zoku勇者 ドラクエⅢ編

作者のゲームプレイ時のパーティメンバーと記憶を元に書いています。文章荒いですが最後までどうか宜しく。

その1

アリアハン編

始まりの朝

それはジャミルが16歳の誕生日を迎えた日の朝だった。
 
……ジャミル……、起きて…… 起きろ、……おきなってば……
 
 
         ……
 
 
「起きろーーっ!!」
 
 
ガアアアアーーンッ!!
 
巨大なフライパンがジャミルの頭目掛け命中。頭部には餅の様な巨大なコブが出来る。
 
「……ッテェ~ッ!!」
 
「どう?ジャミル?目ェ覚めたかい?フンっ!」
 
「……ファラ~!テメエ何しやがるっ!!」
 
「だっていつまで立っても起きないんだもん……」
 
「……って言うか……、お前何?そのカッコ……、エプロンなんかしめてよう……」
 
「だってしょうがないじゃん、この話の設定だとあたい、ジャミルの母親なんだからさ、
でも、決して母親じゃないの!……あくまでも、母親代わりのお姉さんってとこかな!?」
 
「設定……?」
 
「いいから早く支度しなよ、王様に挨拶にいくんでしょ」
 
何が何だか解らないままジャミルはモソモソ支度し始める。
 
いつものトレードマークの青い帽子を被ろうとすると……。
 
「あ、今日はそっちじゃないよ、こっちだよ、ほれ!」
 
無理矢理ファラに銀の額当てを嵌められたのだった。
 
「!何だよこれっ!!」
 
「いいから行くのっ!はい、お城へGO!」
 
訳が解らないままジャミルは家を追い出され、仕方無く城へと歩き出すのだった。
 
 
アリアハン城下町
 
 
「ファラのバーカバーカ!厚化粧め!」
 
ブツブツ文句を言いながらジャミルは城へ向かう。処が城門に着いたところでジャミルの腹の調子が悪くなったらしく大きな屁が出た。
 
 
ブッ!
 
 
周囲には悪臭が漂い、……近場にいた人々は皆その場から逃走する。
 
「一発かましたぜ!」
 
怪訝な顔をする城の兵士にも構わず堂々と城へと入る。困った男である。
 
 
ーアリアハン城 城内 国王の間
 
 
「おお、よくぞ参った、勇者ジャミルよ」
 
「は?勇者あ?」
 
テオドールと言うややアフロ気味のヘアスタイルの王様がジャミルを出迎える。
 
「何で俺が勇者なんだよっ!……説明しろ!」
 
「今、この世界は闇の世界からの凶悪な者の手によって光を奪われようとしているのだ」
 
国王、全然人の話を聞いていない。高速早口でベラベラと与えられた台詞を只管発する。
 
「……人の話を聞けっちゅーんじゃ!」
 
「敵は魔王バラモスだ!魔王を倒してこの世界に平和を取り戻すのだ!」
 
「ばか~っ!爆発もじゃもじゃアフロ!」
 
「町の酒場で仲間を見つけて旅の支度をするが良い」
 
少ないゴールドと、しょぼい装備品を貰いジャミルは城を出された。
 
「……ムカツクなあ~っ!おりゃあ元々賊……、シーフだっちゅーねん!」
 
ブツブツブツブツ、文句を垂れて仕方なく、町に有るルイーダの酒場へと足を運ぶ。
酒場に入るとジャミルの親友のダウドがいた。この二人は昔からの幼馴染であり、
親友でもあり、悪友でもある。性格は全然違うが、気が合うのかいつも一緒に攣るんで
いたり悪戯したり悪い事してたりする。
 
「あ、ジャミル来たー、えへへ~、オイラで良かったら力になるよ」
 
が、彼は臆病でヘタレ属性の為、何かあるとすぐ怖がって逃げたがる傾向があった。
 
「ダウド……、お前盗賊か?」
 
「うん、そのまんまだよお」
 
「俺と代えてくれよ、かったりいよ、勇者なんかさあ……」
 
「やだ」
 
「やだじゃねえよ、俺勇者なんかやだっ!!ぜってーやだっ!!」
 
「オイラだって嫌です」
 
「やだやだやだやだやだやだや……」
 
舌を噛んだ。
 
「オイラ此処で待ってるからねえー!後で又声掛けてよおー!」
 
「はあ~……」
 
 
……
 
仕方なく仲間集めを始め、ルイーダの酒場をウロチョロする事数分。
酒場には、冒険の記録をしてくれるシスターさんがいたり、
ゴールドを預かってくれる預り所などがあった。
 
「……君、いい男だね、ボクとやらないか?」
 
「お断り致す、それはもういい」
 
阿部さん戦士からそそくさと逃げ、2階にあった冒険者の登録所へ行ってみた。
 
「私、魔法使いのアイシャ!よろしくね♡」
 
「僕は賢者のアルベルト……」
 
「オイ……、賢者ってさ……、悟りの書がないと……」
 
「そんなの知らないよ」
 
「俺と代われよ!」
 
「やだ」
 
あくまでも抵抗し続けるジャミルであった。
 
「仕方ねえ、まあ適度にこんな処か……」
 
「こんな処って何よう!失礼ねっ!」
 
「うるせー!こんな処だからこんな処だって言ってんだよっ!」
 
……仲間になって数秒後、ジャミルとアイシャのケンカスタート。
 
「はい、では、まずは最初が肝心、性格を決める種をお仲間様へと使って頂きます」
 
「え?元々、この二人の性格って決まってんだけど……、あぼれんぼうと、ぬけめがな……、いてっ!?」
 
ジャミル、アイシャに頭を叩かれ、アルベルトに足を踏まれる。
 
「一応、このゲームのルールですので……、従って頂きます……」
 
「しゃーねえ、何になっても文句言うなよ?よし……」
 
ジャミルは登録所のおっさんから受け取った種を適度に二人に使う。
 
 
アイシャ :おおぐらい
アルベルト :むっつりスケベ
 
 
「!!!!」
 
「あてっ!あてててっ!……決まったんだからしょうがねえだろうがっ!!」
 
……ジャミル、二人から暴行を受ける。見ていたおっさんは慌てて、別の種を渡し、性格を決め直す様に勧める。アイシャとアルベルト、……何回でも二人の気が済むまで。
 
こうして性格を決め直す事……、……丸一日。
 
「私はおてんば!まあいいか、ふふっ!」
 
「僕は苦労人か……、どうせこの話でも苦労するだろうし……」
 
「……はあはあ、畜生……、だからまどろっこしい事は嫌なんだよっ!!」
 
「お疲れ様です、しかし、このゲームの最初の第一歩ですから、まあ、我慢して下さい、
さあ、お二人は下に行って下さい、今、登録したお二人は下の酒場から呼んで頂ければ
お仲間にお誘いする事が出来ますので……」
 
「はあーいっ!アイシャ行きまーす!頑張るっ!」
 
「ジャミル、じゃあ、僕ら下で待ってるよ……」
 
「……疲れら……、あふう~……」
 
「!!あっ、勇者さんっ、大丈夫ですかっ!?お気を確かにっ!!」
 
下の酒場へと移動していく二人を見送ったジャミルは……、疲れてその場にぶっ倒れた。
 
……こうして、アルベルト、アイシャ、酒場枠以外でダウド……、の3人を仲間にした
ジャミルは魔王バラモス討伐の旅へと、無理矢理嫌々出発したのだった。一向はまずは
とりあえず隣の村のレーベヘと向かう。てくてく進む一向にスライムの群れが現れ行く手を阻み妨害する。取りあえず、スライムでも最初は油断すると痛い目をみる場合もあるので気を抜けない。
 
「……なんかさ、私達がスライムと戦うってさ、変じゃない?」
 
「いーんじゃねーの?どうせ会社合併したんだし」
 
(……そういう問題か……?)と、アルベルトが心で突っ込む。
 
「うわ~怖いよ~!ウンチだよお~!!」
 
「これくらいでビビってんじゃねえよダウド!いくぜっ!」
 
銅の剣を構えてスライムにジャミルが突っ込んで行く。……が。
 
「……ぶべっ!!」

スライムがジャミルに体当たりし、逆に押し返されてしまった。
やはりLV1ではスライムでもきついらしい。
 
「……きゃ、きゃああ~、何かいや~んーっ!あんっ!」
 
スライムはもぞもぞと……、アイシャの身体に集って、
アイシャの服の胸の谷間に潜り込もうとしていた。
……まな板のアイシャが巨乳になりそうな光景である。
ぼけっと見ていた男衆は鼻血を垂らしそうになった……。
 
「……はっ!い、いけないっ!僕の清楚なイメージがっ!」
 
「もう崩れてますから、大丈夫ですよお~……」
 
「そうだぜ、無駄な抵抗すんなっての」
 
アルベルトはジャミルとダウドを横目でみつつ、いそいそと鼻血を抑えるのであった。
 
「えっちっ!……バカっ!!もうーっ!!」
 
怒ったアイシャは胸の中のスライムを引っ張りだし、思い切りほおり投げる。
投げられたスライムはぼよんぼよん、ボールの様に地面を転がる。
 
「あーあ、元に戻った、……萎んじまった……」
 
「何よっ!ジャミルっ!!」
 
……その後、4人掛り連携プレイで何とかスライムをやっつけ、初めての
バトルはどうにかこうにか終了し、漸くレーベの村へ。
 
 
in レーベの村
 
 
色々と村で情報収集してみる。皆、ベラベラと喋って細かい情報を教えてくれる。
 
「別大陸に続くいざないの洞窟を抜けるには魔法の玉が必要で、魔法の玉は
この村に住む火薬職人の爺さんが作ってくれるよ!でも爺さんの家に入るには
盗賊のカギが必要で盗賊のカギはナジミの塔にあるんだよ、ナジミの塔へと
続いている洞窟はこの村の南にあるよ!」
 
「鍵の掛ったお家って……、引き籠りさんなのかしら……」
 
首を傾げるアイシャ。FC全盛期時代のドラクエでいちいちこういう事を突っ込んではいけないのです。
 
「ん~、ややこしいな…でも、こういう時の為に盗賊っていうモンがいるんじゃねーか?
よし、やれっ、ダウド!鍵を開けてしまえ!」
 
「はいなー、よおーし!……あれ?」
 
魔法玉爺さんの家の場所を村の人に教えて貰い、家の前まで行ったには良かったが。
 
「あかないよおー!」
 
「あに?……んな筈は……、あれ?」
 
爺さんの家の扉の前に張り紙がしてある。
 
 
フライング行為お断わり。
 
 
「……んなろおおーっ!!」
 
「ハア、真面目に塔を攻略して来いって事だよ、……ズルは出来ないね……」
 
「ムッキーーーっ!!」
 
「はいはい、どうどうどう!行こうね、ジャミルっ!!」
 
アルベルトは暴れるジャミルを引っ張って連れていく。後を追うアイシャとダウド。
……その姿はまるで調教師と暴れ馬の様であった。
 
 
岬の洞窟
 
「初めての洞窟探検!よーし、頑張るわよっ!」
 
張り切るアイシャにいや、あまり頑張らなくていいです……、と、心で思うジャミル。
 
「何よっ!ジャミルっ!」

「だから何でもねえってのっ!!」

「……オイラ急にお腹が痛くなった、あたたた、あたたた……」
 
洞窟を目の前にしてダウドの悪い癖が早速発動する。
 
「じゃあ、お前戻っていいぞ?……一人になるけどな、まあ頑張って
モンスターと戦って帰宅してくれや、じゃあな……、無事を祈ってる」
 
「……」
 
ダウドが一人でアリアハンまで余裕で戻るのには今のLVではまだまだちいとキツかった。
 
「や、やっぱり皆と行きます……、えへへ……」
 
「いや、帰っていいよっ!早く帰れっ!!」
 
「何でそんな意地悪いうのさあー!ジャミルのアホーっ!!」
 
「うるせー!オメーがわりィんだろうがっ!アホダウドーっ!!」
 
「ちょ、ちょっと……、どうしよう、アル……」
 
掴み合いの取っ組み合いを始めたジャミルとダウドを見てアイシャが困ってオロオロするが……。アルベルトはそんな困ったアホな二人を見て拳を口元に持っていくと、おほんと咳払いをする。
 
「……二人とも、静かにしないと……、メラの刑です」
 
アルベルトが指先から小さな火の玉を出した。……本当にぶつけかねない表情をしていた為、……ジャミルとダウドは一瞬にして黙りこくって小さくなった。
 
「よし、……さあ行くよ……」
 
(……腹黒め、今に覚えてろよ……)
 
「……何?ジャミル……」
 
「だから何でもねーよっ!!」
 
……かくして4人は初めての洞窟探検を開始するのであった。

その2

洞窟の中を探索する4人組。道中にある宝箱の中身を回収しながら塔へと向かうのだが。
 
「また薬草か……、強い武器とか入ってねえのかよう……」
 
「序盤からそんな物入っているワケないじゃないか、それに、まだ僕らは
MPが極端に少ないんだから節約しなきゃなんだよ、薬草だって貴重だよ!」
 
……説教するアルベルトに最初からほぼ反則チートの賢者野郎が何を申すかとジャミルは思う。
 
「ジャミル、何かメダルが入ってたよお、ほら……」
 
ダウドが別宝箱に入っていたメダルを持ってくる。彼らはまだちいさなメダルの役割を知らない。
 
「ふ~ん、ま、何に使うか分かんねえけど、アイテム管理係はダウド、お前の担当だからな、取りあえず袋に入れとけや」
 
「了解で~す」
 
ダウドはメダルを袋に入れる。このアイテム袋はどういう訳か、アイテムが無限に入る、
それは便利な袋なのだがちいと変な袋なのである。
 
「……処で、ダウド、……アイシャは?」
 
「アイシャ?……あ、あっ!さっきまでオイラと一緒に宝箱開けてたけど……、その後……」
 
アルベルトが聞くと、ダウドは普段から困った様な表情が更に困った顔になる。
……うっかり目を離し、油断した隙に何処かへフラフラ歩いて行ってしまったらしい。
 
「おーいー……、しっかり見てろよ、おめーはよう……」
 
「何だよお!オイラ一人の所為にすんなよお!」
 
「とにかく……、アイシャを探そう、まだそんなに遠くには行ってない筈だから……」
 
また揉めそうになる二人をアルベルトが制する。
 
「勝手に一人で先に塔にでも行かれたら困るしなあ~、たく、ぶつぶつ!」
 
ジャミルも動きだし、アイシャ捜索隊が出動するのであった……。
 
……しかし、等の本人はと言うと。やっぱり……。
 
「何するのっ!放してっ!」
 
「うるせーの、黙ってな嬢ちゃん!それにしても、こ~んなカモが……、
こんなとこにいるとはねえ~、ひっひっひひい~……」
 
やはり一人で勝手にチョロチョロしている間に、いつの間にか
アイシャ一人でナジミの塔内部に来てしまい……、慌てて皆の所に
戻ろうとしたが、塔に財宝荒しで潜入していた性悪盗賊集団に拉致られて捕まっていた。
 
「けど、親分、こんなガキどうするんで?」
 
盗賊の子分が頭らしき男に聞くと、頭はフンと鼻を鳴らした。
 
「まあ、顔は中々可愛いからな、……人買いにでも売り飛ばしてやるさ、
……少しはコレの足しにもなるだろうからな!」
 
「!」
 
頭は指で丸ポーズを作ると子分達の方を向いてニタニタ笑う。……アイシャは慌てる。
 
「……ちょ、ちょっと、キャー!いやああっ!放しっ……!んー!」
 
声を出そうとしたが、頭のごっつい手で口を塞がれてしまう。
 
「騒ぐんじゃねえっ、静かにしてろっ!おい、取りあえずこのまま塔の最上階まで行くぞ、
ちょっくら用があるんでな……、行くぞ、おめーら!」
 
「はあ……」
 
頭は脇にアイシャを抱えるとダッシュで塔の上の階まで突っ走って行く。
道中、襲い掛かってくるモンスターには煙幕をぶつけ、ばら撒きながら逃走する……。
アイシャはそのまま盗賊達と一緒に連れて行かれてしまうのだった……。
 
(どうしよう~、困ったなあ~、私……、どうしよう、どうしよう……)
 
 
……そして、洞窟中、アイシャを探し回るジャミル達であったが……。
 
「駄目だ、探したけど、何処にもいないよ……」
 
「オイラの方もだよお~……」
 
「チッ……、外にはいかねえと思うし……、だとしたら……、やっぱり……」
 
腕組みをしてジャミルが考える。やはり考え付いた事はこれしかなかった。
 
「……先に行っちまったな、塔へ……、あのジャジャ馬めえ~……」
 
「とにかく……、僕らも先へ進んで塔の方へ向かおう、此処よりも
モンスターも強くなってるだろうし、アイシャが心配だよ……」
 
「あの、オイラ……、もしかしたらアイシャがひょっこりと
出てくるかもしれないから、此処でお待ちして……」
 
「……洞窟中散々探しただろ、もう此処には絶対いねーっての!」
 
「それに、ジャミル、さっき塔へと続く階段を見つけたんだ……、
その前にこれが落ちていたよ……」
 
アルベルトがジャミルにある物を渡す。……アイシャがいつも両耳に着けている
耳飾りのかたっぽである。それはやはり、アイシャが先に塔へと入って行ってしまった
事を決定的づける証拠であった。
 
「……ひえええーーっ!!」
 
ダウドの顔が斜めにひん曲がる……。
 
「……曲ってる場合じゃねえっての、とにかくだ、これで俺らも塔に進めるな、
あーのージャジャ馬っ!!見つけ次第デコピンの刑だっ!行くぞ、アル、ダウドっ!」
 
ジャミル達は急いで塔内部へと突入する。……おまけのミッションも増えてしまったが……。

「……ねえ、何か足音がしないかい……?」
 
「……ひっ、ひーっ!?」
 
「静かにしてろっ!バカダウドっ!……」
 
耳を傾けると……、確かに塔内からズシンズシンと……、足音と地響きがしてきた。
 
「モンスターだっ!!それもかなり大きいよ、ジャミル、ダウドっ、構えてっ!」
 
「……出やがったかっ!」
 
ジャミルは銅の剣を構え直し、ダウドは……、丸くなって脅える。3人の目の前に
立ち塞がるのは、初めて対面するモンスター、巨大カエルのフロッガー、人の顔をした
変な顔のチョウ、人面蝶であった。
 
「どけよっ!邪魔なんだよっ!てめーらっ!」
 
「ジャミルっ!むやみに突っ込んだら危ないっ!」
 
アルベルトが止めるのも聞かず、ジャミルは人面蝶に突っ込む。
……人面蝶は羽から何やら鱗粉の様な物を放出。……それは
鱗粉の様に見えたのだが、人面蝶の放った魔法、マヌーサであった。
ジャミルは幻に包まれてしまう……。
 
「なんだこれ……、周りが何も見えねえ……、おい、アル、ダウド、何処行ったんだ?」
 
「アルう~、ジャミルが何かやばいよおお~……」
 
「マヌーサに掛ったね……、全く、だからあれ程……、仕方ない、僕も攻撃魔法を……」
 
しかし、次の瞬間……、呪文を詠唱しようとしたアルベルトの身体目掛け、
フロッガーが長い舌を出す。アルベルトは舌に身体を巻き付けられ拘束されてしまった。
 
「アルううーーっ!!」
 
「くっ……!か、身体が動かな……、ああーーっ!?」
 
フロッガーはアルベルトを拘束したまま、口元まで身体を引き寄せる。
……そのままアルベルトを丸呑みにしようとしていた。
 
「こらーっ!ア……、アルをはなせえーーっ!!」
 
ダウドも慌ててひのきの棒でフロッガーの身体を殴るが。しかし、ダウドの腕力と
武器がひのきの棒では真面にフロッガーにダメージを与えられない。
その間にも、アルベルトはどんどんフロッガーの口元へと吸い寄せられてゆく。
 
「会心の一撃っ!!」
 
「ジャミルううーーっ!!」
 
ジャミルの会心の一撃、後ろからばっさりとフロッガーを斬った。
……巨体のフロッガーはその場に倒れ、塔内には一瞬、又物凄い音が響き渡る。
 
 
「……何だ、この音はよ……」
 
「親分……、モンスターですかね……、エライ音がしたなあ~、
それになんか雄叫びが聞こえた様な……」
 
アイシャを攫った盗賊集団、此処まで突如聞こえてきた大きな音に
足を止めて辺りを見回した……。
 
「ジャミル達だわっ!きっと塔まで来てくれたのね!モンスターをやっつけたのよ!」
 
「やかましい小娘だな!ハン、誰が入って来たんだか知らねえけどよ、
んな、ど素人の冒険者は途中でくたばるんだよ!」
 
「……何よっ!あんた達なんか大ガラスやスライム相手でも戦わないで逃げ回ってるだけじゃないのよっ!!」
 
「んとに、うるせー小娘だな!大人しくしてねえとっ!……どうなるかわかんねーぞっ!」
 
「わかりたくもないですっ!……第一おじさん達、ちゃんとお風呂入ってるのっ!?
臭くてしょうがないのよっ!!清潔にしないと大変なんだから!」
 
「おい……、あれ出せ、こいつうるさくてしょうがねえ……」
 
「は、はあ……」
 
頭が子分に目配せする。子分は下げていた袋からある物を取り出す。
……袋の中から……、ズタ袋である。
 
「暫くこん中に入ってろ……、まあ、塔の最上階までもうすぐだからな……、
それまで酸素は持つだろ……、よし、お前らやれや!」
 
「やああーーっ!えっちっ!へんたいーーーっ!!……もごもご!」
 
アイシャは暴れるが、子分達に身体を抑え付けられ……、ズタ袋の中に押し込められる。
頭はアイシャが入ったズタ袋を肩に担ぎ上げる。
 
(……もうやだあーっ!これじゃ私、まるで芋虫さんじゃないのよう!えうう~……)
 
「これで少しは静かになんだろ、さあ、行くぞお前ら、最上階までもうすぐの筈だ……」
 
「へ、へい……」
 
……盗賊一味は再び最上階目指し、走り出す……。
 
 
そして、再び此方はジャミル側。
 
「あの変顔の蝶、いい加減で剣振り回してたら適当に攻撃が当たって
倒しちまった……、畜生、幻覚術なんか掛けやがって、なめんじゃねーっつーの!」
 
「はあ、とにかくアルも無事で良かったよお~……」
 
「うん、何か唾液で身体中ベトベトだけれど……、仕方ないね、
今はそんな場合じゃないからね……」
 
「俺も休みてーけど、アイシャを早く探してとっ捕まえねーとな、行こう!」
 
「ひ、ひいい~……」
 
休む暇なく、男衆は再び塔の中を走り出す。彼方此方走り回り、
塔の中を探索していると、ある場所を発見する。
 
「何だ?……宿屋か?こんな所に……」
 
塔の中で、宿屋を経営しているらしかった。塔を探索する冒険者の為に用意されているらしい。
 
「ジャミル……」
 
又足を止めそうになるジャミルをアルベルトが突くが。宿屋の中から店主が出てきた。
 
「いらっしゃいませ、お疲れでしょう、冒険者さん達……、ささ、どうぞどうぞ、中へ……」
 
「あの、折角お気を遣って頂いて申し訳ないのですが、僕達……」
 
アルベルトは折角の店主の言葉を遮ろうとし、……ジャミルとダウドは二人してブン剥れた。
 
「それにしても、今日はよく冒険者様がおいでになる日だ、……先程もですね、
何人かの方が塔にいらっしゃいまして、ドタドタと走って行きましたよ、
何だか可愛い女の子を抱えていた様な……、お連れの方は女の子と比べると随分とまあ
対照的でまるで筋肉自慢の集まりの様な方達でした」
 
「ジャミル……」
 
アルベルトがジャミルを突っついた。ジャミルは慌ててもう少し店主に話を伺う事に……。
 
「そ、その一緒にいた女の子ってのは……、どんな感じだった?」
 
「はい?そうですね、赤毛におかっぱでお団子頭ヘアの女の子でしたよ」
 
「「……アイシャだああーーっ!!」」
 
男3人は声を揃えた。やはりアイシャが何者かに誘拐された事実に、もう間違いはないと
3人は確信したのであった。

その3

一方の盗賊集団共は……、アイシャを抱えたまま走るのを止めなかった。
只管、走る。走る。走る。最上階目指して。只管突っ走る。そして、ズタ袋に
押し込められた中のアイシャはもう呼吸が限界であった。
 
「お、親分……、中の女の子、大丈夫ですかね……」
 
「何か返事しませんけど、……おーい、生きてるかあ~?」
 
子分共が心配し、慌ててアイシャを突っついてみるが、何とかアイシャは
返事の代わりにもぞもぞと足を動かしてみる。
 
「もうゴールまでんなに時間掛んねえよ、もう少しだ!オラ、テメーら行くぞっ!」
 
「へえ……」
 
そう言いながら子分の一人は道具袋の中の煙幕を確認する。残りは一個。
 
「ところで、親分……、この塔の最上階には何があるんで?
あっしらその辺はまだ、親分から何も話を聞いてねえんで……」
 
もう一人の子分が頭に訪ねる。不安そうな顔を頭に向け。
頭はピクッと耳を動かすと、漸く走っていた足を止めた。
そして後ろからついてきていた二人の子分共を振り返る。
 
「まだ言ってなかったか?……この塔の最上階に住む爺さんが
何でもどんな扉でも開けちまう、すんげえ鍵、最後の鍵を持ってるって話だ、
俺たちゃそれを頂きに行くのさ!」
 
「へえ……、そらすげえ!」
 
「どんな扉でも開けちまうとな!」
 
(な、何よ、そんな話聞いてないわっ!この塔にあるのは盗賊の鍵の筈よ!
……それにしても……、どんどん息が苦しくなってきたわ、あ~ん、誰か何とかしてええ~……)
 
アイシャは息苦しいズタ袋の中で、只管、必死で耐えるのであった。
 
「よし、これでおめーらも分ったろう、この塔での最終目的がよ、んじゃ、行くぞ!」
 
「ま、待って下さい、……煙幕がもう残り一個です、……これで最上階まで持つでしょうか……」
 
子分の一人が袋から出した最後の一個の煙幕を頭に見せた。
 
「うわあ、これが終わっちまって、もしも、つえー敵が出たら……、
俺達、乗り切れるんですかね……」
 
もう一人の子分も不安な顔を見せる。……が、頭は、もう最上階が近いんだ、
んなモン、んじゃあねえよとの一点張りで実にいい加減である。
 
(……何よっ!戦いなさいよっ!意気地なしっ!)
 
アイシャはもぞもぞ動きながら袋の中で精一杯抵抗してみる。
 
「……暴れんじゃねえっ!このガキっ!!……まだ生きてるな、よし!
ンじゃあ本当に行くぞ!もう止まらねえぞっ!!おめーら!」
 
「はあ……」
 
「へえ、大丈夫かな、本当に中の女の子は……」
 
……しかし。
 
「!お、親分っ!!」
 
「う、うぉっ!?」
 
二人の子分が悲鳴をあげ、頭も事態に気づく。目の前に集団のモンスターが立ちはだかっていた。
この塔の中でも最も厄介な部類に入り、メラを使いこなす強敵、……魔法使いである。
 
「突破すんぞオメーらっ!煙幕投げろオーッ!!」
 
「へ、へえ……、うわっ!?」
 
だが、そんな物をほおり投げる暇なく、魔法使い達は物凄いスピードで呪文を詠唱し
メラを盗賊達に目掛け放出するのであった。
 
「……あぶねええーーっ!!おめーら散らばれーーっ!!」
 
頭はそう言うと抱えていたズタ袋を思い切り遠くに投げる。投げられたアイシャは
袋の中で何が何だか分からず地面に叩き付けられ……、そして悲観する……。
 
(なんなのよう~、もう~!こんなのいやーっ!誰か……、も、もう空気が……、げんか……)
 
もう駄目かと思ったその時……、漸く袋の口が開き、光が見えた。
 
「……ぷはっ!げ、げほ……」
 
「嬢ちゃん、平気か?もう大丈夫だ、ささ、早く逃げな!」
 
「あなたは確か……」
 
漸くズタ袋密封地獄から解放され、外に出られたアイシャ。自分の目の前にいたのは
盗賊集団の頭の子分の一人であった。
 
「あの、私を助けてくれたの?」
 
「んな事はどうでもいいんだよ、とにかく早く逃げな、此処にいたら危ねえよ!」
 
「……あっ!!」
 
ズタ袋から解放されたアイシャは改めて周囲の状況を確認する。
側には魔法使いの集団、……そして、火傷を負い、倒れている頭と
と、もう一人の子分の姿であった。
魔法使いは尚も倒れている二人ににじり寄っている……。
このまま燃やしてしまおうとしているらしかった。
 
「大変っ!……早く助けないとっ!」
 
「いいんだよっ!嬢ちゃんはっ!親分は俺が助けに行く、だから早く逃げな!!
心配しなくていいからっ、ささ、早く!」
 
「嫌よっ!」
 
……しかし、アイシャは折角の子分の言葉を遮るのであった。
 
「な、何でだよォォー!お前はアホかっ!?それに俺達はお前を誘拐して
人買いに売り飛ばそうとしたんだぞォっ!マジモンのアホかああーっ!?」
 
「……あなたは私を助けてくれたもん、今はそんな事言ってる場合じゃないのよっ!
それに、あなただって火傷してるじゃないっ!」
 
「……嬢ちゃん……」
 
アイシャはそう言うと負傷している子分の手をそっと取るのであった。
 
「大丈夫、こう見えても私は冒険者なの、まだ駆け出しだけどね……、
私だってメラぐらい使えるわ、さ、行きましょう、親分さんを助けに行くんでしょ!」
 
「……嬢ちゃん、アンタやっぱアホだぜ、……ううう~、ごめんな、ウチの親分、
本当は意気地なしなんだよォ~、……カッコばっかつけてるけど、悪事なんか
何一つ成功した事がないんだあ~、あんたを脅したのもカッコつけただけなんだ、
本心じゃ、んな事する気もミジンもねえ癖に……、ごめんなあ~……」
 
……アイシャの優しさに子分、思わず鼻を垂らす……。
 
「……アホアホ言わないでよ、いいわ、もう、それよりも行きましょう、
あなた達の大切な親分さんを助けに行くんでしょっ!」
 
アイシャが子分に向かってウインクする。
 
「ああっ、助けるぞっ!いくぞおーっ!!待ってて下さいっ、親分ーーっ!!」
 
元気を取戻し、再び頭の元に走って行く子分。その後をアイシャも急いで追うのであった。
 
 
……
 
「……く、くそ、やるんなら……、早く殺せ……」
 
「親分……」
 
火傷を負い、負傷したまま地面に倒れて動けない状態の頭ともう一人の子分。
そんな二人に止めを刺そうと……、魔法使い達がゆっくり近づいてくる。
 
「これで……、終わりか、……俺は最後まで間抜けだったな……」
 
頭が覚悟して目を瞑った、その時……。
 
「親分達ーーっ!!今、お助けしますーーっ!!」
 
「……な、何だとっ……?」
 
「メラーーっ!!」
 
突如、逆にメラ攻撃が魔法使い達を襲った。突然のメラ攻撃に
魔法使い達は頭達に手を出そうとしたのを止め、戸惑いだす……。
 
「早く逃げるのっ、さあっ!子分さん、後はお願いっ!二人を連れて逃げて!」
 
「……お、お前は……」
 
アイシャであった。アイシャは頭達の前に出、頭達を魔法使いから守ろうとする……。
 
「……な、何やってんだバカ野郎がっ!!」
 
寝転がったままの体制で頭がアイシャに激怒するが、アイシャは凛として引かず。
 
「私も魔法使いの卵よっ!あんた達よりもよっぽど戦えるんだからっ!
だから此処は私に任せてっ、早く逃げるのよっ、子分さん達とっ!
それからねえ、あなた達弱いんだからこんな所フラフラあんまり来ない方がいいわよ!?」
 
「ふ、ふざけるなこの野郎!……あ、あた……」
 
「親分、此処は嬢ちゃんに任せましょう、……やっぱり俺らは弱いんですよ、
嬢ちゃんの言う通りです、……悔しいですが……」
 
アイシャを袋から助けてくれた子分、頭に肩を貸し助け起す。
何とか頑固親分を諭し、説得して逃げようとするが。
 
「テメーまで何言ってやが……、ア、アーーー!!」
 
頭達に向け、再び容赦なく魔法使いのメラ攻撃が発動する。
しかしアイシャの方もメラで応戦し、盗賊たちを庇う。
……二つのメラ同士が激しくぶつかり合う。
 
「おめえ、結構凄かったんだな、……ガキの癖に……」
 
「ふんだ!だからさっきから言ってるのよう!」
 
漸く頭の方もアイシャの力を認め始め、頭達はその場を離れ、逃走する。
 
「はあ、これでやっと……、落ち着いて戦えるわ……」
 
アイシャは気を取り直し、改めて魔法使い達と向き合う。
しかし、アイシャはまだ当然の如く、LVが低く……、MPにも限界が来ていた。
魔法使い達は負傷している物の……、決してメラで粉砕出来た訳ではなく、
数はまだしっかり3体残っている。
 
「何とかして倒してしまわないと……、失敗は出来ないわよっ!
……でも、ヒャドぐらい覚えておけば良かった……」
 
アイシャも段々不安になってきていた。果たして自分だけでこの場をやり過ごせるのか
どうか……。

「……あ、あっ!?」
 
激しいメラ合戦を魔法使いと繰り広げていたアイシャ。しかし、遂にアイシャの方の
MPが残り少なくなってしまう。……魔法使いは勝利を確信したのか、
フードの中から邪悪な笑みをちらつかせ、じりじりと……、アイシャに近寄って来た。
 
「……嬢ちゃんっ!!」
 
「来ちゃ駄目っ!……私は大丈夫よっ!!」
 
アイシャは心配して自分に声を掛けた子分達に向かって笑みを浮かべ精一杯強がって
見せた。しかし、腕力は有らず、他にどうやって魔法使いと戦ったらいいのか……、
アイシャは心細くなり、本心では泣きたくなっていた。
 
(こんな時……、ジャミル……、皆が来てくれたら……、ううんっ!これは
私の試練なのっ!絶対にこの場を切り抜けて見せるんだから!)
 
魔法が駄目なら、やはり打撃しかない。……アイシャは武器のひのきの棒をぎゅっと
握りしめた。しかし、MPももう付き掛け、貧血を起こした様に身体もフラフラし始める……。
 
「……ま、まけな……、い……、わよう……」
 
……目の前の魔法使い達が……、ブレて見える。魔法使いが更に10匹に増えた様に
アイシャには見えている。
 
「……絶対に……、あきらめ……、ない……」
 
「……嬢ちゃーーんっ!!」
 
再び子分達の声が聞こえた。しかし、アイシャの身体はがくんと……、その場に倒れ込んでしまうのであった。
 
……だが、次の瞬間……。
 
「全く、……世話焼かせやがってっ!首輪つけるぞっ!オメーはよっ!」
 
「あれ……?」
 
地面に倒れたかと思ったアイシャ。気が付くとアイシャはジャミルにお姫様抱っこされ、
ジャミルの腕の中にいたのだった……。
 
「……ジャミル?きゃ、きゃあああーっ!!うそうそうそーっ!お、おろしてええーー!」
 
「うるせー!騒ぐなっ!……ったくっ!」
 
ジャミルはアイシャを下に降ろす。ジャミルも気の所為か、少し顔が赤い。
 
「あ、有難う、ジャミル……、あの、その……」
 
「アイシャ、大丈夫かい!?」
 
「はあ~、見つかってよかったああ~、あまり心配させないでよお~……」
 
「アルっ、ダウドもっ!……来てくれたのっ!?」
 
漸くアルベルトとダウドも駆けつけ、4人は漸く塔の中で無事再会を果たした。
 
「まずは敵をやっつけねーとな、話を聞くのもそれからだ、……デコピンの刑もな……」
 
「な、何ようう~……」
 
何となく悪寒がし、アイシャは後ろに後ずさりするのであった……。
 
「よし、俺とアルであいつらを何とかする、ダウド、アイシャを見ててくれ!
……またどっか行かねえ様に……」
 
「わ、分ったよお!」
 
「ぶー!……気を付けて!ジャミル、アル!」
 
「ああ!」
 
「行くよ、ジャミル!」
 
ジャミルとアルベルトはダッシュで魔法使いに突っ込んで行く。
アルベルトは温存していたMPでメラを魔法使いに当てる。
援軍に油断したのか魔法使い達は面食らった様子で、呪文を
詠唱するのも忘れ、驚き、戸惑っている……。
 
「いただきいーーっ!食らえーーっ!」
 
ジャミルの攻撃!あっという間に、魔法使いの一匹を斬り倒す。
仲間を倒された事に激怒し、もう2匹が我に返り、再び呪文の詠唱を
始めるが、それをアルベルトも許さず。アルベルトのメラの方が早く、
もう一体の魔法使いはあっという間に炎に包まれる。小さな火は
一瞬にして大きな炎に変わり、魔法使いに襲い掛かるのだった。
 
「やったよおお!後一匹だよお!」
 
「凄いわっ、二人ともっ!」
 
「すげえ、あいつら、マジで……」
 
「本当に只の冒険者と違いますね、親分……」
 
「むう~……」
 
離れた場所で戦いを見守っていた盗賊集団達。彼らが天に選ばれし者である事だと
分るのはまだ当分先の事。
 
「……!!」
 
等々残り一匹になった魔法使い。……最後の力を振り絞り、ありったけの力を籠め、
最大のメラをジャミル達に放出しようとしたが……。
 
「もう、終わりだよ……、ヒャドっ!!」
 
最後の最後で……、アルベルトも氷魔法、ヒャドを唱える。氷柱に閉じ込められた魔法使い。
……あっという間に氷と共に砕け散ったのであった。
 
「アル、いつの間に……、わ、私よりも先にヒャド覚えてるなんて、
……あはっ!でもすごーいっ!」
 
燥いで喜ぶアイシャの姿を見て、アルベルトも笑みを浮かべた。
これにて、漸くバトル終了。で、丸く収まる筈がなく……。
 
 
……
 
「んで、こいつらがアイシャを誘拐したワケだ、……ふうう~ん……」
 
盗賊集団達はジャミル達に囲まれ、当然の如く、質問攻めにあっていた……。
 
「そうだよ、わりィかよ、……もう獄にでも送るなり何でもしやがれ!
どうせ俺なんかよ、何やったって駄目なんだ、所詮無駄なんだよ……、
生きてたってな、どうせおもしれえ事なんか何一つありゃしねえんだよ……」
 
「あ、あっしらが親分の罪を背負いますっ!だから、お願いします、
どうか親分だけは許してやってくだせえ、……たのんます……」
 
「この通り、お願いします……」
 
子分達は土下座してまでジャミル達に頭を下げ、頼み込む……。
 
「……ふざけてんじゃねえぞ、てめえらっ!てめえらそれでも賊かっ!!
ええーっ!?みっともねえ真似すんじゃねえっ!!」
 
プライドを捨ててまで、頭を許して貰おうと子分達が土下座する。そんな彼らを見て
頭は一喝するが、それでも子分達は土下座を止めず……、ぺこぺこ頭を下げ続ける……。
 
「二人とも、あなたの事が本当に好きなんだわ、だからこんなに心配してるんじゃ
ないのっ!バカっ!あなた、こんなに子分さん達に信頼されてるのよっ!どうして二人の気持ちが分からないのよっ!……バカバカバカっ!!」
 
「バ……、バカだとううう!?」
 
「そうよっ、バカよっ!それに他にも生きていく道なんか沢山あるわっ!
要するに、あなたは危険な事や悪い事に向いてないのっ!だからっ!!」
 
「お、おい……、アイシャ!?」
 
「……」
 
先程からバカ連発を発していたアイシャ。急に無言になると頭の側に近寄り、そして……。
 
「あなたが本当の悪人なら、子分さん達をほおり出して自分一人でも逃げてる筈だわ、
でも……、あなたはそれをしなかったんだもん、やっぱりあなたも子分さん達の事を
心から大切に思っている証拠だわ、……ね?」
 
頭の手を……、そっと握りしめたのであった。
 
「単純な嬢ちゃんだな、そう纏めるか……、ケッ……、どうしようもねえガキだ……」
 
口ではそう言っているが、頭の表情からは険しさが消えていたのであった。
 
「……ううっ、おやぶうう~ん!」
 
「……うおおお~ん!!」
 
「はあ、俺達、何仕事やっても上手くいかなくてな、職場の出来損ない仲間だったのさ、
ヤケを起こしちまって……、んで、一緒に攣るんで性悪盗賊稼業に手を出したワケだよ
けどそれも無理だったな……、どら、又次の仕事探すか……、今度は真面目にな……」
 
子分達も頭に駆け寄り大号泣。……見ていたジャミル達男衆はあんぐりと……、
パペット人形の様にぱかっと大口を開けるのであった……。
 
「っと、口開けてる場合じゃねえ、けど、アイシャを誘拐した事は話が別だ……、
どうしてやっかなあ~……」
 
「待ってジャミル!私はもういいよ、……盗賊さん達を許してあげて!……お願い!」
 
「アイシャ、お前……、あのなあ~!」
 
今度はアイシャが必死でジャミルに頼み込む。お人好しなアイシャにジャミルは呆れるが……。
 
「ジャミル、許してあげたら?アイシャは無事だったんだから……、ねえ?」
 
「アルっ!」
 
ちょっと困った様な表情をしていた物の、アイシャの気持ちを感じ、アルベルトも
ジャミルを説得してみる。
 
「オイラもお~、ヘタレだから……、皆の気持ちがよお~く分るよおお~、ぐすっ、
う~、しょっちゅう殴られるんですよお~、この……、意地悪アホジャミルにーっ!!」
 
「坊主もかい、……大変なんだなあ~……」
 
「……おおお~ん!」
 
ダウドまで加わり、子分達と号泣し始める……。
 
「……こ、この馬鹿ダウドっ!誰が意地悪だっ!あ、あーっ!もうええわっ!
お前ら、はよどっか行けっ!……たくっ!!」
 
「あはっ!ジャミル、ありがとうーっ!」
 
「……たくっ!」
 
アイシャは感激してジャミルに抱き着く。……ツンデレているが、ジャミルの顔は赤い……。
 
 
……
 
「じゃあな、お前ら元気でやれよ、嬢ちゃんもな……、又どっかで会おうな!ありがとな!」
 
「うん、みんなも元気でね!もう悪い事しちゃ駄目よ!」
 
「さよならー!」
 
「お元気でー!」
 
盗賊達はアイシャとジャミル達に礼を言い、壁の無い個所から
下の階に飛び降りると、その場を去った……。
 
「はあ、これで一段落ね、どうなる事かと思ったけど、盗賊さん達も
新しいお仕事探すみたいだし、本当によかっ……」
 
「良くないですよー、お嬢さ~ん……?」
 
「……きゃ、きゃっ!?」
 
ジャミル、嫌らしい笑いを浮かべ……、指ピンピンで空気を弾いている。
 
「な、何よおお~、ジャミル、その顔……、あは、あはは、……きゃああーーっ!!」
 
「やる事はきちんと致すーーっ!デコ出せーっ!心配掛けた罰だーっ!
成敗してくれるーーっ!!このジャジャ馬ああーーっ!!」
 
「やーんっ!ジャミルのバカあーー!!」
 
ジャミル、逃げ回るアイシャを追掛け、再び塔中を掛けずり廻るのであった……。
 
「アイシャ……、MPも大分無くなってる筈なんだけど……、大丈夫なのかな……?」
 
「まあ、ジャミルの所為で取りあえず元気なんだから、……いいんだよお~……」
 
 
「……はあ~……」
 
 
アルベルトとダウド……、その場に残された二人は揃って大きな溜息をついた。

その4

色々あったが、無事アイシャもチームに戻りジャミル達も一安心。
……が、この後も彼女は事ある事に時に暴走し、危険な目に遭い
ジャミル達に冷や汗を掻かせる事になるのであるが、それはまだ当分先の話。
 
「漸く辿り着いた……、やっと、最上階だ……」
 
疲れた様にジャミルが呟いた。4人は一度、最上階まで上がり、怪しい小部屋を
発見するが、扉の前に他の所から入れとの張り紙がしてあり、鍵が掛かっていた。
遠回りして別のルートの階段から回り、やっとこさ、部屋への別の裏入り口を見つける。
 
「はあ、わざわざこんな回りくどい事しなきゃなんねえとか、面倒くせーなあ、んとに……」
 
「ねえ、ジャミル……」
 
「あん?」
 
「この塔で手に入るのは盗賊の鍵よね、盗賊さん達が言ってたの、
どんな扉でも開けられてしまう最後の鍵をこの塔にいるお爺さんが
持ってるって……」
 
「そらおめえ、奴らの勘違いだよ、……序盤からんなモン手に入ったら
それこそチートだよ、チート!」
 
「……そうね……」
 
アイシャにそう言いながらジャミルの目線はアルベルトの方を見ている。
 
「お願いだから僕の方見ないで……」
 
「……」
 
自分だって宝箱に強い武器が入ってねえのなんのと散々騒いでたじゃないかと、
ダウドは心で思うのであった。
 
「何だ、ダウド……」
 
「何でもないですよお!」
 
……ジャミルは気を取り直し、部屋の前で深呼吸した。
 
「よしっ、この部屋に……、盗賊の鍵を持ってる爺さんがいる筈だ!入るぞっ!」
 
ジャミルは裏入口から勢いよく中へと入る。他の3人もジャミルの後に続く。
漸く中に入ると、確かに中には一人……、ぽつんと椅子に座って俯いている老人がいた。
老人は4人に気づくとゆっくりと顔を上げる。
 
「おお、やっぱり来たか……、して、少年、お主はジャミルか?」
 
「そ、そうだけど……、何で俺の名前知ってんだよ、何か気味わりィなあ~……」
 
「ふんふん、ふん……」
 
老人はジャミルに近寄るとジャミルの顔を近くでまじまじと見つめ何やら確認を取っている。
 
「老人ホモ……?」
 
「……うるせーぞ、ダウドっ!」
 
「プッ……」
 
横を向いてアルベルトが吹いた。
 
「間違いない、儂の夢で見た顔と同じじゃ、名前もな……、
ジャミルよ、儂は夢の中でアンタにこの鍵を託す夢を見た、
だからお主にこの鍵を渡そう、受け取ってくれるな……?」
 
「これが……、盗賊の鍵か?」
 
ジャミルは老人から鉄の鍵を受け取る。
 
「さよう、さあ、もう此処には用はない筈であろう、行きなさい、
……儂は夢の続きを見るとしよう……」
 
「……爺さん……?おい!」
 
ジャミルは急に眠ってしまった老人に慌てて声を掛けるが……。
 
「ぷう~、ぷう~……」
 
「おい……」
 
「大丈夫よ、ジャミル、お爺さん寝ちゃっただけよ!」
 
アイシャも老人の呼吸の確認をする。そして近場に置いてあった毛布を掛けてやるのであった。
 
「……ふにゃ、ふにゃ……、zzzzz」
 
「たく、人騒がせな爺さんだなあ!俺はまた……、お役目果たして
……天命を全うしちまったんかと思ったよ……」
 
「……もう、君も失礼だなあ~……、本当に口が悪いんだから……」
 
アルベルトも呆れるが、取りあえず爺さんに何事もなくてほっとしている。
 
「んじゃあ、此処を出るか、爺さん、この鍵預かるぜ、ありがとな!」
 
ジャミル達は眠ってしまった老人を起こさない様、そっと部屋を出る。
そして、塔を後にし、魔法の玉を貰いに再びレーベの村へと戻った。
 
 
再びレーベ……
 
ジャミル達は再度、火薬職人爺さんの家の前を訪れる。そして盗賊の鍵で扉を開ける。
 
「……おお、待っていたぞ、話は聞いておる!さあ、この魔法の玉を持って直ぐに
いざないの洞窟へと行くが良い!この魔法の玉で立ち塞がる壁を壊せる筈じゃ!」
 
「あのさ、話聞いたって……、一体誰から……?」
 
「……だからっ!大元の原作がFC全盛期のRPGで……、細かい事、
色々突っ込んだら駄目なんだって!」
 
「だってよう~……」
 
突っ込みたがり、話をややこしくしようとするジャミルを
慌ててアルベルトが制するのであった。
 
「と、とにかく、これで新しい大陸に行けるのね!お爺さん、どうもありがとう!」
 
「えへへ、有難うございまーす!」
 
アイシャとダウドがお礼を言う。アルベルトも慌てて爺さんに頭を下げ、礼を言った。
……ジャミルだけは何となくしっくりこないのか、少しムスっとしている。
 
「まあいいか、んじゃな、爺さん……」
 
「ほほ、玉がお役に立てる事を祈っておるよ、時にお主……」
 
「はい……?」
 
今度は火薬職人の爺さんがアルベルトを呼び止める。
アルベルトはきょとんとした顔をし、爺さんの方を振り向く。
 
「お主……、見た感じ、随分真面目そうじゃのう~、……眉間に皺が寄っておるぞ、
……それではいかんのう……」
 
「は、はいい~?」
 
爺さんの言葉の意味がよく分からず、アルベルトが首を傾げた。
 
「……真面目なのはいい事じゃ、じゃが、そのままではいずれお主自身の身体に
支障をきたしてしまう事になってしまうかも知れんぞ……、もっと心をリラックス
させないといかんぞ……、のう……、おんしはまだ若いんじゃ……」
 
「はあ、……分りました……」
 
一応老人にそう返事を返しておくが、爺さんがアルベルトに
一体何を伝えたいのか……、今はまだアルベルトも
良く分からないままであった。ジャミル達は既に爺さんの家から外に出ており
家の中に最後まで残っていたのはアルベルトだけだった。
…… 何となく気分がモヤモヤのまま、アルベルトも爺さんの家を後にする。
 
「随分遅かったな、……何の話だったんだ?」
 
「……ん?……な、何でもないよ……」
 
「そうか~?」
 
ジャミルはまだアルベルトに聞きたそうだったが、それ以上この話はアルベルトはしなかった。
 
「今日は初めての本格的な冒険で疲れたね、もう暗くなってきたし、宿屋で休もうか?」
 
「おお、そうすっか!腹も減ったしなあ!」
 
「くくく、ジャミルのお腹は一年中年中無休の癖にィ~!」
 
「……うるせーんだよっ!このバカダウドっ!!」
 
「何だよおおーー!バカジャミルっ!!」
 
「二人ともやめなさいったらっ!人が見てるでしょっ!!」
 
また取っ組み合いになりそうになったジャミルとダウドをアイシャが注意する。
……その横で……。
 
「……」
 
「アル、どうしたの?……疲れちゃった?あの、ごめんなさい、私の所為で……、余計な……」
 
「あっ、いいんだよ、気にしないで、アイシャの所為じゃないよ……、
確かに沢山MPは消費した様な気がするけど……、でも、こんな事、この先
旅が進めばしょっちゅうある事だよ、先に進めば進むほど、敵はどんどん強くなるんだから……」
 
「でも……」
 
「そんな顔しないで、さあ、宿屋へ行って休もう……、其処の二人……、
……まだMPは残ってますので……」
 
……アルベルトの警告に……、揉めていた二人、……ピタッと動きを止める。
 
「よし……、さあ、行くよ……」
 
(畜生、……この腹黒めっ!)
 
「何かな?……ジャミル……」
 
「……ひい~っ!何でもないですう~っ!!」
 
「もう~、でも、ジャミルもアルには敵わないわね!ふふ!」
 
アイシャがくすっと笑った。……今に見てろ腹黒~……、と、ジャミルはしつこく心で誓う。
 
その夜。4人は宿屋で今日の冒険の疲れを落とし、ゆっくり就寝する……。
明日はいよいよアリアハン大陸を離れ、新天地へと向かうのである。

翌朝。4人はレーベを後にし、新大陸へと続く場所、いざないの洞窟へと向かう。
レーベより東にあり、近くには泉がある洞窟との事。レーベの村人が教えてくれた。
 
「ところでよ、アル、俺らが次に行く場所、なんて言う名称なん?」
 
「……確か、ロマリア大陸だったと思うよ……」
 
「ロマリアね、……ロマリア……?」
 
分かっているのかいないのか、ジャミルが首を傾げ変な顔をした。
 
「……」
 
「あら?ダウド、何してるの?」
 
「……うん、アイシャ……、もうアリアハンに戻って来れないかも
しれないから……、別れを惜しんでいるんだ……」
 
「ちょっ、オーバーなんだよっ、オメーはっ!」
 
「……あいたあーっ!!」
 
ハンカチをひらひら振り始めたダウドの頭を一発ぽかり。ジャミルが殴る。
……そんなこんなで、4人はわーわー騒ぎながら歩いていく事、丸半日。
勿論、モンスター達も蹴散らしながらLVも適度に上げて行く。
また日も暮れかけた頃に、漸く目的地の洞窟へと辿り着いた。
 
 
 
いざないの洞窟
 
 
「此処かな?教えて貰った通り、泉があるから間違いないね……」
 
アルベルトが周囲を確認。確かに泉らしき物があり、側にはほら穴がある。
 
「あそこから入るのか、よし、行くぞ!」
 
「よーし、行くわよーっ!」
 
「うえ~い……」
 
ジャミル達の後を……、余り乗る気がないダウドがちょこちょこついて行った。
 
 
……
 
「おおー!」
 
4人はいよいよ洞窟内部に潜入。内部には先の通路を塞ぐ大きな壁が立ちはだかっていた。
壁の前には老人が一人、佇んでおりじっと壁を眺めていた。
 
「また爺さんか……、何か爺さんのフルコースだなあ~……」
 
「こ、こら!」
 
毒舌が回り始めたジャミルをアルベルトが膝で突く。
 
「ここがいざないの洞窟じゃ、じゃがこの先の階段へはこの石壁で封じられておる……」
 
「へへ、大丈夫!俺らこの壁を壊せる魔法の玉を貰って来たんだ!」
 
「な、何と!」
 
「よし、投げるぞっ!皆、壁から離れろっ!爺さんもな!」
 
「……ひいい~っ!」
 
「……」
 
一番最初に走り出したのはダウド。彼はやっぱりこういう時、異様に行動が速い。
 
 
……どごおおおーーーんっ!!
 
 
ジャミルが魔法の玉を石壁に向かってほおり投げると、凄まじい音を立て、石壁がガラガラと
音を立てて崩れてゆく。……そして、崩れた壁の先に……、階段がお目見えする。
 
「やったっ!これで先に進めるなっ!」
 
「あはっ!すごーいっ!」
 
「……うん、本当に凄い破壊力だったね……」
 
「進めちゃうんですかあ~……」
 
「何だ?……ダウド……」
 
顔をひくひく引き攣らせ、ダウドにジャミルが迫る……。
 
「キャー!何でもないよおお~っ!!」
 
「うむ、もはやこの洞窟の封印は解かれた!さあ、行くが良い、この先へ!」
 
4人は老人の言葉に頷き、壊れた石壁を見つめた。此処を無事抜けられれば
いよいよ別大陸のロマリアへと辿り着く。この先に果たして何が待ち受けるのか
今はまだ、4人には分らない……。
 
「さあ、行くぞ!爺さんも、元気でな!」
 
「うむ、お主らの旅の無事を祈っておるよ……、気を付けてな!」
 
「お元気で……、お爺さん……」
 
「さようならー!」
 
アルベルトとアイシャも老人にお礼を言う。老人はうむうむと頷いた。
 
「オイラ、……好○にな○た○歌っていい?……さよーなーら……、あいたあーっ!」
 
「変なのが飛んで来るだろうがっ!不用意に歌うたうなっ、
バカっ!金徴収されたらどうするっ!」
 
「えうう~、……気分を落ち着かせたいんだよおお~!」
 
この先に進む事で、少し不安になっているのか何だかダウドが暴走し始める。
ジャミル達はダウドを抱え、慌てて壊れた壁の向こうへと走るのであった。
 
「元気な少年達じゃ、本当に彼らのこれからの活躍が楽しみじゃのう……」
 
「はあ~、ったくっ!お?宝箱だっ!」
 
階段の側に宝箱が置いてある……。
 
「はい、オイラが開けまーす!」
 
「……おい」
 
先程まで暴走していたダウド。盗賊の血が騒ぐのか、進んで自らさっさと宝箱を開ける。
 
「えーと、これは?」
 
「地図、……みたいだね……」
 
「地図?」
 
ダウドの後ろで見ていたアルベルトが言う。ダウドはアルベルトに中のブツを
確認して貰おうとアルベルトにブツを渡した。
 
「うん、世界地図だ……、きっとこの世界の……、ほら、此処がアリアハン大陸だから……」
 
「うわ、……こうやってみると、アリアハンてすげー小さかったんだなあ~……」
 
ジャミルも地図を覗き込む。だが、地図は現時点のアリアハンは
確認出来るものの……、まだ見ぬ他の大陸はシルエットになっていて、
はっきりとはどんな場所なのか分からずまだ見えない様になっている。
 
「私達が別の大陸を訪れる事で、きっとこのシルエットも
段々封印が解けて行くのかも知れないわね……」
 
「じゃあ、ロマリアに付いたらその部分が解放されるって事かもな、成程……」
 
「この地図、オイラが預かってまーす!はいはいはーい!」
 
異様に張り切るダウド。ジャミルは不安に駆られつつも、ダウドの機嫌が
良くなって来たので、地図を預ける事にしたが。
 
「……ほれ、なくすなよ?落とすなよ……?」
 
「心得てますよお!ぶうーだ!」
 
「じゃあ、先へ進もうか……、この先、モンスターも出るだろうし、気を引き締めないと……」
 
「分ってるさ!けど、そろそろ新しい武器が欲しいとこだよなあ~……」
 
銅の剣を見てジャミルがぼやく。レーベの村でも銅の剣を上回るそれなりの
武器は売っていたものの……、高いのでパスしたのであった。
 
「……アリアハン大陸内での私の最高防具が亀の甲羅とか……、酷いわよ……」
 
「……ぎゃははははっ!!」
 
何か想像したのかジャミルが大声を上げて笑い出した。
ダウドは亀の甲羅を装備は出来ないのだが、何故か頭の中に
アイシャと一緒に甲羅を装備している間抜けな姿が登場してしまったらしい。
 
「何?……何よジャミル、何考えたのっ!言ってみなさいよっ!!」
 
「……何だよおおお!!オイラの方も見て笑ったなっ!変な想像したろっ!!」
 
「……あてててっ!こ、こらっ!よせってのっ!!」
 
ジャミル……、アイシャとダウド、両方に殴られる……。
 
「あの、そろそろいい加減で先に進もう、ジャミルを殴るのは此処を出てからでも
幾らでも出来るからね……」
 
「……余計な事言うなっ!このアホベルトおおおーーっ!!」
 
「そうね、楽しみはとっておくわっ!」
 
「オイラもそうする、……いつもジャミルに殴られてるからねえー!」
 
「……おおーいっ!!」
 
「はあ、全くもう……」
 
アルベルトが溜息をつく。ジャミルを殴るという楽しみが出来た為か、
脅えて不安になっていたダウドもすっかりご機嫌モードに。
しかし、行く手を阻むモンスターとの戦いで、この後、そんな事も
すっかり忘れてしまうのだが。何はともあれ、4人はいよいよ階段の先へ……。

その5

先への地下へと続く階段を下りた4人。しかし、やはり先へ進むには安易では無かった。
当然の如く、モンスター達も現れ、一行の妨害をする。
 
「……~!」
 
頭部に一本角の生えた紫色のウサギの様なモンスター、アルミラージ。
出会い頭に問答無用で4人にラリホーを掛ける。……4人はそのままばたっと
倒れてしまい、眠らされたまま何も身動きが取れない状態に……。
 
「あ、いたい、……いやいよおお~……」
 
複数で出現したアリクイ系のモンスター、お化けアリクイ。……寝ぼけ状態のダウドに
寄って集り、集団でダウドをボコっている……。
 
「……」
 
「……」
 
「すう~、すう~……」
 
そして此方も。眠らされたアイシャの前に立っているのはナジミの塔でも出現した魔法使い。
今回は数は2体だが、それでも強敵である事には変わりはない。魔法使い達は倒れている
アイシャをじっと見つめている。そして2匹で顔を見合わせ、目配せすると何か相談を始める。
 
「……」
 
魔法使いの1匹が、倒れているアイシャを……。
 
「……う、くそっ……、!!」
 
何か嫌な予感を感じたのか、ジャミルが一番最初に目を覚ました。
何とか歯を食いしばり、うっすらと目を開けると……、目についた光景は……!
魔法使いの1匹が眠っているアイシャを抱え、お姫様抱っこしていた。
昨日のナジミの塔のバトルでは、ジャミルが魔法使いの手からアイシャを
救出し、……お姫様抱っこした。しかし、今回は逆に敵がアイシャを抱えているのである。
 
「やめろっ!てめえらっ!アイシャを放しやがれ!!」
 
ジャミルは気力を振り絞ると急いで立ち上がる。魔法使いはジャミルの
方を見ると薄気味悪い笑みをフードの中から垣間見せた。
 
「昨日の今日といい、懲りねえなっ!てめえらもっ!」
 
ジャミルが怒鳴るが、此処にいる魔法使い達はナジミの塔で
戦った魔法使い達とは別なので、そう言っても分からんのだが。
アイシャを抱えた魔法使いはゆっくりと奥へとそのまま歩いて行こうとする。
 
「よせって言っ!……あ、ああっ!?」
 
魔法使いを追掛けようとしたジャミルの前に又も地中から別の敵が出現する。
力は弱いが、毒を持った非常に危険なモンスター、バブルスライムである。
 
「ピキキ……」
 
「くそっ!邪魔すんなってのっ!!……アイシャっ!!」
 
アイシャはどんどん奥へと連れ去さられてしまう。更に、もう1体の
魔法使いもジャミルの妨害をし、ダウドをボコっていたお化けアリクイ達も
加勢に駆けつけジャミルは敵に囲まれてしまった……。
流石のジャミルでもこの数を一人で相手にするのはまだ無理である。
アルベルトとダウドはまだ目を覚まさない……。
 
「アルっ、ダウドっ!頼むっ、目を覚ましてくれっ!このままじゃアイシャがっ!
連れて行かれちまうーーっ!……畜生ーーっ!起きろーーっ!!」
 
「ピキキーーっ!!」
 
バブルスライムが毒の泡をまき散らしながらジャミルへとジャンプし、襲い掛かる!
 
「……ヒャドっ!!」
 
「アルっ!!」
 
ジャミルの声を聞き、漸くアルベルトもラリホーから立ち直り、目を覚ました。
そして、素早くヒャドを詠唱し、バブルスライムを凍らせる。
彼は打撃攻撃等は苦手な為、……非常に攻撃の動きはトロイのだが……、
呪文の詠唱となると話は別で活き活きと輝くのであった。
 
「ジャミル、平気かい!?」
 
「ああ、サンキューな!アル!俺の方は大丈夫だけど、アイシャが又連れてかれちまったんだ!」
 
「……よしっ、急いでこいつらを倒して後を追い掛けなくちゃ!」
 
「うう~!よくもやったなああーー!!」
 
「……ブ!」
 
「ジャミル、吹いちゃ駄目だっ!我慢……、う、プッ……」
 
漸く目を覚ましたものの、お化けアリクイに殴られ頭にコブを数個作った、
……凄まじい姿のダウドも現れる。お化けアリクイはそんなダウドの姿を見て
バカにした様に跳ねて喜んでいる。……尚、ダウドは相当キレている様子。
 
「オイラは今、……凄く怒っている……、あの糞アリクイはオイラが倒すよお!
……だからジャミルとアルは残りの敵をっ!!」
 
「だ、大丈夫か?お前……」
 
「……う~、……フウ~ッ!!」
 
ジャミルが心配するが、ダウドはやはり明らかにいつもと様子が違う。
鼻の穴から煙を出し、噴気している。
……リミットブレイクモードに完全に入ってしまった……、らしい。
 
「ジャミル、此処はダウドに任せよう……、3人で力を合わせて
敵を分担して倒してしまわないと!」
 
「うしっ!やるかっ!!」
 
ジャミルはアルミラージへとダッシュ、近づいてジャンプすると思い切り銅の剣を振りおろし、
アルミラージの角を切り落とした。角を切り落とされたアルミラージは面食らい、
そのまま慌てて逃走する……。
 
「まあ無理に追うこたあねえか、……次はテメーだっ!」
 
……2体いた魔法使いの片割れ、メラを詠唱し、ジャミルに向けて放つが
これも後ろで構えていたアルベルトのヒャドに妨害され、凍らされた魔法使い、
哀れ、……その場に氷と共に砕け散る。
 
「……と、残りは……」
 
ジャミルは心配になってダウドの方を見るが……。
 
「あちょちょちょーーっ!この野郎ーーっ!!オイラだってやる時はやるんだああーーっ!!」
 
ダウド、ひのきの棒を振り回し、お化けアリクイ相手に奮戦。
お化けアリクイ数匹はその場に倒れて全て伸びていた……。
 
「……すんげええ~……」
 
「どうだっ!ふんっ!!」
 
敵を全滅させ、鼻息を荒くして威張るダウド。
 
「あいつ、いつも怒らせときゃいいのかなあ~……」
 
「いや、それは危険だ、止めよう……、何かの闇組織にスカウトされちゃうよ……」
 
アルベルトがジャミルの肩にそっと手を置いた……。
 
「あ!んな事してる場合じゃねえ!急ごう!アイシャを助けねえと!!」
 
思い出した様にジャミルが叫ぶ。アルベルトとダウドも頷くのであった。
 
 
……
 
 
「……」
 
そして、眠っているアイシャを抱えたままのもう1匹の魔法使い。ある場所で足を止めた。
 
「……」
 
この洞窟には彼方此方、亀裂の穴が空いている場所が数か所ある。
……魔法使いはその穴の一つが有る場所で足を止め……、亀裂をじっと眺めている。
アイシャを亀裂の穴の底に叩き落とす気である。
 
「やめろーーっ!!」
 
「……」
 
漸く魔法使いに追いついたジャミル達。魔法使いは3人に気づくと無言で後ろを振り返る。
 
「ハアハア……、アイシャを放せっ!この野郎!!」
 
「……オイラもうエネルギー切れれ~す……」
 
「ダウド、ほら頑張れっ!」
 
アルベルトが励ますが、先程の奮戦で力尽きてしまった様子。
 
「てめえっ、おい、其処のフード野郎っ!聞いてんのかっ!?」
 
しかし、魔法使いはアイシャを亀裂に落とす仕草をし、ジャミル達に脅しを掛ける……。
 
「くそっ!……この野郎っ!!」
 
「ジャミル、恐らく奴は、僕らが抵抗すればアイシャをこの穴に落とすって
ハッパを掛けているんだよ!」
 
「……」
 
そうだ……、とでも言う様に魔法使いが再びフードの中から不気味な笑みを見せた……。
 
「……卑怯者めっ!!」
 
しかし……。
 
「うう~ん、あれ?私、何してるの……?あれ?……きゃあああーーっ!!」
 
「……アイシャーーっ!!」
 
タイミング悪く、アイシャに掛けられていたラリホーが解け、
眠っていたアイシャがその場で目を覚ましてしまう。
アイシャはどうして自分が魔法使いに抱かれているのか、
訳が分からずパニック状態に……。
 
「やだやだやだあーっ!キャー!おろしてっ、いやーーっ!!」
 
「落ち着け、アイシャっ!直ぐに助けるっ!!」
 
ジャミルがそう声を掛けるが、錯乱したアイシャは暴れ出し魔法使いの腕に思い切り噛み付く。
 
「……!!……~!!」
 
「きゃ、……きゃあああーーっ!!」
 
「……やめろおおーーっ!!」
 
腕を噛み付かれ、怒り狂った魔法使いは……、遂にアイシャを腕から放し、身体を上に持ち上げ
そのまま亀裂の穴の中に……、暗い奈落の穴へと叩き落とすのであった……。

「畜生っ!アイシャ待ってろっ!今行くっ!」
 
「……」
 
ジャミルは急いで自分もアイシャを助けに亀裂に飛び込もうとするのだが、
……目の前の魔法使いが立ちはだかり往く手を阻んでいる……。
 
「だ、ダメだよお!ジャミルまで飛び込んだらっ!……怪我しちゃうじゃないかあっ!」
 
ダウドは無茶をしようとするジャミルを必死に止めようとするが……。
 
「無茶でも何でもだっ!オメーはアイシャをこのままにしておけってのかっ!?
バカダウドっ!!」
 
「だ、だってええ~、……ううう~……」
 
ダウドは答えようがなかった。亀裂に落とされたアイシャの事も勿論
心配で無い筈がない。しかし、今ジャミルまでが亀裂に飛び込んでしまったらと
考えると不安で仕方がないのであった。
 
「じゃあ、僕らも一緒に行こう!ダウド、それでいいかい?」
 
「アル……」
 
「え、えええーっ!?……オイラ達もっ!?わ、分ったよおお~……」
 
今は目の前の魔法使いよりも、アイシャの無事が最優先である。
男3人は顔を見つめ合うと、覚悟した様にこくんと頷く。
 
「よし、一斉に行くからな……、タイミング合わせろよ、……1、2、……」
 
「……」
 
「……だあああーーーっ!!」
 
ジャミル達は魔法使いに向けて一斉に3人で魔法使いに向けて飛び蹴りを噛まし、
遠くにおっ飛ばす。油断した魔法使いは呪文の詠唱の暇もなく、亀裂を飛び越え
亀裂の向こう側にふっ飛んで行ってしまった……。
 
「……今だっ!飛び込めーっ!」
 
ジャミルの合図で、アルベルト、ダウド、そして最後にジャミル自身も
真っ暗な亀裂の穴の中にダイブするのであった……。
 
 
……
 
「ジャミル、……ジャミル、ねえ、大丈夫……?しっかりして……」
 
「う……、この声……」
 
自分を呼ぶ聞いた事のある声に耳を傾け、うっすらと目を開ける。目の前にいたのは……。
 
「……アイシャ……か?」
 
「あはっ!良かったーっ!無事でっ、助けに来てくれたのね、ありがとうーっ!」
 
「……ちょ、お前怪我としかしてねえのか?」
 
「うん、大丈夫よ!」
 
「そうか……」
 
アイシャにそう言われ、ジャミルは自分の手や足を動かしてみたり
自分にも怪我がないか確認してみる。確かにジャミル自身も大丈夫の様である。
アイシャはアルベルトとダウドの方にも怪我をしていないか状態を確認しに行った。
 
「アルもダウドも、助けに来てくれて有難う!」
 
「アイシャも……、無事で良かった……」
 
「はあ、心配させないでよお~、もう~……、無事で良かったけどさあ~……、ぐしゅ……」
 
……どうやら全員無事の様である。アイシャ達はジャミルの元に
駆け寄ってきて、無事に皆再会を果たした。
 
「それにしても、深そうに見えても案外落ちた穴が浅かったみたいだな……、
とにかく助かったぜ……、ふう……」
 
ジャミル達はぼけーっと、4人で頭上を見上げてみる……。
 
「後はこの階から脱出するだけだね……」
 
「で、でも……、もしも、上に上がる手段がなかったら……、
オイラ達、この場所に閉じ込められて……」
 
「もうっ!すぐ悪い方向に考えちゃ駄目っ、ダウドっ!」
 
「だ、だってええ~……」
 
アイシャに怒られるダウド。リレミトの魔法さえ使えれば
別に脅える事も何もないのだが、しかし、リレミトを覚えられる
ジャミルもアイシャもアルベルトもまだそのLVの領域までは達していない。
特にジャミルは覚えられるLVがかなり遅く、一番最後である。
 
「とにかく、上の階への階段を探そう、何処かに有る筈だよ……」
 
「だな、ヘタレてばかりいても此処からは出らんねーからな、ダウド……」
 
「わ、分ったよおお~……」
 
4人はのそのそ再び動き出す。階段を探し……。
 
……ドスッ!!
 
「!?」
 
突如、何かがドスンと落下した様な物音がし、4人は恐る恐る後ろを振り返る……。
すると……、あのしつこい魔法使いが立っていた……。
4人を追い、魔法使いも自ら亀裂に落ち、追い掛けて来たのである……。
 
「……」
 
「……ひええええ~っ!!」
 
「ダ、ダウド……」
 
ダウドは慌ててアルベルトの後ろに身を隠す……。
 
「くそっ、しつけーなっ!あーもうっ!」
 
「もうっ!さっきはよくもやってくれたわねっ!……アル、まだMPは残ってる……?」
 
「うん、何とか大丈夫だよ……」
 
アルベルトの表情を覗い、アイシャがにこっと笑った。
 
「私もやっとヒャドが使える様になったから……、連携プレイよっ!
二人で魔法使いをやっつけちゃいましょっ!!」
 
「アイシャ……、ああ!」
 
アルベルトも強く頷き、目の前に立ちはだかる魔法使いを睨む……。
 
「おい、お前らだけで大丈夫か!?」
 
「大丈夫よ、今回は私達二人で頑張るから!ジャミル達は休んでて!」
 
「分った……、気を付けろよ……」
 
ジャミルはアイシャとアルベルトを信頼し、二人に全てを任せる事にした……。
 
「はあ、オイラお休みー、……良かったあー!」
 
「……良くねーってんだよっ!」
 
「あいたああーーっ!!」
 
ダウド、ジャミルに一発ポカリ、……ゲンコツを食らう……。
 
「行くわよっ、アルっ!一気に決めましょ!」
 
「了解っ!!」
 
負けずに魔法使いの詠唱の素早いメラ、アイシャとアルベルトに襲い掛かった。
アイシャとアルベルトは呼吸を合わせ、二人同時にヒャドを魔法使いへとぶつける。
二人が同時に放ったヒャドは魔法使いのメラを忽ち凍り付かせる……。
そして、魔法使い自身も凍り付き粉々に砕け散るのであった……。
……魔法使いの氷漬けはこれで3体目である……。
 
「やったなっ!アル、アイシャっ!」
 
「凄いよおおーっ!」
 
ジャミルとダウドも急いで二人の側へ駆け寄る。……流石に疲れ気味の
アイシャとアルベルトであった物の、無事勝利を確信出来た事に安堵の表情を見せた。
 
「平気か?二人とも……、此処でもうちょい休んで行くか?」
 
「ううん、早く出たいしね、……はあ、此処はもう嫌だわ……、ね?アル!」
 
「ふふ、そうだねえ~……」
 
苦笑いするアイシャの顔を見て、アルベルトがくすっと笑った。
 
……そして、漸く上の階へと戻る階段を見つけ、どうにか戻れた4人……。
険しく厳しい洞窟探検の果てに、等々正しいゴールルートへと続く通路を見つけ、
新大陸へと続くであろう、旅の扉を発見する。
 
「これが……、新しい大陸のロマリアへと続いてんのか……?」
 
「うん、間違いないよ、旅の扉だよ……」
 
「わあ~、綺麗ねえ、キラキラ光ってるわ……」
 
「う、……何かイヤだなあ~……」
 
やはり、こういう時、真っ先に脅えるダウドさんなのでありました……。
 
「……じゃあお前……、このまま此処に残って一人で帰るか?」
 
「うわ!それも嫌だよおお~!オイラも皆についていきますーっ!!」
 
「たく……、じゃあ行くぞ、覚悟はいいか?」
 
ジャミルの言葉に他のメンバーが頷く。そして4人は淡く、青い輝きを放つ
旅の扉の中へと……、身を投じたのであった……。

※次回、2章のロマリア編に続きます。

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  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-20

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. その1
  2. その2
  3. その3
  4. その4
  5. その5