『嘘吐き人魚』

嘘を吐きすぎたお姫様に
真実の愛なんて舞い降りるでしょうか

でも先生、好き


『嘘吐き人魚』


君は繊細すぎると貴方が言うから
繊細な女の子になろうとしたわ
でもさ
アタシ、意外と図太いの

まだ嫌いと言われた訳じゃない
まだ会わないと言われた訳じゃない
言い聞かせて
電話する前は死ぬほど緊張した

何をどうしたって
叶うとは思えない恋だから
今更壊れる物もないよね

貴方の細い指を見ながら
もし触れたらどうなるか夢想する
たぶんアタシが壊れるわ

悪戯に構うから
どうしようもなく惹かれた
アタシを褒めない癖に
アタシを特別扱いしないで

もう二度と会わないって
きっと会えないんだなって
痛いくらい思い知りながら
最後に言った好きを流したりしないでよ

知ってたんだから
本当にアタシを好きだったでしょ
抱き締めたいって
二人きりの部屋で思ったでしょ

後ろ手で鍵をかけて
笑えるほど空虚な密室で
言葉は空回りしてたよ
アタシ知ってた

欲しいのは貴方です
言えないのは本気じゃなかったからだなんて
本当におめでたいのね

本気だった
愛してた
キスしたかった
抱かれたかった

誰と間違えてるんだなんて
嫉妬?
独占欲?
まぁ何だっていいの

未だに愛なんて分からない
海の底で震えてるだけよ
キスしてくれなかったから
もう人間にはなれないの

嘘吐き
先生の方がずっと
嘘吐き



「嘘吐きだから、好き」


『嘘吐き人魚』

『嘘吐き人魚』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-13

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