「かげらふ」

 春の真昼なか
 日傘こうもり掲げる人に
 驟雨 ふるふる

 空晴れて
 頬を撫づる人肌のぬくみ
 或いは獣の 草木の

 この雨は嘆きならず
 人か
 獣か
 草木か
 たれかを想ふ 朝露の泪
 飲みて土は吐息つく
 土の息吹は空の旅路
 鯤の泳ぐ空の旅路

 驟雨の冬を想ふこと
 また 春を想ふこと
 冷たくも
 肌にとろけて沁みとおる
 陽炎のぼりて
 手を 振る
 雪ふりし松の影
 雪ふりし桜の影
 今も

「かげらふ」

「かげらふ」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-22

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