「木のある庭」

 雀鳴きの声
 ちゅっちゅっちゅっ
 烏は遠くへ行けばいい
 雀踊りの羽の音
 ぱたぱたはたはた
 空回りだってかあいらしい
 雀の頭だきしめて
 花は枯れても花は死なぬ
 自ら降らせた夕立に
 窶れしおれた守り花
 此処は雀のしるお庭
 緋鯉も金魚となりにけむ
 魚のうろこはすももの果実
 吐く泡は情けの滴一心留めた薄紅雪
 散る水の再び空に溶けむ
 ガラスの綿雪町染めて
 音も無しあの薄汚れた町ども
 白菊の緑の茎黒い根は
 幹より生えたる白桃の花に包まれり
 幹はたちまち白に満たされ
 誰も知らないふるさとの
 幾百年の記憶具現す

「木のある庭」

「木のある庭」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-04

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