キャンバス
蒸気船みたいに息を吐いた、
空気が澄んでみずみずしくて、
たくさん走れそうだった。
白い地面は明るいんだ、
夜なのに明るいんだ、
足跡が青白く染まっている。
海底や砂丘にいるみたく、
跳ねて遊んでみようかな、
僕ら、いつ透明になれるだろう?
いてついた風が骨の深くまで届くとき、
牡丹雪が肉の奥まで濡らすとき、
モノクロの視界は狭まって、
積もるばかりの音も聞こえなくなる。
有彩色でありつづけること、
ぴかぴかの光を浴びつづけること。
のぞむものも望まれるものも全部、
ありふれていると形容するには難解すぎるんだ。
手足をあたためて今は眠ろう、
小さな声で歌いはじめよう。
容易なことで笑えなくなる前に。
僕ら、どうして透明になりたがったんだろう?
他人事みたいに問えるときが来る、
とは、限らないけれど。
真昼の月みたいにそこにありながら、
誰かを祝福できる日を待っていよう、
十六時の僕ら。
キャンバス