「大地」

 大地が泣くか
 母のぬくもり求める幼子のやうに
 人のやさしさに
 憂いを感じる在りし日々の姿に
 本能といふ心のままに生きていた姿に
 逢いたくて泣くのであろう
 大地よどうか絶望し給ふな
 月への思慕と星の靈持ちて
 絶望と同居する臆病な奴は
 今、月を仰いで祈り
 静かなみぞれを降らしているから
 あなたの流した憤怒の涙も
 悲愴の涙も
 歯を喰いしばり唇殺めた悔しさの血も
 雪となれ
 雪となれ
 雪となっていつくしみの指先から咲けよ咲けよと
 顔色蒼き敗残兵が祈っているから

「大地」

「大地」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-05

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