「邯鄲の夢」
ストーリーテラーは嫉妬に甘んじ
詩人は自ら生んだ花の鳥籠に鍵を掛け
盲目の画家は心をもまっさらなキャンバスにした
ストーリーテラーは未来を燃して今に狂い
詩人は過去と現実の朧月に蝶たちと戯れては
盲目の画家は思い出の約束を胸に白い鳩を描いた
酢えた林檎の匂い
雪に漂ふ赤椿
瞳の黒点は動かす
白い三日月を背に負いて
白百合握り潰ししてのひらに
白百合に埋れて涙を零し
腕伝いて血は垂れり
噛んだ唇彼岸花
ストーリーテラーはこめかみにピストル握り
詩人は眉間も涼やかに
祈り夢を見て瞑目した
ステンドグラスの教会で
蛍火のごとき入日
指先に留まるを見つめ
霞の眼 笑う
「邯鄲の夢」