「供養」

 白い火取虫
 玄関にて
 息弱りぬ
 ほぼ絶えなむとする
 小さな蛾
 はたけば震え
 こきざみに震え
 おぞましきいまわのきわの肉体
 抱きしめたくなる臨終の魂
 肉体に恐れ
 高い柵から工事現場に放り投げた
 惨めなこども
 怯えて逃げた
 赤い、祠
 黒猫の真正面から向いたる
 黒猫のまなこは黄色なり 青色なり
 髭はガラスなり
 抱えようとしても
 水の流れを握るよう
 むなしくて
 足ひきずる羞恥

 白い火取虫
 次は水となっておいで
 滝が生みし深い淵
 エメラルドの森に浮ぶ白椿の頭は
 千手観音の大慈の涙で開いた
 傷ついた鶴一羽が飲む
 森の奥の水鏡
 その一滴に
 あの子がなれますように
 白い火取虫
 やすらかに眠りたまえ

「供養」

「供養」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-30

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