「聖母子像」

 折れた水仙白菊の花
 赤い土に埋もれ手果てぬ
 群がる虫 牙で噛み切り
 花は散りぢり
 この手には…一片も残らないで

 死んだ虫達枯山抄
 墮ろした山は赤土にもなれず
 干涸らびた
 産声すらも知らぬまま

 枯れた山に雨が降る
 仮初の躯に水含ませ
 冷たい唇に水含ませ
 虫どもの悪行を滌ぎて清めよ雨

 冬の雨は濡色に冴える
 あのかなしい川に零れるしづくの
 波紋震う面影のみなも
 後光の心臓健気な乳に
 幼いものが吸いつき
 微笑まれる聖をとめ像…
 冬の雨よ止むなかれ
 冷たく肩を震わして
 我が幻影を川に描けよ
 朧なる黄色の月
 優しげなる
 獣の眼差しか
 山吹の花薫りたる

「聖母子像」

「聖母子像」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-04

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