zoku勇者 ドラクエⅢ編 6章

番外編

番外編1

……何処かの地に有るすごろく場。今日も元気な罵声が場に響き渡る……。
 
 
「……はあ、ジャミル戻って来ないね……」
 
「ホント、お昼も食べないで……、大丈夫なのかしら……」
 
「みんな食べちゃおうよお!」
 
ピクニックシートを広げて呑気に昼食を取りながら、ジャミルを待つ、
アルベルト、アイシャ、ダウドの3人。
 
 
「……ちーきーしょーおおー!!」
 
 
「残念でしたねえ……、毎度どうも……」
 
「……あの声、また駄目だったみたいだね……」
 
「……ジャミルったら……」
 
「アル……、何とかしないと先に進めないよ……」
 
ダウドが困った顔でアルベルトを見た。
 
「う~ん……」
 
そこへ頭タンコブだらけのジャミルがぬっと現れた。
 
「あ、ジャミルお帰りなさい……」
 
「また凄いね……、どうしたの、その頭……」
 
「アル、べホイミ!」
 
「それはいいけどさ……」
 
アルベルトがしぶしぶジャミルの頭に回復魔法を掛けた。
つまんない事でMPを使いたくないんである。
 
「あー、思い出しても腹立つ!ゴール寸前で落とし穴だ!落とし穴!」
 
「で、今日はもうやめるんでしょ?」
 
「もう一回行ってくる!すごろく券よこせダウド!」
 
「……」
 
「……」
 
アイテム管理はダウドの担当である。
 
「……ハア……」
 
すごろく券を握りしめてジャミルがドタドタ走って行く。
 
「……今日……、何回目のもう一回行ってくる!……だっけ?アル……」
 
「10回目……」
 
「……」
 
 
「えーっと、ダイスの目は6と、6マス……何!?6マス進んで6戻れだと……!?
これじゃ只のアホ……うわわわわ!」
 
6マス進んで6マス戻るジャミル。こんな調子なので一向にゴールへとたどり着けない。
 
「おっと、宝箱だ!中身はと、ひのきの棒……なめるなあーっ!!」
 
ジャミルの声は相当大きい為、すごろく場全体に声が響き渡り遊びに来ている人達は
皆くすくす笑っている。……アルベルト達他のメンバーは顔が真っ赤になる……。
 
と、其処へジャミルが再び皆の前に姿を現した。
 
「……また駄目だったんだね……」
 
「もういい加減にした方がいいよお!!」
 
「少し休まないと疲れちゃうわよ……?」
 
「…こんなに頑張ってんのに……、何で駄目なんだよ……、俺……、俺……、うう……」
 
「ちょ!?ジャミル……?」
 
「どうしたのさ……、いきなり泣き出して……」
 
「!?……待って!何か様子が変だわ!」
 
ジャミルの状態の変化にアイシャがいち早く反応する。
 
「……あの兄さん……、今日はもうお終いかな……、うん……?」
 
「おじさあーーん!」
 
アイシャがジャミルをズルズル引っ張り、受付のおっさんの所まで連れて行く。
 
「何するんだー、アイシャー!やめろー、はなせー!いたいー!うう……」
 
「どうかしたのかい……?」
 
「はい、この人様子がおかしいんです……」
 
「うう~……」
 
「……これは……、性格変えられたな……」
 
「ええーっ!?」
 
「なきむし……、になってるよ……、元の性格はどんなんだったの……」
 
「おちょうしもの……です」
 
「どうりで……すごろく場ではまれに有るハプニングイベントの一つだよ……」
 
「そんな……」
 
 
……
 
 
「ううー……」
 
「アルうー!、何とかしてよー!私、こんなジャミル見てられないわ!!」
 
「気持ち悪……」
 
「うーん……、全くこの馬鹿は毎回毎回……、たく、もう……」
 
……グロ光景にアルベルトも頭を抱える……。
 
「……どうせ俺はバカだよ……、ぐすっ……」
 
「…あっ、でも大丈夫だよ!」
 
アルベルトが思い出した様にポンと手を打った。
 
「えっ……?」
 
「ほら、旅の途中で彼方此方で手に入れた、読むと性格が変わるらしき本があった筈!」
 
「あ、なーるほどね!」
 
ダウドもうんうんと頷く。別に性格も変える必要もないので、唯のコレアイテムとして
使い道もなく、そのままになっていた。しかし、こんな処で必要になるとは夢にも思わなかった。
 
「じゃあ……、おちょうしものになる本を読ませれば……」
 
「元に戻るって事だよ!」
 
「……俺わあ……、読書なんか……、ぐす……、嫌いだあー……、ううう……」
 
「つべこべ言わないのっ!!」
 
「怖いよ~……、鬼ババだあー……、ううううー……」
 
 
「……しゃき~ん……、うふふふっ!」
 
 
「アイシャ落ち着いてっ!ダウド早く!本!本!」
 
アイシャを取り押さえながらアルベルトが喚く。
ダウドが慌てて道具袋から本を探してみるが……。
 
「……うわー!ぐちゃぐちゃで分んないよおー!!」
 
「きちんと整理しておかないからでしょ……!!」
 
「だって……、食べかけのお菓子とか……、の、呪いの藁人形……???とか、
訳わかんない物まで入ってるし……、泣きたいのはこっちだよお……、あ、一冊あった!」
 
「あった!?」
 
「うん、はい……」
 
ダウドがアルベルトに本を手渡す。
 
「ホラ、読むのっ!」
 
「……うう~……」
 
「どう……?」
 
「アイシャ、ちょっと尻触らせろ……、小せえケツだなあ……」
 
「!きゃーっ!何すんのよーっ!!」
 
「む、むっつりスケベ……?」
 
「……違うじゃないか!バカっ!」
 
「だってえー……、本にタイトルが書いてないんだよおおーっ!」
 
「ジャミルのバカーーっ!!」
 
アイシャにボカスカ殴られ、ジャミル、その場に倒れる……。
 
「次貸して、次!!」
 
「はい……」
 
「今度こそ……」
 
「アイシャ……、今夜、星の見える丘で二人だけでデートしよう……」
 
「ロマンチスト……」
 
「う、うげえええ……、吐き気が……、うわ、くっさ~!!」
 
「きゃー!こんなジャミルいやーっ!!」
 
ジャミル、再びアイシャに殴られる……。
 
「う……、つ、次……!!」
 
「てめっ!!ダウドこの野郎!!殴らせろーっ!!」
 
今度はまるで、ジャ……いあーんである。
 
「……らんぼうもの……」
 
「イタタタタ!これはあんまり元のと変わってないよおーっ!」
 
「でもいやーっ!!」
 
「次……」
 
「俺の名は江戸川……」
 
「きれもの……」
 
「いやーーーっ!!」
 
「……次ーーーっ!!」
 
「な、なにをするー!きさまらーっ!」
 
「!?」
 
 
…夕方になりすごろく場に来ていた人達は皆引き上げていき、
残ったのはジャミル達だけになった……。
 
「……疲れた……」
 
「もういやだよお……」
 
「……ジャミルのバカ……」
 
「皆……、大丈夫かい……?」
 
気を遣って受付のおっさんがアルベルト達に健康茶を差し出す。
 
「あ、有難うございます……」
 
「早く元に戻るといいな……」
 
「……」
 
当の本人はいっぴきおおかみになってしまったらしく皆から離れ一人で蹲ってしまった。
 
「全くもー……、何やってんだよお……、人の気も知らないで……」
 
疲れたのかダウドも座り込んでしまう。
 
「ねえ、アル……、どうしよう……、もし……、このままジャミルが元に戻らなかったら……」
 
「大丈夫だよ、アイシャ……、ジャミルはきっと元に戻るって信じよう、ねっ……?」
 
今にも泣きそうなアイシャの頭をアルベルトがそっと優しく撫でた。
 
「……アル……、うん……」
 
「でもこれが……、最後の一冊だよ……」
 
神妙そうな顔つきでダウドが本を差し出す。
 
「私が行く……」
 
覚悟した様に静かにアイシャが立ち上がった。
 
「……アイシャ……」
 
「……大丈夫、大丈夫……、きっと大丈夫……」
 
アイシャは深呼吸しながら胡坐をかいて蹲っているジャミルの傍まで近寄って行った。
 
「ジャミル……」
 
「んだあ!?うぜーなあ!俺は独りがいいんだっ!はよ向こう行けや!シッシッ!!邪魔!」
 
「……こんなに皆心配してるのに……、もうっ!何でもいいから読みなさいっ!!」
 
「な、なんだよ!……んっ!?」
 
 
(……神様……!!)
 
 
「……あ、あれ……?」
 
「……ジャミル……」
 
きょとんとした顔つきでジャミルがアイシャを見た……。
 
「……何してんだよアイシャ……、泣きそうなツラして……、なんかあった……?」
 
「もうーっ!ジャミルのバカーっ!!」
 
「イテテテテ!!だから何なんだよ!いちちちちち!こらよせってば!!アタタタタ!!」
 
「バカっ!バカっ!ジャミルのバカっ!!……もう知らないっ!!バカバカバカっ!!」
 
「やっと戻ったみたいだね……、はあ……」
 
「全く人騒がせなんだから……、まあ、いつもの事だけどね……」
 
苦笑しながらもジャミルとアイシャのやり取りを見ながら安心するアルベルトだった。
 
「よかった、よかった……、うん……」
 
受付のおっさんもハンカチで顔を拭く。
 
「……なあ、俺、何かやった?全然覚えねんだけど……」
 
アイシャはブリブリ頬を膨らませたままである。
 
「のんきだねえ……」
 
「あのねえ……」
 
アルベルトは仕方なく今までの騒動をジャミルに話した。
 
「ふ、ふーん……、性格が……、ねえ……」
 
ジャミルは困って誤魔化す様に隣でまだ膨れているアイシャを横目で見た。
 
「アイシャ……、その……、えーと、ごめん……、な……」
 
「……許してあげるから……、本当にもう……、あんまり心配させないでよ……、バカ……」
 
小声でアイシャが小さく呟いた。心配掛けないのは絶対に無理であろう。
 
「……本当悪かったよ……、アルとダウドもごめん……」
 
悪いと思ったのか、珍しく素直に謝るジャミルにメンバーはこれ以上何も言わず、
今回はこれで許してあげる事にした。……が。
 
「さて、遅くなっちゃったけどそろそろ行こうか……」
 
「……よし、その前にすごろくもう一回!」
 
 
「はい、みんな、それじゃいくよー?スリッパ持ってー」
 
 
「……せーのっ!」
 
 
……パンッ!!!!
 
 
 
END


その2

「なあ、アル」
 
「何?」
 
「……この船ってさ、誰が操縦してんの?」
 
「今頃気が付いたの……、馬鹿だねえ、ジャミルは……」
 
「うるせーよ!」
 
「勝手に動いてるんだよ……」
 
「何だ、そーなのか!変だな!あははははは!」
 
「……」
 
「ねえ、ダウド」
 
「ん?スラリン、なに?」
 
「ボク、にんげんのせかいのことおべんきょうちゅうなの」
 
「へー、えらいねえ」
 
「おしえてー、ばかってなあに?」
 
「……」
 
どう教えていいのか分らず、動きが止まるダウド。
 
「カバの反対だよ……」
 
「そーなんだあ、おしえてくれてどうもありがとうー!」
 
スラリンはぴょんぴょん跳ね飛んで行った。
 
「……無邪気なのはいいんだけど……」
 
その日の夜 休憩室で第一ラウンド。
 
「……もうーっ!ジャミルのバカーっ!知らないったら!もう知らないっ!」
 
「んだよ、おめーが悪いんだろーが!」
 
「……たく、また始まった……」
 
「アル、なんとかしてよお……、今日は多分ガーラルスピアが飛んでくるよ……」
 
「ねえ、アルベルトー、ダウドー」
 
「ああ、スラリン……、危ないから来ちゃ……」
 
「ジャミルとおねえちゃんなにしてるのー?ぷろれす?ボク、ぷろれすならしってるよー」
 
「うん、いつもの事だから……、すぐ収まるから……、向こう行ってなよ」
 
「はーい」
 
ダウドが注意するとスラリンはぴょんぴょん飛び跳ねて何処かへ行った。
 
「……」
 
更にその日 休憩室で第二ラウンド。
 
「……ジャーミールー!」
 
「んだよ、アル!」
 
「又、僕の本に落書きしたなーっ!」
 
「暇だったんだよ!」
 
「自分の顔にでも落書きしてろ!アホッ!」
 
「うるせー!シスコン!」
 
「ねえねえ、ダウドー」
 
「ス、スラリン……、なんだい……」
 
「シソコンてなーに?」
 
「……しそと昆布のおにぎりだよ……」
 
「そうなんだあ!ありがとう!」
 
「……」
 
スラリンは飛び跳ねて又何処かへ行った。
 
 
次の日
 
 
「ねえねえ、アルベルトー」
 
「何だい、スラリン」
 
「アルベルトってシソコンなのー?おむすび?おむすび?」
 
「誰かな……?又碌でもない事教えたのは……」
 
「ちょ、待てよ!何で俺の方見てんだよ!」
 
ジャミル、問答無用で犯人にされる。
 
「君しかいないでしょ……」
 
「……スラリン、ちょっとこっちおいで!」
 
スラリンを引っ張る犯人のダウド。
 
「はーい!」
 
「あら、ダウド、お早う……、て、何してるの?」
 
「あうう~……、アイシャあ……、又始まっちゃって、困ってるんだよお~……」
 
「またジャミルとアルね!もう!しょうがないんだから!」
 
「……」
 
「な、なに?人の顔見て……」
 
「いや、何でもないよお……」
 
「こらーっ!やめなさーい!二人ともー!!」
 
「全くもお……、毎日毎日、皆で入れ替わり立ち代わりケンカばっかり……、よくやるよね……」
 
「ピキー?」
 
「でも喧嘩する程仲が良い……、みんな仲良しなんだよ、本当に」
 
「ピキー!なかよし!なかよし!」
 
「あはは……」
 
笑うダウド。……本当に全く持って忙しい連中なんである。
 
 
そして、第三ラウンド……。甲板にて。
 
「ぎゃーっ!アルー!ジャミルが殴ったーっ!うわーーん!」
 
今度はジャミルvsダウドである。
 
「はいはい、どうしたの……」
 
「おならがうっかり出ちゃったら偶々後ろにジャミルがいたんだよおーっ!
なんだよお!自分なんかしょっちゅうじゃないかーっ!びええーーっ!」
 
「……判ったから、もう泣くのよそうね……」
 
「うえ……」
 
「ハア……、でも玉にはダウドだってジャミルに怒るときは怒っていいんだよ?」
 
「……そうかな……」
 
……只管考えるダウド。
 
「そうだよ」
 
「……よーし!ジャミルを叩いてくる!行くぞおーっ!」
 
アルベルトに励まされ、ダウドは鼻息を荒くし、意気揚々で走って行った。
 
「余計な事言っちゃったかな……」
 
 
数分後……。
 
 
……びええええーーっ!
 
 
「やっぱり駄目だったか……」
 
 
そして、夕方……。
 
「アル……」
 
「ん?」
 
「今日の夕飯の……、食事当番誰だっけ……」
 
「確かアイシャだよ……」
 
「あいつこの前、夕飯にカレー作った時、カレーに山葵大量にぶち込んだよな……」
 
「美味しい時と不味い時が……、極端なんだよね……、あはは……」
 
「今日もカレーみたいだよお!」
 
「……」
 
「……」
 
 
船内の休憩室の台所
 
 
「おねえちゃん、ごはんなにつくるのー?」
 
「カレーよ!」
 
「ピキー?かれー?」
 
「うん、辛くて美味しいのよー!」
 
「ピキー!おいしーい!」
 
「折角だから、スラリンもお手伝いしてくれると嬉しいなー!」
 
「わーい!おてつだいするー!」
 
「……おい、今日は変なアシスタントが付いてるぞ……」
 
……ドアの隙間から覗き見する男衆3人。
 
「スラリン、色々覚えたいって言ってたからね、見学に来たんじゃない……」
 
「オイラお腹が痛いので……」
 
「逃げるな……」
 
逃走しようとするダウドの肩をジャミルがしっかり掴んだ。
 
「……ヒイーッ!ホントに痛いんだよぉーっ!」
 
「あ、みんな!」
 
「!」
 
アイシャの声に震える男3人。振り向くと……、ドアを開き、エプロン姿のアイシャが……。
 
「もうご飯出来たよー!」
 
「……早えーな!おい!」
 
「今日はスラリンもお手伝いしてくれたのよ!カレーよ!」
 
「ピキー!からいからかれーっていうんだって!ボクまたひとつおべんきょうできた!ピキー!」
 
「ははは……」
 
「あはははは……」
 
「助けて……」
 
 
……そして恐怖の夕飯……。
 
 
「……案外、まともに作ってくれたかもしれないよ……」
 
慰めでアルベルトがジャミルとダウドを励ます。
 
「俺もう……、大人しく棺桶に入るわ、さよなら………」
 
「うん!そうしたら幾らでもザオラル掛けてあげるからー!心配ないよー!あははははは!」
 
「……アル……、顔笑ってないってば……」
 
「お待たせー!夕ご飯だよー!」
 
「ピキー!」
 
「!!!」
 
アイシャがお盆にカレーを乗せ、運んで来た。
 
「えへへ、スラリンもお手伝いしてくれたから、今日はいつもより張り切っちゃった!
おかわりも沢山あるからいっぱい食べてねー!」
 
「……げ!何だよ!この大量の殆ど真面に切ってない玉葱の塊……」
 
「くさい……」
 
「しかも生だし……、カレーの色がピンク色だよお……」
 
「アイシャ……、これ、ちゃんと自分で味見したんだろうな……」
 
「しないよ?」
 
「……自分で先に食えよ!!」
 
「だって……、作る前にお菓子いっぱい摘み食いしちゃったから食べたくないのー!」
 
「……あーのーなーあー!」
 
「アイシャ、我儘は駄目だよ、夕ご飯は皆で一緒に……(自爆しないと)食べないと……」
 
……既に顔が青ざめているアルベルト。
 
「判ったわー、食べるわよー、もう!ぷんぷん!スプーン持ってくる!」
 
「……」
 
(余裕で口にしようつーことは……、こいつ、自分の作ったモンに絶対の自信があんのか……?
この間の山葵大量カレーの時もそうだったけどさ……)
 
「お待たせー、さー、皆で食べよう」
 
ダウドはもう食べる前からすでに泡を吹きガクブル状態で痙攣している……。
 
「さあ、食べようか……、ねーっ!みんな!!!」
 
……涙目でもうヤケクソ状態のアルベルト。
 
 4人が揃ってカレーを口に入れ……そして……      
 
                                 ……   
 
はあー、きょうもおもしろかったー、またいっぱいおべんきょうできた!でもなんでみんなごはん
たべたままたおれてるのかなあー?まだおきないよー?どうしてごはんたべたらたおれたのかな?
おいしくてたおれたのかな?まだまだにんげんのせかいってわかんないことだらけだー!
もっとべんきょうしなくちゃー!               おわり 
 
「ピキー!わーい!きょうもにっきがかけましたー!」

その1

……商人、心変わりする

それから数か月後を経て、ジャミル達は再度スー地方へ赴く。
 
 
ドリームバーグ
 
 
「あ、もう街出来てる!」
 
「いやに早ええな……」
 
「早く行ってみよ、ジャミル!」
 
「ああ!」
 
アイシャ達が急かす。皆、楽しみで仕方がない模様。
特にアイシャは街の名付親になった為、とてもワクワクしている。
4人と1匹は街の入り口までダッシュ。……しかし、そんな4人を
又、とんでもない事態が待ち受けていた……。
 
 
「……止まれええええっ!」
 
「え……?」
 
走っていた4人は足を止める。街の入り口に厳つい警備兵二人が仁王立ちしていた。
 
「何だお前達は!この街に入る許可証と金は持っているのか!?」
 
「……別にんなモン持ってねえけど……、なんなんだよお前ら……」
 
突然の事態にアルベルト達も言葉が出ない。
スラリンは怯えてアイシャに抱かれたまましっかりしがみ付いている。
 
「どうかしたのかね?」
 
「あ、珍様……」
 
突如、聞き覚えのある声が聞こえてくる……。4人の前に現れたのは……。
 
「あんた……、珍さん……?」
 
ジャミルが指差した男は間違いなく珍だった。
しかし、姿は数か月前と明らかに変わっていたのである。
 
「お久しぶりですね、ジャミルさん……と、言ってもほんの数か月の間だけでしたがね」
 
珍の格好はミンクのコートを纏い、指にはダイアモンド、首には
エメラルドのネックレスを身に着けていた。
 
「……どうしたのさ……、葉巻なんか吸っちゃって……」
 
一体この数か月で珍の身に一体何起きたと言うのか。ダウドの顔も青ざめていた……。
もう頭には商人のトレードマークであったターバンは着けておらず。
その代り金銀の宝石を鏤めた豪華な王冠を被っている。
 
「お前達、下がりなさい、無礼が過ぎるぞ、この客は私の友人だ、
少し話がある、休んでいたまえ」
 
そう言って警備兵達にチップを渡す。警備兵達は珍に頭を下げると、
チップを受け取り、喜び勇んで一旦、門前から引きあげた。
 
「……どういう……、事ですか……?」
 
アルベルトの顔も険しくなる……。
 
「ジャミルさん、私は知ってしまったのですよ……、金の味を……」
 
「……何だと……?」
 
「私はこの街の長になったのです……」
 
「何だって!?」
 
「どうして!?この街の発案者はスーの村のおじいさんじゃないの!?」
 
アイシャも思わず叫ぶ。本当に何が起きたのか4人は考えたくもなかった。
 
「事実上、この街を建てたのは私なんですよ?私はいつかの未来、
将来の自分の為に貯めておいた資金をすべてこの街の為に捧げたのです」
 
「その、通り……」
 
「じいさんっ!?」
 
今まで何処にいたのかよろよろとじいさんが出て来た……。
 
「幾ら街立てたい、思っても理想だけ、どうにもならない、……金いる……、
でも、……珍叶えてくれた……、わしの大きな夢……、自分の大事な資金、
すべて使ってくれた……、手伝ってくれた、この街建ててくれた……」
 
「色んな人が噂を聞きつけて早速この街へ移住して来たんですよ、夢と希望を求めて……、
何せこの街は夢のある街、……ドリームバーグですからね……」
 
「……」
 
珍はアイシャの方を見て淡々と言葉を述べる。……アイシャは硬くぎゅっと
唇を噛むしかなかった……。
 
「アイシャ……」
 
そんなアイシャの様子を見て、ジャミルは心配になる……。
 
「……でも、珍……、お前変わった……、街の民、奴隷の様に扱き遣う……、ひどい……」
 
……老人が淋しそうに呟いた。
 
「私は何も変わっておりませんよ?地位と金と言う絶大な宝を
手に入れただけですがね、ふん、ねえ、みなさん……?」
 
嫌らしそうな顔つきで珍がジャミル達を見た。
 
「……このおじさん……、本当にあの時のおじさんなのかなあ……、違い過ぎるよお……」
 
「まあ、大金掴んで心変わりするとか、よく有るパターンじゃねーの?」
 
腕組みをしてジャミルも珍を睨み返した。
 
「此処へいらっしゃった方たちからまず税金を取りました、
街が発展していく為には皆様のご協力がどうしても必要ですから、
それから、毎日長時間労働で働いて貰っております」
 
「……」
 
「今思えばそれがすべての始まりだったかも知れませんね、
皆様から頂く金額を大量に増やしていったんですよ、そしたらば、
私はあれよあれよという間にお金持ちになっていたんですねー!!」
 
「……珍、お前!!」
 
流石にジャミルも大声を上げていた。
 
「別荘に酒場に、ホテルも建てられましたしもう止められないですねー!!」
 
「ひどいわ!!無茶苦茶よ!」
 
アイシャが泣きそうになる。
 
「この街に住む限り皆さんは私の下部です、死ぬまで働いて貰わないと!
……近々税金の金額も上げる予定です」
 
そう言って持っていた扇子を懐から取り出しパタパタ仰ぐ珍。
街の中を見ると重い石を担いだ男性がのろのろと歩いていくのが見えた。
 
「な、なんでみんな逃げないのかなあ……、あわわ……」
 
まるで一昔、何処かの国であった様な、悲惨な現場を見てしまい、ダウドがオロオロする。
 
「教えて差上げましょうか?この街の住人になった以上逃げる事は許しません!
もし脱走しようものならば思い罰を与えます、場合によっては死刑です!」
 
「あなたはもう僕達の知っている珍さんじゃない!!」
 
アルベルトも思わず叫んでいた。
 
「人間は所詮金なんですよ、金には勝てません、もしあなた達だって
私と同じ立場なら必ずそうなりますよ」
 
「あーん、珍サマあ~♡」
 
「おこずかいちょうだーい!」
 
美女が二人珍に纏わりついてきた。
 
「よしよし、欲しい物はあるかな?何でも買ってやるよ」
 
「……チッ!!」
 
嫌な物から目を剃らす様にジャミルが舌打ちする。
 
「さあー、みなさんお疲れでしょう、親切な私が素敵なホテルをご用意しましたよー!
お金にはご縁のない皆様に最高のお幸せをご提供致します、贅沢の素晴らしさを
あなた達も是非味わって下さい!」
 
「こんなとこ誰が泊まるか!おい皆帰るぞ!!」
 
しかし次の瞬間ジャミル達は厳つい男達に身体を抑え付けらえた挙句、
がっちりと腕を掴まれていた。
 
「放せっ!何すんだっ!」
 
「きゃーえっちー!ちょっとどこさわってんのよー!!」
 
「珍さーん!!」
 
「オイラたち……、大ピンチ……、うう……」
 
「ピキキー?」


4人、街に拉致られる

ジャミル達は何も抵抗出来ないまま街の中にある豪華なホテルへとポイされた。
顧客の金持ち専用の高級ホテルで一般人などは見当たらずジャミル達以外には姿が見えない。
 
「オイラたち……、これからどうすればいいのかなあ……」
 
「ピキー?」
 
「部屋の中にいても落ち着かないし……、どうしようか……」
 
「……」
 
「逃げようにもなあ、警備兵がうぜーし、まあ、ぶっ飛ばせばいいんだろうけど……、
それならそれで又ややこしくなるし……、あんのクソ珍の野郎をこのまま野放しに
しておくのも何かむかつくしな……、どうしたもんだか……」
 
アイシャはスラリンを抱いたまま、ただ黙って俯いている。元気の無い、
今にも泣きそうなアイシャの様子を見ながらジャミルも考える。
何とか元気を出して欲しいのだが……。一体どうしたら元気になってくれるのか……。
 
「そうだなあ、どうするか……」
 
とりあえず今は考えても何も出来ないので今日は体を休めようと言う事で一致する。
ジャミル達はホテルの最上階にあるプールで寛ぐ事にした。
 
「……おねえちゃん、げんきない?だいじょうぶ?」
 
スラリンがアイシャの顔を心配そうに見つめている。
 
「……」
 
「……そんなに気ィ揉むなよ……、アイシャ、ほら、一緒に泳ごうぜ……、
考えたってしょうがねえだろ」
 
プールを一回り泳いで来てジャミルが言うが。
 
「うん……、でもね……」
 
黙っていたアイシャが少し微笑みやっと顔を上げる。が、すぐに
何かを考えてしまうのか、直ぐに又表情に元気がなくなる。
 
アルベルトはプールの淵に腰掛けていつも通り読書する。
ダウドは椅子に座ってぷーかぷーか鼻提灯、居眠りをこいていた。
 
「……そんなに本ばっか読んでて楽しいか?運動不足になるぜ、
こんなとこまで来てさあ、見てて苛苛すんだよ……」
 
「本読んでる方が好きなんだ……、どうぞお構いなく」
 
「あーそーですかっ!フンっ!」
 
ジャミルは怒ってアルベルトにバーカと暴言を足れる。
別にアルベルトは気にもしておらず、本に集中している。
……今日は異様に相手にされない為、増々面白くないジャミル。
 
「アル……、私、スラリンと先に部屋に戻って休んでるね……」
 
「あ、うん……」
 
「ジャミルも有難う、私の分まで楽しんで来てね、いこ、スラリン、
お部屋で休みましょ……、スラリンもお昼寝しなくちゃね」
 
「ピキー!ボク、もうねむーい!」
 
アイシャは部屋に戻って行き、アルベルトは再び読書に没頭する。
 
「アイ……」
 
「今は少しそっとしておいてあげなよ……」
 
暫く静かにしておいてあげようとアルベルトがジャミルを諭す。
ジャミルは水に浮かんで仰向けになったまま不貞腐れる……。
 
「あー!おもしろくねー!どいつもこいつも……、しけたツラしやがって……、
……ん?そーだ!!」
 
ジャミルの頭にピコーンと豆電球が付く。ジャミルは一旦プールから上がると
ダウドの所まで走って行く。……アルベルトは気づいていない。
 
「おい、ダウド、起きろよ……」
 
ジャミルが寝ているダウドを揺さぶって突っつく。
 
「んあー?」
 
「んあー?じゃねえよ……、涎なんか垂らしてんじゃねえよ……」
 
「んああー???」
 
「……ちょっと耳かせ……」
 
「ん、わかったよお」
 
ジャミルは何事も無かった様に再びプールに入った。
 
「よ、アル!」
 
「何だい……、いきなり……」
 
アルベルトの背後にダウドがそっと近寄って行った。アルベルトはまだ気づいていない……。
 
「元気か?」
 
「今更……、何……」
 
「いーち、にーい……」
 
「いや、元気ならいいんだけど」
 
「はあ?」
 
「あはははは!」
 
「……ジャミル……、何か企んで……」
 
「さーんっ!!」
 
「……うわああっ!!」
 
ダウドが思いっ切りアルベルトの背中を押す。……アルベルトは頭から
プールに突っ込み転落する。その姿はコント番組で出汁にされるゲストさん
芸人の様で実に間抜けであった。
 
「……ぷはぁっ!な、何……!?」
 
「アハハハハハ!やーい、バーカ!引っかかってやんのーっ!」
 
「……くくく」
 
後ろでダウドが声を絞って笑いを堪えている。
 
「……ジャーミールーう!!」
 
体中から水を滴らせ、頭がワカメ状態のアルベルトをジャミルがゲラゲラ笑う。
 
「うわっ!!」
 
アルベルトの逆襲。今度は逆にアルベルトがジャミルの頭を押さえて水の中に沈める。
 
「やっ、やめろ……むっ……ぐごぼぼぼぼ!がぼぼぼぼぼ!……プハ~ッ!!
畜生……、やりやがったな、こんにゃろ!!」
 
ジャミルが慌てて水から顔を出した。
 
「さっきの仕返しだ!」
 
「プ……、ぎゃははははっ!し、死ぬーっ!!」
 
後ろで笑いを堪えていたダウドが等々我慢出来ず、狂った様に笑い出した。
 
「な、なんだよ……、いきなり……」
 
「だってジャミル……、鼻から水が~っ!きゃーっはっはっは!」
 
「プ……、く、くくくくく……」
 
ジャミルの顔を見てアルベルトもつられて笑い出した。
 
「……つまんねーことで笑うなーっ!!」
 
「だ、だって……、水がアメリカンクラッカーみたいに……、ぷぷぷぷぷぷ!」
 
「お前もおちろーっ!!」
 
プールから上がってジャミルがダウドを突き飛ばした。
 
「いやーっ!オイラそんなに泳げないのーっ!きゃーっ!」
 
アルベルトに続き、ダウドも二人目の被害者となり、
間抜けにプールに突っ込み転落した。
 
「ご苦労様です……」
 
「つめたひ……、きゅ~……、はっくしょん!!」
 
アホのお蔭で陰険だったムードが少しは明るくなったが。
ジャミルはアイシャに少しでも気分を変えて欲しかったんである。
しかし、彼女は自分が付けた街の名称が何の意味も果たしていない
事実に深く傷ついてしまっていたのだった。

その2

暴走娘、又も危機に陥る

その頃アイシャは部屋に戻って窓の外をぼーっと眺めていた。
 
「……」
 
「おねえちゃん、みんなといっしょにあそばないの?」
 
スラリンがアイシャの顔を心配そうに見つめる。
 
「うん、少し疲れちゃったの……、でも、大丈夫よ……」
 
「ボク、げんきなおねえちゃんがすき、おねえちゃんがかなしいと
ボクもかなしいよう、だからげんきだしてね?」
 
「うん……、有難う、スラリン……」
 
アイシャがスラリンをぎゅっと抱きしめる。
 
 
このガキ~っ!!
 
 
「!な、何!?」
 
突如聞こえた罵声に窓の外を見ると親子連れが警備兵と揉めているのが目に入った。
 
「やめて下さい!どうかお願いします!!」
 
母親の方が警備兵に土下座し必死で頭を下げている。
 
「この糞ガキめ!よくも俺様にぶつかってきたな!」
 
「俺達はなあ……、珍様に認められたエリート中のエリートだぞ!俺達を馬鹿にすると
言う事は珍様に逆らうのと同じだ!!」
 
「……スラリン、ちょっと此処で待っててくれる?」
 
「おねえちゃん!あのひとたちのところにいくの!?あぶないよー!!」
 
「……だって、このままほおっておけないの!!」
 
アイシャが外へ走り出して行ってしまう……。スラリンには
止める事は到底無理でこのまま見ているしか出来なかった……。
 
「……おねえちゃあ~ん……」
 
「ふーっ!気持ち良かったあー!」
 
……其処へ、丁度事態を知らないジャミル達がホテルを飛び出して
行ってしまったアイシャと入れ替わりでプールから帰って来た。
 
「ピキキキキーッ!」
 
ジャミルが部屋のドアを開けた途端、スラリンが勢いよく飛び出してきた……。
 
「何だ……?どうしたんだ?そう言えばアイシャはどうした……?」
 
「たいへんっ!おねえちゃんがこわいへいたいさんのところへいっちゃったよーっ!」
 
「何……!?」
 
「え……、ど、どうして……」
 
「ちいさいおとこのことおかあさんがへいたいさんにいじめられてたの、
それをみたおねえちゃんが……、おこっちゃって……」
 
「……あんの馬鹿!!」
 
「急ごう!ジャミル!」
 
「もうー!本当に休む暇ないよおー!」
 
「ああ!」
 
スラリンから事情を聴き、男衆3人もアイシャを追ってホテルの外へと飛び出すのであった。
 
 
……
 
 
「申し訳ございません!私が代りにどんな罰でも受ける覚悟で
ございます!せめて息子だけでもお許しを……」
 
「おかあさーん……、こわいよー……」
 
「……気に食わんな……」
 
そう言って兵の一人が親子に向かって鞭を振り上げたその時……。
 
「ひいいいっ!」
 
「やめなさい!!」
 
「ん、何だ……?」
 
現場に駆け付けたアイシャが両手を広げ親子の前に立ち塞がる……。
 
「これ以上……、この人達をいじめたら許さないんだから……!!」
 
「なんだい、お嬢ちゃん、正義のヒロインごっこのつもりかい?」
 
「ここは遊ぶ所じゃないぞ、帰れ!」
 
「……私は本気で怒ってるのーっ!!」
 
「おい、俺達を怒らせるとなあ、只じゃすまねえぞ、嬢ちゃん……」
 
しかしアイシャは一歩も引かず、警備兵に立ち向かって行く。
 
「どうして許してあげないの!?謝ってるじゃないの!」
 
「嬢ちゃんは命知らずなんだなあ」
 
「何なら嬢ちゃんが鞭で叩かれるか?ファーッファッファッファッ!」
 
警備兵達は揃ってアイシャを馬鹿にする。
 
「……叩けばいいでしょ!」
 
「うん?」
 
「代わりに私が叩かれればいいんでしょ!だったら……、好きなだけ叩きなさいよ!
何でも受けるわよ!怖くなんかないんだから!」
 
「……このガキ……!」
 
「待て……」
 
二人の警備兵のうち、片方がアイシャの顔をじろじろ見る。
 
「嬢ちゃん、よく見りゃ可愛い顔してんじゃねえか……」
 
「そうだな、こんな可愛い子傷つけるんじゃ勿体ねえな、へへ……」
 
「あ……」
 
アイシャは男達が何を考えているのかすぐ判った。
 
「おい、お前達もう向こう行っていいぞ」
 
「坊や、いらっしゃい!」
 
「でも……、お姉ちゃんが……」
 
「いいから!」
 
親子は警備兵がアイシャに目を付けた隙に自分達を救ってくれた
アイシャを見捨てさっさと逃げてしまう……。
 
「さて、邪魔者もいなくなった事だし……、お嬢ちゃん、おじさん達と遊ぼうね、
怖くないんだろ?お嬢ちゃん」
 
 
……その頃、ジャミル達はアイシャを探して街中を走り回っていた……。
 
「ったく、どこ行ったんだよ、くそっ!」
 
「……大変な事になってなければいいんだけど……」
 
「疲れたよお~!!」
 
と、前方から息を切らした親子連れが走って来るのが見えた。
 
「あのさ、ちょっと聞いていいかい……?」
 
ジャミルが親子に声を掛けた。
 
「何でしょうか、今はとても忙しいのですが……」
 
「お忙しい処、お引止めしてしまいまして大変申し訳ありません……」
 
アルベルトが挨拶するが母親の方はどうでもいいと言った様な感じである。
 
「ちょっとだけ聞きたいんだよ、この辺でおかっぱで団子頭の赤毛の女の子見なかったかい?」
 
ジャミルがそう聞いた途端、母親の方が露骨に嫌な顔をした……。
 
「……知りません……」
 
そう言って立ち去ろうとした時……。
 
「お母さんどうして?さっき助けてくれたお姉ちゃんの事聞いてるんじゃないの?」
 
「あーっ!何か知ってるんだあーっ!隠すなんてひどーいっ!」
 
ダウドがギャーギャー喚き散らす。
 
「何か知ってんのか!?頼むよ、どんな小さな事でもいいんだ、知っていたら教えてくれ!」
 
「あのね……」
 
「坊や、やめなさい、兵隊さんに逆らえば又どんな酷い目に遭うか分らないのよ」
 
「そうか……、要するにアイシャはあんた達を助けた、
けどこの街では権力者に逆らえない、だからあんた達を
助けたアイシャは反逆者になる訳だ……」
 
「そうよ、あなた達の味方をした事が知れたらまた酷い目に遇うのよ…」
 
ジャミルから目を反らす様にして母親が喋る。
 
「お母さん……」
 
「こんな街……、来るんじゃなかったわ……、夢も希望も無い街よ……、
私の夫も珍様に口答えした罪で牢屋に入れられたわ……」
 
母親はアイシャが付けた街の名称をまるで否定するかの様に呟いた。
 
「……」
 
「助けてくれて有難うなんて思ってないわ……」
 
「お兄ちゃん、あのね……」
 
「坊や!!」
 
「お姉ちゃん、兵隊さんに捕まっちゃったんだよ……、僕たちの代わりに……」
 
「ジャミル!」
 
「アル、判ってる!ありがとな、それだけ教えてもらえりゃ十分さ!」
 
「早く助けに行ってあげて……、それから、お姉ちゃんに伝えて……、
助けてくれてありがとうって……」
 
「……坊や!何してるの!早く来なさい!」
 
母親が子供を無理矢理引っ張って行った。
 
「ジャミル!いそご!」
 
「早くしないとアイシャがどんな酷い目に遭わされるか!……行こう!」
 
「ああ!」
 
ダウドとアルベルトの言葉にジャミルが頷く。……しかし、今回も
暴走娘はエライ事になりそうであった……。


お爺さんのお願い

「そんなに逃げるなよーっ!」
 
「きゃーっ!?」
 
二人の警備兵が逃げ回るアイシャを追掛け回し、捕まえると無理矢理身体を
押し倒し、強く地面に叩き付けた。
 
「痛っ!やめてよっ!何するの!!」
 
アイシャは仰向けに転がされたまま、後ろに回った兵に両腕を掴まれてしまう。
そして、もう一人の兵がアイシャに馬乗りになると身体を強く抑え付けた。
 
「仕事の合間にさあ……、娯楽が欲しいんだよ……、俺達だってストレスはあるんだぜえー?」
 
「胸はちっこいけどいい身体してんなあー!おい、ある程度やったら
俺にも遊ばせろよ?独り占めすんなよ?」
 
「分かってるよ、へへ」
 
……そして、馬乗りの兵がアイシャの服を脱がしに掛かる。
 
「……いやあああーーっ!!やめてえーーっ!!」
 
「……何処から頂こうかね、……へっへっへっ……」
 
 
助けて……ジャミル……怖いよ……ジャミル……
 
 
「てめえら何しとるんならあーーっ!!」
 
「……うおっ!?」
 
ごつんと鈍い音がしてアイシャに襲い掛かろうとしていた警備兵の頭にコブが出来た……。
 
「何だてめえはっ!」
 
「ジャミル……、アル……、ダウド!!」
 
「見てわかんねえのか、その子の彼氏とその他2名!」
 
「……その他2名とはなんですか?……ジャミル君……」
 
「そうですよ、酷いですよお……、ジャミル君……」
 
アルベルトとダウドが左右、それぞれからジャミルの頬を引っ張って伸ばす……。
 
「いらいいらい!いらららら!!」
 
「何だ?ナイト様気取りか!?フン!!」
 
「……アイシャを返せっつってんだよ!!コラ!!」
 
「生意気なガキ共めが!!よくもやりやがったな……!!」
 
ジャミル達と警備兵の乱闘騒ぎが始まってしまう。
しかし普段モンスターを相手にしているジャミル達にとって
警備兵なんぞまるで相手にならなかったのであるが。
 
「……覚えてろーっ!珍様に報告だーっ!!」
 
警備兵二人は漸くアイシャを解放するとそそくさと逃走した。
 
「……ア、アイシャっ、平気!?」
 
「うん、……大丈夫よ……」
 
ダウドが慌てて声を掛けると、アイシャは身体に着いた土を払い、
力なく微笑み、無理に笑顔を返す。
 
「……アイシャ……」
 
「ジャミル……、みんな……」
 
ジャミル、アルベルト、ダウド、……仲間達の顔を見た途端、ほっとしたのか
アイシャの大きな瞳から涙が溢れそうになる。
 
「……この……、馬鹿っ!!」
 
「ひっ……!!」
 
「一人で勝手にチョロチョロすんなって言ったろう!?何かあった時はすぐ俺達に言えよ!!」
 
「……ジャミル、アル、ダウド、ごめんなさい……、ごめんなさい……」
 
「ダウド……」
 
「ん?なに?」
 
「ちょっとあっち行ってようか……」
 
「え、えー!?ちょ、ちょっと……!」
 
気を遣ったのか、アルベルトはダウドを引っ張ると、二人から
少し離れた距離の場所まで移動する。
 
「お前に何かあったら……、俺……、どうすりゃいいんだよ……」
 
「ごめんね……、ごめんね……、ごめんな……さい……」
 
「でも良かったよ……、無事でさ……、間に合って良かった……」
 
「……ジャミル……、助けてくれて……ありが……と……」
 
「!?アイシャ!!」
 
アイシャはジャミルの胸の中で意識を失い、気絶してしまうのであった。
 
「……畜生……、よっぽど怖かったんだな、くそっ……、あいつらふざけやがって……、
けど、すぐ無茶するとか、もう心配掛けるなって、お互い様じゃねーか、このジャジャ馬め……」
 
ジャミルはアイシャのデコと頭にデコピンで軽くお仕置きしておく。
 
「ジャミルさん……」
 
突然ぬっと、爺さんが何処からか現れた。
 
「じいさん……」
 
「……娘さん、どうされた?」
 
「実は……」
 
 
ジャミルは老人に騒動の一部始終を話す。
 
「そうだった……、ご迷惑お掛けした……、わし、立場弱い、
珍、止められない、何も出来ない、本当にごめんなさい……」
 
「いや、気にしないでくれよ……、こいつに怪我も無かったみたいだし……」
 
「ジャミルさん……、人間、……本当に愚か、……お金たくさん、
こんなに変わってしまう……」
 
「いや、珍ばっかじゃねえよ、もし立場が逆だったら俺もそうなってたかもしんないし……」
 
「いえ、あなた変わらない……」
 
「そうかあ?俺、金にはがめついけど……」
 
「あなた慕う人たち、見ればわかる、あなた優しい……」
 
老人はそう言って眠っているアイシャを見た。
 
「……」
 
「ジャミルさん……、勝手なお願い……、あなたにお願いしたいこと、ある……」
 
「?」
 
「おねがい、もう悪い事しない様、珍、説得して欲しい……、
街の皆、本当に悲しい、怒ってる……」
 
「……俺が?いや、無理だよ、今の奴は碌に話も聞いてくれなさそうだし……」
 
「でも、わし信じてる、珍、いつか悪い事、きづく、きっと優しい珍に戻ってくれる……」
 
「話すだけ……、話してみるよ……」
 
「ジャミルさん、ありがとう……」
 
 
……
 
 
「ねー、アルってさ、アイシャの事好きなんでしょ?」
 
「え、え、え……、ダウド……!どうしてそれを……!?」
 
ダウドに突っつかれ、慌てるアルベルト。
 
「やっぱり……、そうだったんだ……、ふ~ん……、
嫌、普通分るってば、……だってさあ~、あの二人がいつも
イチャイチャしてると、アル、眉間に皺が寄ってるもん」
 
ダウドはニヤニヤ、嫌らしい目でアルベルトをじろじろ見ている。
 
「ま、まいったなあ~……、どうしよう……」
 
「でも何で何もしないのさあ?」
 
「え……」
 
「好きだったら言わなきゃ駄目じゃん!」
 
「でも……、アイシャにはジャミルがいるし……」
 
「だから諦めるんだ!ふーん……、あーあ、アルって結局その程度
だったんだあ~、あーあ!、がっかりだよお……」
 
ダウドは今度は急に嘆きだすと、アルベルトを悲観し始める。
 
「ダ、ダウド……、君、今日おかしいよ……」
 
「ふーんっ!」
 
「いや……、その、一時期はアイシャに言うつもり……、だったんだけど……」
 
「だけど?」
 
「あんのバカップル見てたら気が抜けちゃって……」
 
「あー!わかる、うんうん、アポだもんね、あの二人」
 
幾らジャミルがアホでアイシャが天然でもダウドに言われたくないんである。
 
「だから僕はもういいよ、あの二人を見守る事に決めたんだ」
 
「アルって……、優しいんだねー」
 
「……あははは……」
 
それから暫くしてジャミルはアルベルト達と合流しホテルへと戻った。
……ジャミルがアイシャを背中に背負い、男3人は無言のままホテルへと歩いて行く……。
夕食時、豪華な食事を出されてもジャミル達は全く食べる気がしなかった。
 
「ジャミル、珍しいね、君が全然食べないなんてさ……」
 
「お前らだって手ぇつけてないだろ……」
 
「食欲ないよお……」
 
部屋にはルームサービスで夕食の食事が運ばれて来ていた。
何と。ジャミル待望の最高級極上ステーキであった……。
が、折角のステーキを目にし、ジャミルを始めとして、誰一人、
一切食事に手を付けておらず状態。
 
「……あいつの状態見たらとてもじゃねーけど飯なんか食う気になんねーよ……」
 
「おねえちゃん……、おきないの……?」
 
スラリンが昏睡状態のアイシャを心配そうに見つめた。
 
「大丈夫、ちょっとショックを受けちゃったんだよ、もう少し時間が立てばきっと……」
 
アルベルトがスラリンを安心させる様に、頭部のトンガリをちょいと突っついた。
 
「ピキー……、おねえちゃん……、はやくげんきになってね、
おねえちゃんげんきないとボクもさみしいよう……」
 
「……あーっ!苛々する!」
 
「ジャミル……、どこ行くの?」
 
アルベルトが聞くと、ジャミルは乱暴に部屋のドアを蹴り飛ばす。
 
「便所!」
 
「……はあ……」
 
いつも通り、アルベルトとダウドが溜息をつく。しかし、ジャミルの気持ちは
二人にも痛いほど分かっていた。大切な仲間を手籠めにされそうになり、
傷つけられ、どうしようもなくやるせない気持ちと怒りが込み上げて来ていた……。

その3

珍を説得!?
「アイシャ……、平気かなあ……」
 
結局あれから丸一日、アイシャは目を覚まさず眠ったまま。
部屋内を往復で行ったり来たり、ダウドも只管アイシャを心配していた。
3人は何処にも行かず、ずっと部屋でアイシャを見守っていた。
 
「……本当に許せないよ……、アイシャにこんな酷い事して……」
 
アルベルトも強く唇を噛む……。
 
「♪おれーのいかりわばくはつすんぜーん♪ふんふふふふふーん!」
 
「ジャミル……、何やってんの……」
 
「歌うたってんだよ!上手いだろ俺の美声!」
 
「はあっ……」
 
いつも通り溜息しか出ないアルベルト達。……ヤケクソ気味のジャミルの
気持ちは理解しているとは言え。やはりジャミルは筋金入りのアホであった。
 
「ん……、此処……、ホテルのお部屋……?」
 
「ピキー!おねえちゃん!」
 
「アイシャっ!!」
 
……其処へ漸くアイシャが目を開ける。ジャミルとアルベルトは
急いでアイシャのベッドの側へと駆け寄った。アイシャをずっと
見守っていたスラリンも枕元でぴょんぴょん飛び跳ねる。
 
「アイシャ!気が付いたよ……、よかったあ~……、
ぐしゅ、……ジャミルのダミ歌がきいたのかなあ~……」
 
ダウドが歓喜し、目頭を擦るが、その後、直ぐにジャミルに頭を殴られる。
 
「ふぁ~っ!おはよー!!わあ、いいお天気ね!」
 
「はあ???」
 
「……」
 
アイシャのあまりの単純な元に戻りっぷりに目が点になる男衆。
元気になったのは良かったが、唐突過ぎである。ジャミルに助けられ、
安心し、幸せな夢でも見ていたのであろうか。
 
「……おはよーじゃねえだろ!このボケ!!どれだけ人が心配したと……」
 
「何よ~っ!!」
 
「ま、まあ……、とにかく無事で良かった……」
 
「……だよお……」
 
「みんな……、本当にごめんなさい……、心配掛けて……」
 
「とりあえず、一安心て処だね……」
 
心では困惑気味ではあった物の、アルベルトが笑う。
 
「ねえ、もうプールへは行かないの?」
 
「はああ???」
 
そして、いきなりのこの心の持ち直し様。
 
「おめーな……、昨日はあんなに……」
 
「いいじゃない!私、まだ泳いでないもん!」
 
「あのな……」
 
「いいじゃん、ジャミル、付き合ってやんなよお」
 
「そうだよ、どっちみちまだこの街から出られないんだから」
 
「おーい……」
 
「ピキー!おねえちゃんおきたー!よかったー!わーい!」
 
「うふふ、心配掛けてごめんね、スラリンもありがとうねー!」
 
「あ……、頭の精神レベルが……、同じ……」
 
「何よ?ジャミル」
 
「い、いや……、何も……」
 
「じゃあ、行ってきまーす!」
 
「ごゆっくりー」
 
「お前らは行かないの?」
 
「嫌だよお、オイラ泳ぎたくなーい!」
 
「同じく、部屋でゆっくり読書して休んでいた方がいい」
 
「俺だって……、昨日の騒動で今日は疲れてんのになあ……、とほほ……」
 
昨日とうって変わってすっかり元気になったアイシャに引っ張られ、
ジャミルは再びホテル内のプールへと足を運んだ。
 
「二人っきりだとすごく広く感じるね、このプール」
 
「ああ……、ん?」
 
「ふふっ!」
 
アイシャがジャミルの顔を見てくすりと微笑んだ。
 
「えへへ、また……、ジャミルに助けて貰っちゃった!」
 
「毎度恒例のいつもの事だしな……、別に気にしてませーん!
つーか、もう諦めたわ、嫌、諦めちゃ駄目なんだけどな……」
 
「……もうっ!ぶうーだ!」
 
半目になりアイシャが口を尖らせる。
 
「あ……きゃっ!?」
 
床のタイルでつるりと滑ってアイシャがプールに落ちそうになる。
 
「……アイシャ!何やってんだっ!」
 
ジャミルがアイシャの手を掴んだが二人ともバランスを崩し見事にプールに落下した。
 
「……や~ん!きゃー!冷たーいっ!いきなりの水は危ないのよう~っ!」
 
「気を付けろよ、バーカ!」
 
「もうー!すーぐバカバカ言うんだからーっ!」
 
バカバカ言うのはあんたもです。
 
「?ジャミル、どうしたの?」
 
「うん……」
 
ジャミルはプールから上がると椅子に腰掛ける。そして、
何かを決めた様に大きく息を吐いた。
 
「アイシャ……、俺、珍の所に行ってみるよ……」
 
「え……」
 
「爺さんにも頼まれたしな、何とか話……、してみるよ……」
 
ジャミルの脳裏には爺さんの悲しそうな顔が焼き付いて離れなかったのである。
 
「じゃあ、私も一緒に行く!」
 
「いや、お前は部屋で皆と待ってろよ……、あんな目に遭ったばっかりなんだしさ」
 
「ジャミルと行くの!」
 
「わかったよ……、たく、しょうがねえな……」
 
「えへへー!一緒にいこーね!」
 
アイシャがジャミルに甘える。呆れつつも、ジャミルも何となく嬉しそうであった。
 
 
……
 
 
そして、その頃。野郎二人は部屋で淋しくトランプをしていた。
ねえ、トランプしようよお、はダウドの提案。本ばかり読んでいる
アルベルトにダウドが歯止めを掛けたのである。
 
「ねえ、アルベルトとダウドってさみしいせいしゅん?」
 
「……」
 
「……」
 
スラリンが無邪気に質問。……スラリンに全く悪気はない。
しかも、質問の意味も全く分かっていないのである。
 
「……スラリン……、何処でそうゆう言葉覚えてくるの……、
駄目だよ、変な言葉覚えちゃ……」
 
「ジャミルがいってたのー!わかった、さみしいせいしゅんはいけないことばなんだね!」
 
アルベルトがスラリンを注意するが、……二人は何となく複雑であった。
 
「ジャミルの奴……、碌な事教えないんだから……」
 
「オイラ達ってかなりむなしいよね……」
 
「ダウド……、お互い頑張ろう……」
 
「うん……」
 
 
……ジャミルとアイシャはホテルの外に出て暫く街の中を歩いてみる。
 
「珍さんの家ってどこかなあ……?」
 
「……多分あそこじゃね?、んだよ、あの糞……、ソフトクリームみたいな屋根は……」
 
街の中央に一際目立つ悪趣味で派手な屋敷が建っていた。
有名な何処かの国の建築物、タージマハルを荒くした様な感じの屋敷である。
 
「……」
 
「いこ、ジャミル……」
 
アイシャがジャミルの手をぎゅっと強く握りしめた。
 
「ああ……」
 
……果たして自分達に極悪商人を説得し、改心させる事が出来るのか。
不安に駆られながら二人は珍の屋敷まで歩いて行く。
屋敷に近づくにつれ、段々アイシャは不安になって来たのか又俯きがちになる。
屋敷の周辺にも相変わらず、がっちりと数人の嫌らしい警備兵。
 
「よう、珍さんいるかい?」
 
ジャミルが屋敷の門にいた兵達に声を掛ける。気分を抑え、最初は控えめに、
落ち着いて話をと、接しようとしたジャミルであったが。
 
「……何だお前達はっ!?」
 
「私達、珍さんの知り合いなんです……」
 
「嘘をつくな!お前達の様な小汚い者共が珍様の知り合いの筈がなかろう!」
 
「しょうがねえじゃん……、顔見知りなんだし……、それに
汚ねーのはお前らのツラだろ、鏡見ろ、顔洗え、ケツも拭けよ」
 
「ジャ、ジャミル、駄目っ!」
 
……切れたジャミルの毒舌攻撃発動。アイシャは騒ぎを大きくしない様、
必死でジャミルを止めようとするのだが。
 
「このガキ!……ふざけおって!痛い目に遭わせてくれるわ!」
 
「大人を舐めるとどう言う事になるか思い知らせてやるぞ!」
 
警備兵達が護身用の槍を構える。それを見たジャミルはいい加減にしろとうんざりする。
 
「知り合いなのは本当ですよ……、全く、やれやれですね……、本当にあなた方は……」
 
「珍様……」
 
「珍……」
 
屋敷の中から、ゆっくりと誰かが姿を現す。……珍である。

決裂

「お前達、少し向こうで休んでいなさい……、優しい私からの、これはお小遣いだよ」
 
珍はそう言うと警備兵達にチップを渡した。
 
「は、はい……、で、では、……頂きます……」
 
警備兵達は揉み手をしながらチップを受け取るとさっさと何処かへ行ってしまった。
 
「さてと、一体何なんです?まさか……、私の提供した素晴らしい
ホテルに文句を付けに来たのですか?これだから貧乏庶民は……、
何か不満があったと言う事ですか……」
 
「珍さん、そうじゃないの!あのね……」
 
「アイシャ、……黙ってな……」
 
アイシャが喋り終える前にジャミルが口を挟む。
 
「つまり……、手っ取り早く言うと……、独裁者は長生き出来ねえ……、そう言う事だ」
 
「さっきから回りくどい……、あなたは一体何が言いたいのです?」
 
「オメーが権力者になって街の人を扱き使って奴隷にすんなって言ってんだよ、判ったか?」
 
「こんな事ばっかりやってると後で絶対自分に返ってくるのよ、
お爺さん、とっても悲しんでいたわ……、珍さんの事も本当に心配しているの……」
 
アイシャが悲しそうに俯いた。しかし、珍は全然悪びれた様子も見せず淡々と話す。
 
「何を言い出すかと思えば……、偉そうに……、私に口答えする気ですか?
何ならあなた達が今泊まっているホテル代、今すぐ150000ゴールド請求しますよ!?」
 
「……なっ!?」
 
当然ジャミル達にはそんな金は無い……。
 
「それは……、珍さんが私達を無理矢理ホテルに連れ込んだんじゃない!」
 
「何を言っても無駄ですよ、あなた達はもうホテルを利用してしまったのですから」
 
「……くっ!」
 
「随分楽しまれていた様でしたねー、……実はあのホテルには
そこら中に監視カメラを設置しておいたんですよー」
 
「すんげえ悪趣味……」
 
「これ以上逆らうとプールの使用料金も頂きますよ、そうですね、サービスで
10000ゴールドになります」
 
「……げ~っ!!」
 
どこまでも金にがめつく意地汚い珍の態度にジャミル達はこれ以上何も言えなくなった。
 
「判ってますよ、あなた達は所詮金の無い可愛そうな貧乏人なんですから、
あなた方には一応世話になりましたしチャラにしておいてあげます」
 
「……珍さん、悪かったな……、俺達ホテルに戻るよ……」
 
「ジャミル……」
 
「フン……、金持ちの私に逆らおうとするから嫌な目に合うのですよ、学習しなさい」
 
「……戻ろう、アイシャ……」
 
「でも……」
 
しかしアイシャは見てしまう。ジャミルの顔に青筋が浮かんでいるのを……。
 
どうしよう……、ジャミル……、すんごく怒ってる……
 
気分がすっきりしないまま二人はホテルへの道のりを歩いて行った。
……立場としては完全にジャミル達の負けであった。
 
「ねえ……」
 
ジャミルの後を歩いていたアイシャが立ち止まる。
 
「ん?」
 
「やっぱり……、この世の中って……、お金が全てなのかなあ……、
珍さんが言っていた様に……」
 
「コラ」
 
「いたっ!」
 
ジャミルがアイシャの頭をゲンコで軽くこづいた。
 
「……らしくねえぞ?お前がそんな考え方するなんて……」
 
「だって……」
 
「ま、確かに大金がありゃ、やりたい放題だし、ステーキも焼肉も食いたい放題だしな……」
 
ジャミルがじゅるりと涎を垂らした。此処に来てから碌に食事をしていないので
そろそろお腹も空いてきた様である。ちなみにホテルで出された食事には皆、
一切手を付けていない。予め所持していたお菓子などを食べ、食い繋いでいたんである。
珍へ唯一出来る、4人の抵抗と意地でもあった。
 
「もう……」
 
「だけど……、金じゃ買えない物もある……」
 
「え……」
 
「友達や大切な人は金じゃ手に入んねーの」
 
「……ジャミル……」
 
アイシャの方を見てジャミルが笑い、明るい笑顔を見せた。
 
「ジャミルーーっ!」
 
「おわっ!?」
 
アイシャがジャミルに思わず飛びついた。
 
「やっぱり私はジャミルが大好き!世界中の誰よりもだいだいだいだーいすき!!」
 
「よ、よせよ……、皆見てるじゃねえか……、恥ずかしいよ……」
 
「いいのっ!」
 
「おわーっ!!」
 
「……おい、お前ら……」
 
「……きょわーっ!!」
 
いつ来たのか……、二人の背後に珍の屋敷の警備兵が突っ立っていた。
 
「珍様からの伝言だ、お前達は明日、早急にこの街を立ち去るようにとの事だ」
 
「へーい、分りましたよー、出ていきまーす!」
 
「フン、二度とお前達の顔を見たくないとおっしゃっている……」
 
警備兵はそれだけ二人に伝えると屋敷に戻って行った。
 
「お互い様だよっ!バーカ珍、クーソ……」
 
「ジャミル……」
 
「おっと、あぶねえ……」
 
「……でも……、ほんの少しでも一緒に旅して色々お話した人だもん、
そんな風に言われるのは何だか悲しいな……」
 
珍との船でのやり取りを思い出したのか、みるみるアイシャの顔が曇る。
……あの時はジャミル達も、まさか後後こんな事になるとは夢にも思っていなかった。
 
「泣くなアイシャ!ほらほら、元気だせーっ!」
 
「ふええ……」
 
……ぐぎゅるる~……ぷう~ぴい~……
 
「まーた鳴ったよ、俺の腹……」
 
「あはは、あはは!変な音ーっ!」
 
「うーん、どうも俺って決まらないんだよな……、真面目な処なのに……」
 
「あはははは!真面目な顔してるのにー!なーんかジャミルってば
トイレ我慢してるみたいな変な顔ー!」
 
「……あんたちょっとうるさいよ!」
 
「あははははは!」
 
とりあえずアイシャが笑ってくれてほっと安心するジャミルだった。
 
「……ジャミルさん……」
 
「あ、じいさん……」
 
いつも通り突然出てくる爺さんにどっから出てくんの?と、気になってくるジャミル。
 
「お嬢さん、お身体の方、もう大丈夫?」
 
「ご心配掛けてすみません、でも、もう大丈夫です」
 
「こちらこそ、ご迷惑申し訳ない、……本当に……」
 
爺さんが弱弱しく、ジャミル達に何度も何度も頭を下げた。
 
「別に爺さんが悪いわけじゃねえよ、もう気にしないでくれよ、
俺らの方こそ、珍を説得できる処か……、結局駄目になっちまって、ごめんな……」
 
ジャミルが謝ると爺さんは、とんでもない!と、首を振った。
 
「わし、珍の補佐、……でも何も言う事出来ない、本当、情けない……」

その4

いつの日か、きっと。
「……爺さん、ごめんな、俺達も力不足でさ……」
 
「いや、こちらこそ、とんでもない事たのんだ、でも、ジャミルさん達には
本当に感謝、嫌な役目、引き受けてくれた、心からありがとう」
 
「いや……、礼なんかいいんだけどさあ……」
 
「うん……」
 
ジャミルがアイシャの顔を見るとアイシャも返事を返した。
 
「……やはり珍自身、自分のしたわるいこと、きづく、これしかない……」
 
爺さんが力なく肩を落とした。……ジャミル達もそうだが、爺さんも
疲労で相当疲れている様だった。ジャミル達はまだ若い分、いいのだが
爺さんは歳の為か、余計に疲れてやつれてしまっている様に見えた。
 
「でもどうして、こんなことなったか……、わし、分らない……」
 
「……爺さん、俺達、明日には此処を出ていくよ……」
 
「出て行けって言われちゃったから、珍さんに……」
 
「重ね重ね嫌な思い、申し訳ない、……でも、わし、どうすることもできない……」
 
爺さんはそう言ってよろよろしながら何処かへ再び歩き出した。
 
「お爺さん……」
 
消えていく淋しそうな爺さんの背中を二人はただじっと見つめるしかなかった……。
 
「アイシャ、俺達もホテルに戻ろう……、けど、漸く明日には
此処を出られるんだ……」
 
アイシャの小さな肩をジャミルがそっと抱き寄せた。
 
「……うん……、そうだね……」
 
そしてホテルに戻ったジャミル達は一部始終をアルベルト達に話した。話を聞いた二人は……。
 
「そう……、そんな事が……、でも、仕方がないのかもね……」
 
「全く!どうりでいつまで立っても戻って来なかった訳だ!」
 
「な、何だよ、ダウド……、おま、やけに今日機嫌悪いな……」
 
「……ついでに二人でなんかしてたんじゃないの?」
 
「おい、何だよ!アルまで……」
 
「してたんじゃないのお?」
 
スラリンも真似をしてみる。勿論、意味は分かっていない。
 
「ねえねえ、アルベルトとダウドってさみしいせいしゅんなんだよね?」
 
「こ、コラ!スラリン……!」
 
「……何の事?」
 
アイシャが不思議そうに首を傾げる。……アルベルトとダウドは
二人して無言でジャミルの方をじ~っと睨んでいる。
 
「と、とにかく、明日には此処を出るからな!」
 
「……また誤魔化した……」
 
「誤魔化したね……」
 
「あ……、あー!プールから直接外行ったから水着置きっぱなしだ、取ってこよーっと」
 
「私もだ、一緒にいくー!」
 
「……やれやれ……」
 
二人は揃って部屋を出て行く。見ていたアルベルトは、もーお好きにして下さーい状態。
 
「……どうせオイラ達はさみしい青春だよ、けっ……」
 
「ダウド大丈夫?何か性格変わってる様な気がするけど」
 
「あ、ねえねえ、オイラ考えてたんだけどね」
 
「ん?」
 
「なんかあの二人って、自転車に乗って太陽を追い掛けて行って
そのまんま何かにぶつかって衝突しそうだよね……」
 
「……青い山脈って感じかな……」
 
「は?」
 
「い、いや、何でも……、最近読んだ他国の古い文学のタイトルなんだよ……、
中々面白くて、つい、読みふけってしまうよ……」
 
 
「……うっせーぞおめーら!それに全部聞こえてんだよ!馬鹿ダウド!!」
 
 
「あら~、まだ行ってなかったのね……」
 
「ハア……」
 
廊下の方でジャミルの罵声が響き渡ったのであった。
 
そして次の日。 いよいよドリームバーグを離れる時が来た。
 
煮え切らない気分のままジャミル達は早朝早く街を出発する事になった。
漸くこの街から解放され自由になれるのは良かったが、4人は後味悪く、
何とも複雑な気分であった……。
 
「船も大分お留守にしちゃったから、相当汚れてるわね、戻ったらお掃除しないと……」
 
「そうだね!……殿下にお借りした大切な船だもの!戻ったらまずは皆で船内掃除だね!
……ジャミルもダウドもだよ!頑張ろう!」
 
「うげ……」
 
「掃除嫌だよお~……」
 
……殿下、殿下で熱くなり、やたらと張り切るアルベルトに
ジャミルは勘弁してくれと顔を背けた。
 
「ピキー!ボクもみんなとおそうじするー!」
 
「スラリンもお手伝いしてくれるのね、偉いわね、有難うー!」
 
「ピキー!、おねえちゃん、ボクがんばるー!」
 
「……」
 
スラリンも一緒に掃除を手伝いたいらしいが。丸いだけのスラリンが一体何処を
どうやって掃除するというのか。ジャミルは気になって仕方が無かった。
 
「ジャミルさん、みなさん」
 
其処に爺さんが現れ、別れ際に4人に声を掛けてきた。
 
「色々と皆さんお世話になりました、わし、うれしかった」
 
「いえ、こちらこそ……」
 
アルベルトが頭を下げるとダウドとアイシャも頭を下げた。
 
「もう一度、わしも頑張る」
 
「?」
 
「わし、珍、なんとしても説得する、このままじゃ、駄目」
 
「爺さん……」
 
「何年掛かってもいい、優しい珍に戻ってくれる……、わし、信じてる……、
みなさん、どうか元気で、旅の無事、祈ってる……」
 
爺さんはそう言うと、4人に再び頭を下げて礼を言い、街の奥へと消えて行く。
 
「おじい……」
 
「アイシャ、今の俺達じゃ何も出来ねんだ、悔しいけど……」
 
……もう少し、何か伝えたい事があったのか、爺さんに
声を掛けようとしたアイシャをジャミルが止める。
 
「僕達は僕達で今出来る事をしよう……、ね?」
 
「アル……、うん……、そうね、分った……」
 
アイシャはいつの日か、自分が付けたこの街の本当の名前の意味、
夢と希望に満ち溢れた街として再起動してくれる事を……、心の中で
静かに願うのであった。
 
「はあ~……、やっと船に戻れるよお~……」
 
ダウドが安堵の溜息を洩らす。数日、この街に閉じ込められていたので
ストレスも溜まりっ放しであった。
 
「う~ん……、でもなあ……、なーんか珍の野郎に一言
言ってやらねえと気が済まねえんだよなあ……」
 
「いいから!早く戻ろうよおおおおお!!オイラこんな街に
いつまでもいたくないのよおおおお!!……二度と来たくないよおーー!」
 
「……アホ!声が大きいっつーの!!……ったくもうーーっ!」
 
「ピキー!おおおおおお!」
 
「……スラリンたらっ、もうっ、真似しなくていいのよおー!
……キャー!わ、私までえーーっ!うつっちゃったわーっ!」
 
「……はあ~……」
 
ぐずりだしたダウドを抱えてジャミル達は一目散にバーグを後にするのだった……。


海賊集団現る!

珍の街で散々嫌な思いをした一行は気を取り直して次の目的地を探す。
アイシャは船室で昼寝をし、同じくアルベルトも船室にていつも通りゆったり読書。
モンスターも現れず、久々にまったりのんびりモードの航海だったが……。
 
「う~っ……、あっついよお~……、夏でもないのになんでこんなに暑いのかな……、
あついよお、あついあついあついーーっ!」
 
甲板に出てダウドが吠えている。
 
「ホントだよなあ……、今日は風が全然ねえし……、いっそ台風でも来ねえかな……」
 
「……そ、それは駄目だよおっ!縁起でもない事いうなよお!バカジャミルっ!」
 
「うるせー!このヘタレっ!」
 
この二人は甲板にて他愛もないアホバトル。
 
「あ、それより、ねえねえ、ジャミル見て見て、これ珍のホテルから貰ってきた、はいお土産」
 
「……彼のソーセージは世界一なの、でも時々大きいフランクフルトになるの……、
おい、なんだこれ……」
 
「月刊お〇ん〇&お〇ん〇の友……」
 
「変なモン取ってくんな!まーたアイシャに見つかったら俺が殴られんだろが!」
 
「いいじゃん……、アンタも好きなんでしょ……、ん……もう……」
 
「……よこせっ、このやろ!早く捨てろ!」
 
「見たいなら無理しない方がいいよおー!」
 
……そんな揉める二人の様子をじーっと見つめている者?が一匹。
スラリンである。スラリンはアイシャがいる寝室までぼよんぼよん飛び跳ねて行った。
 
「ねえ、おねえちゃーん」
 
「ん……、なあに、スラリン、私まだ眠くて……、もう少ししたら遊んであげるからね…」
 
「おち〇〇とお〇ん〇ってなーに?」
 
「!?」
 
「ジャミルとダウドがはなしてたのー、かれのソーセージはせかいいち、
でもときどきおおきいフランクフルトー」
 
「……ジャミルとダウドのバカーーっ!!」
 
その日ジャミルとダウドの顔面にアイシャの鉄拳が飛んだ。
 
次の日。
 
「又すぐそうやって膨れる!機嫌直せよ、アイシャ!」
 
「知らないっ!スケベジャミル!!」
 
「……?ジャミル……、あの船はなんだろう……」
 
一人でぼ~っと海を眺めていたアルベルトが声を上げた。
 
「どうした?」
 
ジャミルも身を乗り出し海を見る。……確かに見た事のない船が4隻
こちらの船に向かって接近して来ている様である。
 
「な、なんかやばくないですか……?」
 
ダウドがさっとジャミルの後ろに隠れた。……いつも通り。
 
 
「海賊船みてえだな……」
 
 
「……ええーっ!?」
 
「そう言われてみると……、皆筋肉ムキムキだし、武器持ってるし、
頭にバンダナを巻いているね……」
 
アルベルトも呆然とする。もしかしたら、海賊を相手にするとなると、
モンスター戦以外での初の困難なバトルになるかも知れなかった。
 
「うわ、すげー臭そうな連中……」
 
「オ……、オ……、オ……、オイラ達を捕まえにきたんだあ~っ!」
 
「ピキピッキー!」
 
「何だよ、厄介だなあ!たく!」
 
「ギャー!どうしよどうしよ!」
 
「怖い……」
 
スラリンは甲板で跳ね、ダウドは怯え、アイシャはジャミルにしがみ付く。
 
「売られたケンカは買うしかないか……」
 
ジャミルが鉄の斧を構え、体制を整える。
 
「おい、書いてる奴、俺、いい加減に鉄の斧からも卒業させろよ、
いつまでこれなんだよ……」
 
「ジャミル、今はそんな事言ってる場合じゃないよっ!」
 
アルベルトも草薙の剣を構えた。
 
「あんた達、いい度胸してるねえー!あたし達のショバに入ってくるたあ!」
 
「……ん、女……?」
 
むさ苦しい連中の中に何故かただ一人だけ威勢の良いスタイル抜群の美女がいた。
 
「ふふん、あたし達はここいらの海を取り仕切ってるのさ!」
 
「お頭、こいつらどうします?」
 
「……お頭?あんたがボスなのか?」
 
「そうさ、あたしが首領だよ!」
 
「ほへ……」
 
「あんた達は悪人て顔じゃないねえ……」
 
女ボスがジャミルをジロジロと眺めた。
 
「僕達は魔王バラモスを倒す為に旅を続けています」
 
アルベルトが口を開くと、女ボスはあっ!と、言う様な表情をした。
 
「!へー、あんた達が噂の騒動屋勇者様ご一行なのかい、へえ~……」
 
「……そー」
 
ジャミルが気の抜けた様な返事をする。どうやら海賊達にまで、
この4人の方々での暴走っぷりは伝わっているらしい。もう、大変な有名人になっていた。
 
「どうだい?あたしらのアジトに来ないかい?少しはもてなしするよ」
 
「……お頭あ!」
 
「うるさいね!あたしが気に入ったんだよ!文句あるかい!?」
 
「は、はい……、」
 
「ジャミル……、どうするの……?」
 
心配そうにジャミルを見るアイシャ。
 
「……とりあえず……、行ってみるか、何か情報が得られるかもしんねえし」
 
「決まったね、そう来なくちゃ!あたしらの船についでおいで!」
 
4人の船は海賊達の乗った船の後を付いていく。やがて、小さな小島まで辿り着いた。
 
海賊のアジト
 
 
「お頭、お帰りなさい!」
 
「おう、帰ったよ!」
 
むさ苦しい男達がゾロゾロ出て来て、ボスを出迎える。
 
「お頭、こいつらは?」
 
「私の友人だよ、ごちそうの用意をしてくれ」
 
(……い、いつから知り合いになったんだ……???)
 
「へーいっ!」
 
「まあ、そんなに堅苦しくなるな、ここに座れ」
 
「はあ……」
 
4人は広間に案内される。アルベルトは落ち着いていたが、
アイシャとダウドは何となくそわそわしている。
 
「なああんた、何でこんなに俺達に親切にしてくれんの?」
 
「あんた達はバラモスを退治してくれるんだろう?全く、バラモスの奴ときたら……、
手下のモンスターを使って海を荒らしまくってるのさ、おかげで海は汚れるわ、
魚は死んじまうわ、もう散々だよ……」
 
「……」
 
「頼むよ、おちびの勇者さん達、しっかりバラモスの野郎をシメてやっておくれよ!」
 
「わ、わかった……」
 
「その為にも今日は沢山食っていきな!栄養つけなきゃ!」
 
(……この人達……、悪い人達じゃなさそうだね……)
 
アルベルトが小声でジャミルに話しかけた。
 
(ああ……、心配ないみたいだな……)
 
「それに理由はもう一つある」
 
「?」
 
……ボスがジャミルに近寄っていった。
 
「あんたなかなか可愛い顔してるじゃないか、うん、気に入った」
 
「……は?」
 
「!!!!」
 
「どうだい?バラモスを倒したらあたし達と一緒に海賊をやらないかい?」

zoku勇者 ドラクエⅢ編 6章

zoku勇者 ドラクエⅢ編 6章

スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 クロスオーバー 年齢変更 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-04

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 番外編
  2. その1
  3. その2
  4. その3
  5. その4