「雨の大樹」

 にわか雨に
 空はしとしとと涙たれて
 雨宿りする
 古木の大樹の小さな祠
 大樹に枝は無き
 幹のみ黒く濡れて
 無骨に
 荒々しく
 そして優にかまえたり
 太きしめ縄に結ばれたる
 遠き誰れかの切なる願い
 今もその身に抱きしか
 誰に崇められる事も望まず
 ひとり その根を土にはって
 祠のらふそく両手でかこえば
 樹の一途なる心肌に染みる
 木皮は削れし
 木皮は彫られし
 土のにおい濃ゆくけぶりして
 雨にぞ心を託せし古き大木
 そなたの姿に
 哀れみは要さず
 ひとり思いを遂げむとせし
 その愚直さを誰に妨げられてなるものぞ

「雨の大樹」

「雨の大樹」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-12

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