「聖域」

 青き湖―
 白き陽光は霧で覆われ
 光あれども仄暗き湖のほとり

 底の見えざる水面には霧走り
 幻の白馬
 湖のほとりをしとしとと歩めり

 その背には優しき繊毛そろい
 あたたかな
 やわらかな初雪の背
 重みで窪んだ跡もあらず

 青い湖に霧はかかり
 絶えることせじ水煙
 風はしめやかなる息吹
 新たな陽炎導きて
 霧の晴れる眺望はあらじ

 青い湖
 沈んだ神殿水に抱かれ
 ゆりかごで幼い夢を見る

 いつか死んだ魂が眠りに来る場所
 水底の骨 純白の骨
 白百合のつよきくゆり
 積もれる底の砂は泡の死骸
 むくろは触わるもやわらかに
 恰も 初雪の大地

 青い湖
 其場所に
 青藍なる水は満ちてあり

「聖域」

「聖域」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted