「白いクレマチス」
小さきおみな
若草もゆる原っぱに
三角ずわりして
前見つめたり
若きおみな
青草茂れる野原に
正座して
前見つめたり
若きおみなの赤い瞳に
白い手宿りぬ
白い手はクレマチスなり
クレマチスは確かに眼に咲けり
白くやわらかに咲けれども
虹は雨上りに
しかも晴れやかなるもとへしか行けず
クレマチスは
白きクレマチスは
うろの入り口に咲けるのみ
風渦巻き
獣の唸り
氷の嘆き
色づいた花の引き裂かれた躯
クレマチスの薫り
クレマチスの濃ゆい薫り
「白いクレマチス」