「少女と少年」

 人間に救いなど求めまい
 ひとり旗を手のひらに抱き少女は駈ける
 その素肌に傷は無く
 かすり傷さえも無く
 風とてその赤い肌に微々たる足跡も付け得ない
 碧いワンピイス着て
 黒いレエスを両脚に巻きて
 旗は使い込んだ水彩パレットの色

 少女を見つめる少年は
 真向うから見つめる少年は
 爆撃で砕けた水晶を持っていた
 水晶は不思議にやわらかく
 ふにゃふにゃして獣のおなか
 冷たいけれど
 抱きしめていればぬくかった
 少年の手の平には赤滴り
 赤零れ
 赤はみるみる流れてく
 少年は両手の耐え難き陣痛に
 ただ 水晶を抱きしめた

 少女は誓い
 少年はひたすら慟哭を

「少女と少年」

「少女と少年」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-11

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