「踊る裸木」

 枝も葉も抜き取られ
 太い一本の鹿の角
 そこより分つはまた太い枝
 こまやかなる枝葉は抜き取られ
 片脚上げて
 踊る裸木よ
 雲無き青い空によく浮んで
 モニュメントとなりし裸木
 踊る
 ポージングは変らずに
 踊る
 両腕はかかげて

 足下にあるは申し訳なくせめともの
 かぶせられたビニールは透明
 そしてあまりに小さく
 足はビニールを突き破った
 烏の羽音がさやさやと
 人声も絶えて
 烏も甲斐なく吃る
 木は一つも変らずに
 踊る
 踊る
 姿形変らずに
 もう 何度春は過ぎた
 夜露滴る青葉も無く

「踊る裸木」

「踊る裸木」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-15

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