「海と空」

 碧い海
 底はつめたく
 砂のような泡がすだく
 泡はひしめきて
 かたち成す
 山百合の花

 泡の花に
 瞳は無く
 唇も無く
 心臓の全身で
 海のふかくに座主
 眠るは儚い夢の中
 水を貫いた頭上には
 行方の測り知れぬえいてるを染めたあおが広がると言ふ
 この深海より明いか
 光を吸って
 魚の代りに鳥が歌って泳ぐらしい
 名前は何と言うのだろ
 いつから此世に居るのだろう
 山百合の花は水の底
 十字架のように眠り続けて
 何処にか居る双子の生を祈っている
 もはや泪も海となった
 草も魚もたくさん死んだ
 それでも泡の白花は全身で祈る
 心臓だけの全身で
 有史以前の記憶をよすがに
 まだ見ぬ双子の生きるを願って…

「海と空」

「海と空」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-14

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