夏祭

夏祭の案内に
会場は町の公民館とあった
目をはなすと
案内の紙は雨に溶けた
燃えるように溶けて
手のひらに貝殻が残った

町は咳をしていた
美容室はつごうにより休業して
病院は予約しないと入れない
夕焼のすきまをぬって
夏祭の会場へ
こどもの手をひいて行った
そこには なにもなかった
公民館は赤茶けた更地だった
紫の風ばかりにぎやかだった

いや なにもなかった
わけじゃない
あった いや できていた
川ができていた
川は流れていた
塀から塀へ
小骨の音をたてながら

「なつまつりは?」
こどもは訊いた
こどもの顔は魚だった

夕空の絞りかすは流れる
星屑は川底に濡れる
黒ずんだマスクは岸辺にひっかかる
こどもは川へ飛び込み消える
えら呼吸はまだ教えていなかった

ひとりぼっちの手のひらに
貝殻ばかり赤かった

夏祭

夏祭

第五回浜松私の詩コンクール一般の部中日新聞社賞

  • 自由詩
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-10

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