「雨の大樹」
にわか雨に
空はしとしとと涙たれて
雨宿りする
古木の大樹の小さな祠
大樹に枝は無き
幹のみ黒く濡れて
無骨に
荒々しく
そして優にかまえたり
太きしめ縄に結ばれたる
遠き誰れかの切なる願い
今もその身に抱きしか
誰に崇められる事も望まず
ひとり その根を土にはって
祠のらふそく両手でかこえば
樹の一途なる心肌に染みる
木皮は削れし
木皮は彫られし
土のにおい濃ゆくけぶりして
雨にぞ心を託せし古き大木
そなたの姿に
哀れみは要さず
ひとり思いを遂げむとせし
その愚直さを誰に妨げられてなるものぞ
「雨の大樹」