姑獲鳥
何に悩んでいるんでしょうか
深夜4時17分
ありがたい全てに取り込まれて
皆の理想になってゆく
その姿はやっぱり美しくて
だから退屈になってしまうようなのです
和紙にインク
鬱にポップ
雨は温かくどこか甘い
だから慣れてしまうんです
空虚は身近になってしまって
虚像だけが心の便り
もう既に骨は腐って立つことすらもままならない
安い政治批判
浅い性別至上主義
薄い恋愛セールストーク
君の声はいつも泡
僕の声はいつも鏡
彩られた世界はいつだってセピアに色が落ち
けれどそれが正しいと皆が言うので
信じることにして
いつだって僕は僕の意見で生きていけなくて
他人が介入しなくなった瞬間に
僕の支えが僕の忌み嫌っていたものと知る
嫌いな物に囲まれて
そしてそれが離したくなくて愛おしいものと知る
贅沢者の病を知る
僕は嫌いになれないから
好きな物を敢えて嫌いになろうとする
贅沢は敵だった
今でも敵だ
それでも今の僕にそれを糾弾するものはいない
そして僕の心は空だとする
それを埋めるように本を読む
色を補充するように散歩をする
そして得られたものは特にない
だから僕は姑獲鳥と呼ぶ
僕のそれを姑獲鳥と呼ぶ
君のそれを奪う姑獲鳥に成る
夜は怖い
溶けてしまうだろうから
道が分からなくなりたいから
だからそれが叶ってしまいそうだから
家路を忘れたがっている
還る場所がないと思い込んでいるからか
帰る家が無いと思いたいからか
ああ溶解する
境界線が曖昧になる
ニューシャトルのあの人工的な蛍光色のあの感覚が蘇る
像はない
夢のような感触だ
しかし、嗚呼あの時に戻りたい
戻れないのは知っている
知っている
それが現実に存在し得ないものだと
何十回と乗車したその1分1秒を切り取って
僕の好みにただコラージュしているだけと言うのも知っている
記憶が曖昧になる
それは存在する景色なのかも溶けてわからなくなってゆく
愛するものが溶けてゆく
溶けて混ざってそれを好んでする
何が何だかわからない
しかし止められない
愛しているものを捨ててゆく
迷惑そうに抱えて困り果てているあの姑獲鳥のように
僕はこの愛おしい全てを同じように抱いて
手中にあるものを捨てている
眩暈がする
文字を打つ
現実かどうかも曖昧になる
時間が早く、そして遅く進んでいる
僕は姑獲鳥である
姑獲鳥