「一片の花」
手のひらでそっと
押し留める
蛍を両手に匿うように
花のかけら一片
暗室に包み入れて
五本の指は
もろともに震い
小刻みに秒針となれど
奥底は戦慄く
細い針は天道を仰げど
服する度胸無く
指先はまた
張り詰める薄氷皴割れて
生ぬるい雫をこぼす
脅える血管に
肌一枚隔てるも
雫はおんなじ添う流れ
何等の障りが二つにあろう?
二つの哀しみは離れながらも溶けあう
雪の面影残した
冷たい春の氷となって
手のひらに…注ぐ
一片の花
色も分たず一片の花
どうか
生きて
「一片の花」