「雲の船」
天と地の逆しまになったとて
水面は処を移しただけで
鳥は天の水を飲み
空は静寂の湖の雨を降らす
寂しいメロディアは変らず響き
酸素に染み入りて
人は呼吸をする
人の心を嘆きに嘆いたるや車姫は
湖に抱かれ
あめつちの水を恣にした
本能に生きる獣には慈しみを
甘やかな草露含ませる
心に引き裂かれる人間には悲しみを
哀情の涙もて身を包む
あめつちが逆さにならうとも
月は水に光を落し
影の旋律ヴィオラのたゆたい瞬かす
哀れみたまえ聖をとめ
どうか大いなる雲の船に
天つ言の葉抱きたまえ
「雲の船」