「少女と少年」
人間に救いなど求めまい
ひとり旗を手のひらに抱き少女は駈ける
その素肌に傷は無く
かすり傷さえも無く
風とてその赤い肌に微々たる足跡も付け得ない
碧いワンピイス着て
黒いレエスを両脚に巻きて
旗は使い込んだ水彩パレットの色
少女を見つめる少年は
真向うから見つめる少年は
爆撃で砕けた水晶を持っていた
水晶は不思議にやわらかく
ふにゃふにゃして獣のおなか
冷たいけれど
抱きしめていればぬくかった
少年の手の平には赤滴り
赤零れ
赤はみるみる流れてく
少年は両手の耐え難き陣痛に
ただ 水晶を抱きしめた
少女は誓い
少年はひたすら慟哭を
「少女と少年」