「邯鄲の夢」

 ストーリーテラーは嫉妬に甘んじ
 詩人は自ら生んだ花の鳥籠に鍵を掛け
 盲目の画家は心をもまっさらなキャンバスにした

 ストーリーテラーは未来を燃して今に狂い
 詩人は過去と現実の朧月に蝶たちと戯れては
 盲目の画家は思い出の約束を胸に白い鳩を描いた

 酢えた林檎の匂い
  雪に漂ふ赤椿
 瞳の黒点は動かす
  白い三日月を背に負いて
 白百合握り潰ししてのひらに
  白百合に埋れて涙を零し
 腕伝いて血は垂れり
  噛んだ唇彼岸花
 ストーリーテラーはこめかみにピストル握り
 詩人は眉間も涼やかに
 祈り夢を見て瞑目した

 ステンドグラスの教会で
 蛍火のごとき入日
 指先に留まるを見つめ
 霞の眼 笑う

「邯鄲の夢」

「邯鄲の夢」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-07

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