「病棟」

 灰色の空
 寒い空は張りつめて
 天の水面にはぶ厚い氷が張ったらしい
 息吐けども
 空の色と同化して
 呼吸は見えず
 浮ついた感覚が
 虚ろを通り抜けていく

 寒かろう
 寒かろう
 指先青くした子どもの手が見える
 外はきっと寒かろう
 黙れど 家中は温し
 窓も遠いベッドから
 銀のフォウクも握れぬ手に
 軽き、いと軽き万年筆持ちて
 千代紙も折れぬ指先に
 湿した爪が白くなっても
 何処かの故郷の 寒空を想ふ

「病棟」

「病棟」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-12

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