一夜の奇跡

何もなかったはずなのに
全てが嫌になって家を飛び出した

だけど、どこにも行く宛てなどない
一人、ブランコを漕いでいた

夜風が優しく吹いて
何もないのに
泣きたくなる
上手く声が出ない

何かを掴みたくて
吹いた風を捕まえて空の手を握る
ここにいることを確かめるように

突然、何かに引っ張られる
夜風が私を連れ出すように
空、高く、舞い上がって

目の前に広がる光の海
魔法にかかったように
空を泳いで涙が溢れる

あまりに綺麗で
漠然とした不安なんて
小さくなって忘れていた

「また逃げたくなったら連れ出すから
どこへでも、どこまででも。」
そう誰かが囁いた

一夜の奇跡

一夜の奇跡

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted