「創世神話」
青白い火がともる
みぞれの如き勢いで
雪のやうな格好で
蛇の炎熱の舌のように肌を爛らす
この涙に
人は抗う術を知らない
知っていても
しない
人は刃向かわずに従った
かれらは果して泣いたのだろうか
涙はかれらに沁み込んだ
冷たい炎は血管臓物中を駈けめまぐるしい
かきむしられる 感覚
それは激痛か
快楽か
青白い火は汚れた血をびしゃびしゃ吐く
一面は灰汁だらけだ
やがて身体は透きとおり
森奥の湖上澄みの色となった血
うす青く 燃ゆる色
つむぐ言葉は白雪咲かし
赤い心臓は椿一輪
桜の花食みて
月の眼 夜の髪
あけぼのの陽だまり唇染めて
今 星一つ生れたり
「創世神話」