「この心」

 この心は
 他人を愛していない心だ
 この心は
 凍りに閉じ込めた泡ばかりを所望する心だ
 この心は
 労わりを感じないのだ
 自らの甘い涙にリキュール入れて
 さうしてふらふら徘徊彷徨して
 俺は孤独だと溺れる心だ
 そんなだから腕の表皮だけしか切り落せないのだ
 未練がましい暴君だ
 国民はお前一人だけだ
 お前のためのお前の国だ
 お前はその国の神様だ
 生ぬるい擦り傷は地獄の炎熱の火傷にして
 讃えて
 そして泣く
 伏せる
 悶える
 哀しいなぐさみの儀式
 それだけが年中行事
 日々の仕事
 欠かせない大祭
 そして誰にも言えない秘密
 気づいてと欲しながら
 隠して
 隠して
 黙り込む

 白い粘土の長椅子に
 まだ一人で座っている
 隣に誰かを望むのではない
 賛辞の声も耳障わり
 唯 彼が願ふのは
 マッチの星灯りが見せた何処かのふるさと
 罰なる心の かえり路

「この心」

「この心」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-11

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