「おみなごきゃろる」
 静寂の間に…
 女子きゃろるは眠りたる
 立派な一段ベッドに
 羽毛布団
 ふあふあに埋れゆく
 きゃろるは微笑んでいる
 寝ながら微笑んでいる
 その口元の干涸びぬこと
 その目元の窪まぬこと
 その頬の潮に傷まぬこと…
 女子きゃろるは夢を見る
 ひとりきり春宵の夢を見ている
 そして鳥の顔した奇術師が
 きゃろるの頭をそっと撫でた
 きゃろるはねだりきれなかったご絵本にぎって
 すやすやと寝息の凪たる
 君の瞳がぱっちり開いたなら
 また日傘さして歩きに行かう…
 きゃろる
 女子きゃろる
 鳥の腕した奇術師は
 きゃろるの頭をも一度撫でり
きゃろるのずっと微笑んだ顔…
 あたたかな春の夜
 風は散花を水面へ運ぶ
「おみなごきゃろる」