反転


悩み方、
なんてものを考えて
重くなった頭が
ものごとを
逆さまに見せた。
地面と歩く
二本の足は
内側にあって
地球儀みたいに
世界を回した。
人の顔なんて
あっという間に
忘れられて
自他の区別を
見失って、
ピエロが落とした
真っ赤な鼻も
笑い転げる、
そんな感じで
後ろに流れて
見えなくなって、
派手な靴の
足音が
ドタバタ始めて、
慌てた感じで
消えていった。
それを
待って、
待ってと
真っ青になって
焦っても、
全てがきちんと
晴れ渡る日に向かって
沈んでいく。
だって
頭の上に
あんなにも
広がっていた空は、
こんがらがって
逆さまになって
遠くなった。
もっと
もっとと
謎を深めて、
知りたいことを
もっと
もっとと
知りたがって、
私のことも
すっかり忘れた。



魂みたいに木霊する



こんな言葉だって。
よく動く
真っ赤な舌は
何もかもを
覚えているのに。
心のあり方、
なんていう響きに
柔く、優しく
釣られてしまって
頬の動きは
ぎこちなくなって。
思うこと、
そればっかりが
とめどなく
増えていく。



整理の付かない
気持ちほど、
重いものはないんだよねって



幽霊みたいに
ふわふわと
浮かんだ心地で
綴り、明かして
定着させる。
それがとても
難しいんだと、
思い知れば
知るほどに、
心の方から
浮かんでいく。
自重に即して、
ありと
あらゆる
引き出しが
勝手に開いていく。
中にあった、
はずのものが
バラバラ、バラと
零れ落ちて
私という宇宙が
もの、
みたいに広がる。
明るい天気に
ひゅっと、
吸い込まれていって



最後になるのは
この身体。
このままいけば
このままであれば。



覚える不安?
不思議とない。
諦めたのか?
全然違う。



ここにある、
気持ちだけが
楽しい。



って断片的に、思えるだけで



ひっくり返った
そのまんまの格好で、
いつものように
自動的で
受動的な
感情の匂い。
それを
キャッチする
目と鼻の先で雨宿り。
想像してごらん、
なんて
誰にも言われないから。
両の手で
耳を塞いで、
私のことだけって思えたらいい。
そう優しく聴こえた
向こうの話し声。
画面を離して
そこを見つめて
ツーツーツー、
と綺麗に終わった時間。
何ひとつ、
書かれなかったから
保てた白紙。



震える指先と
寝転んで
だらしなかったボールペン



ソファーの上で
畳み終わった。
それからずっと
動けなかった。
現実の時間が刻み、
進める
真っ暗だった
部屋という空間。
押して閉めるより
引いて開ける方が
難しかった。
そうであったらなら、
本当に良かったのに。



何かのソースは付着して
慌ててきっと、
そのままになった



そんなムードの違いも
ボタンを一つ、
押すだけで
随分と明るくなったとさ。
そんな昔の
観たかったものを
思い出し、
見えなかった
そんな沢山のものを、
やっとの思いで
見つけ出した。
だから



トトト、とか
タタタ、とか
意味のない
音ばっかりが集まって。
だからまた
超えてまた、
好きなようにたどり着ける。
心に任せて思うままに
頭を抱えて



命の無駄がないように



針を落とす。
回り出す、
知らない声
分からない題名。
借りている
言葉からして
そんなものばっかりで、
甘ったるくて
やってられないって
動いてくれない。
苦味に馴れた
長いだけの
真っ赤な舌だから、
逆さまにして
消しゴムと一緒に
積りに積もった
影を落とす。
紙のように
真っ白な時間が
目の前に
現れ出すのは
分かっているし、
決まっているから
それを見上げて、
心を隠して
真っさらに向き合う。
描きたい恋情に
最も遠い、
そんな所を目指して
また一歩、
また一歩と近づいて行く。
夢中になる。
知らない曲は
もう居なくなった。
確かめたいこと、
そればっかりなんだ。
意味を求める
頭を振って、
話し言葉で、
進んでいって。
偶に出会う、
そんな響きから
走り出す
目が回るぐらいの勢い。


一羽の影が横切って、
それに遅れて願い出した。
私の世界はこうして生まれる。
彼方の声に焦がれ続ける。

反転

反転

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-18

Copyrighted
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