「人魚」

 どれだけ涙ながせども
 どれだけ声を枯らせども
 所詮は人魚
 あやつを殺すか我身を殺すか
 嘆きは実を結ばず
 徒花風花
 痕も欠片も残さざりき

 愛するものを失った者は旅人となる
 もう二度と叶わぬと知りながら
 心の傷を免罪符に
 哀しき春の小道を進み
 あたたかき冬の雪を抱きしめる
 破れた風船が
 せめて宇宙の大海を漂う塵にでもなれば

「人魚」

「人魚」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted