「一片の花」

 手のひらでそっと
 押し留める
 蛍を両手に匿うように
 花のかけら一片
 暗室に包み入れて

 五本の指は
 もろともに震い
 小刻みに秒針となれど
 奥底は戦慄く
 細い針は天道を仰げど
 服する度胸無く
 指先はまた
 張り詰める薄氷皴割れて
 生ぬるい雫をこぼす
 脅える血管に
 肌一枚隔てるも
 雫はおんなじ添う流れ
 何等の障りが二つにあろう?
 二つの哀しみは離れながらも溶けあう
 雪の面影残した
 冷たい春の氷となって
 手のひらに…注ぐ
 一片の花
 色も分たず一片の花
 どうか
 生きて

「一片の花」

「一片の花」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-05

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