「窓の内側」
秒針の音はせず
月に成りそこなった豆電球が
ほのかに
微弱に
黒目を焦がす
炎に化せぬまま
目を責める
時計の無い部屋に
水流紋様の絵を描く
勝手に溺れては
泡を刻んで
彫刻刀は指から滑り落ちた
頭と身体は逆しまになって
何にも指示は出せず
勝手に一人で笑ってる
愉快ではないけれど
孤独があんまり懐かしくって
赤い風呂敷でくるんだ本解いて
飛魚のように入水した
銀の鱗が
月のまばたきを欲しがって
目の滲みをもそのままに
冷たい海の中
一人
笑って
混じり気無く
「窓の内側」