デート、のその前に。

家に居場所がなく、いつもぼっちの沙奈。唯一心を開けるのは物理教師の真栄田先生。先生、1日だけ彼女にして下さい。

一人ぼっちのjkと変わり者の物理教師。2人の初デートまでの5日間。

先生の好きな所。
1.人を傷つけない笑顔
2.その笑顔にかくされた八重歯。
3.笑った後、照れくさく髪の毛をかく癖。
もっともっとある。言葉にしたらやるせなくなるぐらい。
今だってほら、
「まーえーだーせんせー。」
「ふぁっ?!」
「いいの?こんな所で仕事さぼって。」
「なんだ佐伯か。」
「なんだってなによ〜。ほら、昨日話した
卵焼きのレシピ!」
「あ〜!マジ?サンキュー佐伯サマ。」
「ねぇ、先生、ほんとに卵焼き作れる男って
モテる男なの?」
「当たり前だろ!」
先生は最近、モテたくて仕方ないらしい。
「ねぇ、先生、作ったら私に食べさせてよ。」
「あ?あー考えとく。」
これはないな。
「佐伯、お前文化祭の準備いいのか?」
出た。和やかに追い払うやり方。
「いいの〜。ぼっちがよけい際立つから。」
「ねぇ、先生、」
「ん?」
「私の事、文化祭の1日だけ彼女にして下さい。」
「だめ。絶対。ってか何度目だよその案件。」
「なんで?なんで?文化祭なら人混み目隠しに
できるし、1日一緒にいられたらその後
またこんなふうに会ってくれなんて言わないし!」
「あのなー」
「お願いします!」
「わかった。…いいよ。」
「え!ほんとに?やった~!」
その日の夜は嬉しすぎてなかなか眠れなかった。
文化祭まであと5日。
私はカレンダーにさっそく印をつけた。

あいつは本気なんだろうか。1日彼女って。
まだチビッコのjkのくせに。っつーか、
頭の中ではあいつのとびきりの笑顔が張り付いて
離れない。とか思いつつ、一応デートプランを
考える自分に腹がたつ。ふとカレンダーを見た。
文化祭まであと5日。

9月11日晴れっていうかめちゃ快晴。
今日は学校サボってデート服の調達。ホントは
ネットで買いたかったけど、サイズ間違いとかしそうで
怖いから。それぐらい私、浮かれてる。
文化祭まであと4日。

今朝、佐伯が休みというかズル休みしたと勘で分かった。
とはいえ、俺も休み時間にスマホに「デート初めて」
とか「デート文化祭」とかを検索している。
当たり前だけど思うようにヒットしない。あぁ、
穴があったら入りたい。っつーか俺は教師だぞ!
なんでこんな事してんだか。あぁ、文化祭まで
あと4日。

1日彼女の言葉に浮かれっぱなしの私。
今日も先生のいる物理の実験室に直行だ。
あ、いたいた。
「せんせー」
「あ、佐伯、」
「どしたの?今、なんか隠したでしょ。」
「い、い〜や〜なんのことだか?」
「?変なの。」
先生、やっぱり変だ。
っていうか私も変になってしまった。
会話が見つからない。
なんでだろ。先生との時間は大好物のはずなのに。
結局、もじもじしていると
下校の時間になった。
なんで?なんで?大好きな人とすごしているのに
心がきゅっと詰まりそうになるのはなんでだろう?
文化祭まであと3日。

あ〜焦った。あいつにデートとやらの約束をして
しまってから(正確には1日彼女)
なんだか悪い事を企んでいる極悪人のような気分だ。
さっき隠したのはメンズ雑誌の特集だ。
男のデート服!モテる男はこれを着る!
とあおり文がある。買ってほしい意欲がダダ漏れの
感じ。しかし、今の俺にはこれくらいダイレクトに
銘打ってくれている物にすがるよりほか無い。
あぁ、服なんて冬はフリース、夏はTシャツぐらいに
しか考えたことがない!なにを着ていけばいいんだ!
あぁ文化祭まであと3日。

やったぞ、やったぞ!ついに答えにたどり着けた!
要するにデート服はラフ過ぎず、硬すぎず、って感じか!
だったらいつものリクルート服が適任だ。
白衣を着ていなくても、いつもの服で充分、
賄えている。薄手のニットにパンツスタイル。あぁ
兄貴が無駄にモテ男で良かった〜。
文化祭まであと2日。

やっちゃった〜。デート前でうかれてて、
前髪きりすぎた〜。服もバックもバッチリなのに、
あぁ、文化祭まであと2日だ〜。

なんだか拍子抜けした。佐伯がまた休んでる。
こっちは準備バッチリだってのに。
あ、でも、文化祭が終わったらまた元に戻って
実験室で話すのもなくなるんだよな。
なんだろ、変に無気力になった。
変だな。なんかもやもやする。
文化祭まであと1日。

さいあく。前髪切りすぎて可愛くない。
せっかく先生の彼女になれるのに。
学校、行きたくない。先生、どうしよう。
文化祭まであと1日。
その時、インターホンが鳴った。
渋々玄関のスコープを見てびっくりした。
先生だ。先生がいる。
すぐに鍵を開けるとげんこつが降ってきた。
「イッタい!」
あわてて顔を上げると強引に抱きしめられた。
「なんなんだよ!お前は!」
「え?」
「いつも、笑ってたくせに急に彼女にして
下さい。とか、こっちだって引っ込みつかなく
なるだろうが!」
「え?って先生、それって、」
「こっから先は、実力で勝負だ。」
「じ、じつりょく?」

「デートの魔法じゃなくて、実力で俺の事
落としてみろ。」
私は笑顔でこう答えた。
「もう、落ちてるじゃん。」

デート、のその前に。

デートを通してドキドキしたり、失敗したり、
デートの喜怒哀楽を書いてみました。

デート、のその前に。

いつもぼっちの沙奈。でも、大好きな真栄田先生が いるから今日も笑っていられる。ある日、沙奈はある お願いをする。「先生、文化祭の1日だけ彼女に して下さい。」

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更新日
登録日
2024-01-14

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