「リボンと御旗」

 赤いリボン
 たゆたうさまよふ空の中
 風船よりも気まぐれに
 風より素直に
 たゆたう
 さまよふ
 空の、中。

 どこへ行ったろう
 あのこはどこへ
 満月のやうに寂しいあのこ
 とうめいなからだして
 赤い心臓を剝き出しにして
 いつも笑ってる癖に
 心臓は雨に打たれる花のやうに
 細やかに震えていたのを
 利き手に持ってた小さな旗でなでたら
 花びらは長く連なって
 鳥に誘われて
 ぱっと舞い去った
 あのこ、あのこは今いづこ

 旗は白くたなびく
 風に煽られても翻ることなく
 天上の水面白雲の泡見上げ
 土から足を離さず
 黒い土から足を離さず
 逢魔が時に咲いたシラユリの花に涙をそそぎ
 枯れぬやうに
 枯れないようにと
 一本だけの足で立つ

 夜のいざない
 月は黄色か青色か
 旗の背に掛かるものは
 闇であれど光であれど
 もう救いの旗には分らなくて

 或いは
 赤色であったかもしれない

「リボンと御旗」

「リボンと御旗」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-07

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