「大聖堂」

 探偵は旅人の如くさ迷えり
 あてもなく
 何も分らず
 パイプオルガンの
 怒りが嘆きに巡るる音

 探偵はさ迷えり
 ひた 肉体を疲弊さす
 寒さ溶けざる春の雲
 夕暮はしのびて
 探偵の肩にうなだれかかる

 ケットを両腕に捧げし修道女が
 御堂の隅でうずくまりし
 泣けり
 泣けり
 修道女はひた泣けり
 探偵はさ迷えり

 二つの哀しみのあいまじらむを
 哀しき聖堂はひた祈れり

「大聖堂」

「大聖堂」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-13

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