「窓の内側」

 秒針の音はせず
 月に成りそこなった豆電球が
 ほのかに
 微弱に
 黒目を焦がす
 炎に化せぬまま
 目を責める
 時計の無い部屋に
 水流紋様の絵を描く
 勝手に溺れては
 泡を刻んで
 彫刻刀は指から滑り落ちた
 頭と身体は逆しまになって
 何にも指示は出せず
 勝手に一人で笑ってる
 愉快ではないけれど
 孤独があんまり懐かしくって
 赤い風呂敷でくるんだ本解いて
 飛魚のように入水した
 銀の鱗が
 月のまばたきを欲しがって
 目の滲みをもそのままに
 冷たい海の中
 一人
 笑って
 混じり気無く

「窓の内側」

「窓の内側」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-08

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