「踊る裸木」
枝も葉も抜き取られ
太い一本の鹿の角
そこより分つはまた太い枝
こまやかなる枝葉は抜き取られ
片脚上げて
踊る裸木よ
雲無き青い空によく浮んで
モニュメントとなりし裸木
踊る
ポージングは変らずに
踊る
両腕はかかげて
足下にあるは申し訳なくせめともの
かぶせられたビニールは透明
そしてあまりに小さく
足はビニールを突き破った
烏の羽音がさやさやと
人声も絶えて
烏も甲斐なく吃る
木は一つも変らずに
踊る
踊る
姿形変らずに
もう 何度春は過ぎた
夜露滴る青葉も無く
「踊る裸木」