夜の帳が降りたら

 大人の夜はどうしてこんな寂しいの。子どものころのほうが強かった。夜遅くまで起きていることの恐怖はあったが、一人で寝ることには慣れ始めていた。
しかし、20歳も過ぎて数年。私は異常になっていた。
夜、一人で寝ることが寂しくてたまらない。怖い。誰か傍にいてほしいけど、下心を含んでしまうように聞こえるから、黙っている。
そういう肉体的接触はいらない。ただ純粋に、私は誰かのぬくもりが欲しい。もっといえば、安心できる相手に、寄り添っていて欲しい。
子どものころはきっとそう素直に吐けた。でも、大人になってしまった今、素直になることすらできない。抱いてほしいわけじゃない。何も考えず、温かくなりたいだけなの。
この微妙なニュアンスを伝えきる前に体はべたべたとさわられてしまう。それは違うの。
子どもみたいに、心と心で向かい合いたい。その先は望んでいない。昔からみんなそうだったはずなのに、何で大きくなるにつれ、その先、その先と見たくなってしまうの。
ここまで、でいいはずでしょう?
知らないからよかった。知らなくてよかった。
大人から子どもへ、子どもから子どもへ。余計で神秘的で生々しいそんな情報なんて誰が伝えてって頼んだの。好きな人と本当にそんなことがしたかったの?
自分以外の他人に温度があるのは、それにふれたいからじゃない。その温度を知っていたい。ただそれだけ、それに余計な熱はいらないのに。

夜の帳が降りたら

夜の帳が降りたら

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-01

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