「聖母子像」
折れた水仙白菊の花
赤い土に埋もれ手果てぬ
群がる虫 牙で噛み切り
花は散りぢり
この手には…一片も残らないで
死んだ虫達枯山抄
墮ろした山は赤土にもなれず
干涸らびた
産声すらも知らぬまま
枯れた山に雨が降る
仮初の躯に水含ませ
冷たい唇に水含ませ
虫どもの悪行を滌ぎて清めよ雨
冬の雨は濡色に冴える
あのかなしい川に零れるしづくの
波紋震う面影のみなも
後光の心臓健気な乳に
幼いものが吸いつき
微笑まれる聖をとめ像…
冬の雨よ止むなかれ
冷たく肩を震わして
我が幻影を川に描けよ
朧なる黄色の月
優しげなる
獣の眼差しか
山吹の花薫りたる
「聖母子像」