「雲の船」

 天と地の逆しまになったとて
 水面は処を移しただけで
 鳥は天の水を飲み
 空は静寂の湖の雨を降らす
 寂しいメロディアは変らず響き
 酸素に染み入りて
 人は呼吸をする
 人の心を嘆きに嘆いたるや車姫は
 湖に抱かれ
 あめつちの水を恣にした
 本能に生きる獣には慈しみを
 甘やかな草露含ませる
 心に引き裂かれる人間には悲しみを
 哀情の涙もて身を包む
 あめつちが逆さにならうとも
 月は水に光を落し
 影の旋律ヴィオラのたゆたい瞬かす
 哀れみたまえ聖をとめ
 どうか大いなる雲の船に
 天つ言の葉抱きたまえ

「雲の船」

「雲の船」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-08

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