眼球が並ぶなら
それはどれほどの幸せだろうか
「優しくしたい気持ちを突き放すのはいつも君のくせに」
『ナタリー』