運命の輪

暗い海の中で、僕は生まれた。光もなく、温度もなく、感覚もなかった。
僕が生まれたのは海の底ではないけれど、海の上でもない。
ただ生まれたという意識を抱えながら底へと沈んでいくだけだった。
底についたら再び死ぬのだろうということだけはわかっていた。
死とは一に戻ること。僕の死をもって再び誰かが生まれる。
命と命は繋がっている。僕は死んだ誰かの手を掴んで生まれ、僕が伸ばした手を誰かが掴む。
運命の輪は廻る。
いつか、君に辿り着くまで。
さあ、水底だ。数秒生きた世界にさよならを。

運命の輪

運命の輪

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-17

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