「白いクレマチス」

 小さきおみな
 若草もゆる原っぱに
 三角ずわりして
 前見つめたり

 若きおみな
 青草茂れる野原に
 正座して
 前見つめたり

 若きおみなの赤い瞳に
 白い手宿りぬ
 白い手はクレマチスなり
 クレマチスは確かに眼に咲けり
 白くやわらかに咲けれども
虹は雨上りに
しかも晴れやかなるもとへしか行けず
クレマチスは
白きクレマチスは
 うろの入り口に咲けるのみ
 風渦巻き
 獣の唸り
 氷の嘆き
 色づいた花の引き裂かれた躯
 クレマチスの薫り
 クレマチスの濃ゆい薫り

「白いクレマチス」

「白いクレマチス」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-22

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