鈍色スカイ

近頃の空は青色より鈍色だ。
空色なんて言うけれど、空はどんよりと曇っていて
爽やかな色はなく薄く濁った曇り空だけが見える。

「今日も晴れなかったね」

空を見上げて帰る色は今日も今日とて曇空、僕らの歩く空はいつもいつも青が見えない。
溜息をつくとそれが上に昇っていってそれがあの曇り空に変わるのかなって、
そんなことを考えたらこの近くにはどれだけの溜息で溢れているのかなって。
ネガティヴ思考な僕の隣で、君は特に気にすることもなく笑みを浮かべた。

「でも、隙間から光が見えるよ」
「見えるけど、それも少しじゃないか」
「いいじゃない、あの曇の向こうに綺麗な空があるって思えば素敵だよ」

朝も、昼も、夕方も、夜も
あの雲の向こうで空もずっと表情を変えて遊んでいる。
きっとそれが見える時はとても綺麗なんだろうなと、隙間から見せる光を見ながら考える。

「そうだね、それは素敵かもしれない」
「だろう?」
「だからこそ恋焦がれるんだろうな、空に」

そしてまた、溜息を一つついて空を見上げながら帰路を行く。
明日は晴れて、その雲という名の化粧を外して見せてくれたらいいな――

鈍色スカイ

鈍色スカイ

中々晴れてくれない空のお話

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-14

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