そうやってみんな

公園のすみで
鳩を一羽肩にのせている老人
その人はG氏とよばれている
口髭のG氏は
「ブランコをこぎなさい
 そうすれば祝福されますから」
とぼくらに言う
祝福が何かを知らなかったのに
ぼくらはブランコをこいだ
みんなはすぐにやめた
ぼくはこぎ続けた
ひとりこぎ続けた
声が変わり
すね毛がはえて
口髭がはえても
ブランコをこぎ続けた
犬が吠えても
けーさつに事情聴取されても
こぎ続けた
地元のテレビ局が取材にきた
「なぜブランコをこぐのですか」
「G氏がそうするよう言っていたので」
アナウンサーは首をかしげた
ぼくはテレビに放送されなかった
町の名物にも
珍風景にもならなかった
顔はシワだらけに
頭は白髪だらけになった
腰も膝も痛むようになった
肩にはいつのまにか
一羽の鳩がとまっている
ぼくは
ブランコをこぎ続けた
いまなら祝福が何か
わかりそうな気がした
けっきょく
ブランコから落ちて
頭を打って
ぼくは死んだ
 らしい
一緒にブランコをこぎはじめ
すぐにやめた老人が
ぼくへの弔辞を読みあげる
「G氏はブランコをこぎ続けました」

そうやってみんな

そうやってみんな

第65集浜松市民文芸賞

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted