「花筏」

 夜
 日の灯らない街
 クスリに痺れるネオンも無く
 寂寞
 そして
 動く水の音
 裳裾をひく
 あの川の声

 みなもから
 笑いかけるは 誰
 胸に抱きとめようとも
 川の流れはひとところに有らず
 漂うてゆらぐのは
 桜の見せた花筏
 手で触われば忽ちにほどけようぞ

 月の恵みし糸に
 いとしきを託し
 川にかかる光
 儚い命を撫でて
 架かる木造づくりの橋に座り
 願い垂れて合掌す

「花筏」

「花筏」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-04

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