「ゆふぐれ」
ゆふぐれの路
黄昏の緞帳が降りて
横たわる頭の上に
顔に
首に
しなだれ掛かって
ゆふぐれの路
横たわるは誰
顔も見えない
影法師は
向かうを遙かに望むか
此方を凝視するのか
ゆふぐれの路
何等の蟲がひしゃげている
聞えるは
自転車で帰る学生の
友人と喋る笑い声
自転車は東へと帰る
ゆふぐれの路
建物は押し黙り
彷徨うをとなを一ツ目で追う
子どもが来て
何処へ帰るのと問いてみれば
子は泣出し
往来でぐずをこね
手を引かれて見えなくなった
声はすれども姿は見えず
姿は無けれども声は消えず
さびしく
もの哀しく
手毬の唄かわらべ唄
冬の夕風心に染みて
ゆふぐれの路
黄昏の町
人は黒く
輪郭を景色に捨て去った
涙で濡らした白紙に
絵の具をはらはら
彩るもまた涙…滲む
ゆふぐれの路
帰るは、何処。
「ゆふぐれ」