「大地」
大地が泣くか
母のぬくもり求める幼子のやうに
人のやさしさに
憂いを感じる在りし日々の姿に
本能といふ心のままに生きていた姿に
逢いたくて泣くのであろう
大地よどうか絶望し給ふな
月への思慕と星の靈持ちて
絶望と同居する臆病な奴は
今、月を仰いで祈り
静かなみぞれを降らしているから
あなたの流した憤怒の涙も
悲愴の涙も
歯を喰いしばり唇殺めた悔しさの血も
雪となれ
雪となれ
雪となっていつくしみの指先から咲けよ咲けよと
顔色蒼き敗残兵が祈っているから
「大地」