「聖域」
青き湖―
白き陽光は霧で覆われ
光あれども仄暗き湖のほとり
底の見えざる水面には霧走り
幻の白馬
湖のほとりをしとしとと歩めり
その背には優しき繊毛そろい
あたたかな
やわらかな初雪の背
重みで窪んだ跡もあらず
青い湖に霧はかかり
絶えることせじ水煙
風はしめやかなる息吹
新たな陽炎導きて
霧の晴れる眺望はあらじ
青い湖
沈んだ神殿水に抱かれ
ゆりかごで幼い夢を見る
いつか死んだ魂が眠りに来る場所
水底の骨 純白の骨
白百合のつよきくゆり
積もれる底の砂は泡の死骸
むくろは触わるもやわらかに
恰も 初雪の大地
青い湖
其場所に
青藍なる水は満ちてあり
「聖域」