「創世神話」

 青白い火がともる
 みぞれの如き勢いで
 雪のやうな格好で
 蛇の炎熱の舌のように肌を爛らす
 この涙に
 人は抗う術を知らない
 知っていても
 しない
 人は刃向かわずに従った
 かれらは果して泣いたのだろうか

 涙はかれらに沁み込んだ
 冷たい炎は血管臓物中を駈けめまぐるしい
 かきむしられる 感覚
 それは激痛か
 快楽か
 青白い火は汚れた血をびしゃびしゃ吐く
 一面は灰汁だらけだ
 やがて身体は透きとおり
 森奥の湖上澄みの色となった血
 うす青く 燃ゆる色
 つむぐ言葉は白雪咲かし
 赤い心臓は椿一輪
 桜の花食みて
 月の眼 夜の髪
 あけぼのの陽だまり唇染めて
 今 星一つ生れたり

「創世神話」

「創世神話」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-08

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