反例
生きていればいいことがある
そう言われて今際の際まで生きてみたが
いいことなど遂にひとつも起きなかった
死んで欲しい連中は死なず
生きて会おうと契った知己が尽く死に
馴染みの場所と風景はすべて喪われた
何もかもが俺にもう何も思い出させてくれない
死より残酷なことは延命だと
なぜ誰も教えてくれなかったのか
俺だけが無駄に生き延びて形だけの祈りを繰り返す、こんな犯罪が
いつまでも許容されている
生が罪だと同時に罰でもあるのなら
誰ひとりとして生まれてくるべきではなく、生きるべきでもない
愚にもつかない生への愚にもつかない詩を
あといくつ書けば完全な死に到れるのだろう?
反例