窃盗症

 実の姉が急死したと警察から聞かされても、新介には特に何の感情もわかなかった。
 せいぜいが、
「警察と関わるなんて、面倒だなあ」
 と思った程度で。
 姉のことを愛していたわけではない。むしろ姉弟仲は悪かったのだ。
 しかしすでに両親は他界し、ここ何年も親戚づきあいなどしていないのであれば、
「死体の身元確認には、自分が警察署へ出向くしかないのか」
 と、あきらめるほかなかった。
 こんな場合に頼れる友人もおらず、趣味もなく楽しみもなく、外出といえば職場へ出かける時か、最低限必要な買い物のみという暮らしを何年も続けていた。
 姉の名は佐田直子といった。新介の名は、佐田新介ということになる。
 まだ子供だった頃から、姉は新介にとって『目の上のタンコブ』のような存在だった。
 特に新介が中学1年に入学した時点で姉は3年生で、なんと生徒会長をしていた。
 女子が生徒会長というのは、当時は珍しいことだった。
 言ってみれば姉は、学校のマドンナだったのだ。
 新介が入学した初日、教師の言葉からしてこうだった。
「やあ、君が直子さんの弟かい?」
 校内で、新介の呼び名が決定した瞬間だった。
『直子さんの弟』と同級生も新介を呼んだ。
 ついに廊下ですれ違いざま、校長までがその名を使った時、堪忍袋の緒が切れた。
 その翌日、新介はテスト答案の氏名欄に記入したのだ。
『1年1組 氏名:直子さんの弟』
 呼び出されて怒られるかと思ったが何もなく、採点された答案が正常に返却された時には、体中の力が抜けた。
「ねえ直子さんの弟君、直子さんは今日はお忙しいかしら?」
「なあ直子さんの弟君、今度の日曜、直子さんを映画に誘いたいんだが、君の口からきいてみてくれないか?」
「おお直子さんの弟君、直子さんの昨日の演説は、なかなか立派だったね。さすがは生徒会長だ」
 だが生徒や教師たちの反応も、わからないではない。
 あの学校においては、姉一人が勉強のレベルや偏差値を引き上げている感があった。
 何かのコンクールで賞を取るのもいつも姉。
 善行で警察から表彰されるのも、新聞記者から取材を受けるのもいつも姉だった。
 その姉が今、新介の目の前で、冷蔵庫から引き出されて来たところだ。
 死体の確認は警察署でするものと思っていたが、意外にも検視局へつれてゆかれ、そこでご対面となった。
 壁一面が何十もの銀色のドアで埋めつくされた広い部屋があり、そのドアの一つが開いて、まるで引き出しのように姉は滑り出てきたのだ。
 その手際のよさに、新介は少し感心した。
 部屋の中には線香がたかれ、煙があたりを漂っている。
 ひき逃げだったのだ。
 一日の勤務を終えた夜遅く、駅から自宅への道でのこと。
 はねた自動車は、衝突後にブレーキをかけた形跡すらない。
「ご遺体はあなたの姉、佐田直子さんに間違いありませんね?」
 と刑事が尋ねるので、新介はうなずいた。
 あまり興味もなかったが一応、被害者遺族らしいセリフをはいておくことにした。
「犯人は捕まりましたか?」
「まだ捕まりません。あるところに防犯カメラがあり、その映像に写っています。しかし盗難車でしてね…」
「そうですか」
「それにしてもお姉さんは残念でしたね」
「えっ?」
 意外な言葉に新介は驚いたが、若い刑事は少しはにかんだ顔を見せた。
「学年は一つ下ですが、僕も同じ学校へ行っていたのですよ。懐かしいです。クラスの男子の3分の1ぐらいは、お姉さんに恋をしていたんじゃないでしょうか。隠れて写真を撮って、お姉さんのブロマイドを作って売っているやつまでいましたから」
「…」
「先日も同窓会があって、学年は違うからお姉さんはもちろん出席しませんでしたが、みんなでいろいろと語ったのですよ。なにせお姉さんは学校のマドンナだったから、みな覚えているのです」


 姉の部屋へ立ち入るのは、新介はこれが初めてだった。
 新介も姉も独身で、両親の残した家に住んでいたが、姉の部屋には常に鍵がかかっており、本人以外は入ることができなかったのだ。
 生前から、本当に姉は誰一人として、この部屋に立ち入ることを許さなかった。
 友人を招いてもこの部屋に通すことはなく、家族の者も同様で、掃除から模様替えまで、すべて姉は自分ひとりの手で行った。
 ひき逃げ事件はまだまだ解決しないが、とりあえず姉の私物だけは警察から返却されたので、その中にあったキーを用いて、新介は姉の部屋へはじめて足を踏み入れたのだ。
 意外にも、姉の部屋の内部は乱雑だった。
 姉の性格から、もっときっちり片付いていると思っていたので少し驚いた。
「姉の所有物のうち、売れるものは勝手に売ってやろう…」
 と新介は考えていた。
 そんな新介の目に、金庫が目についた。
 家庭用としては場違いなサイズで、戸棚の影に隠すように置かれていたのだ。
 目立たない黒に塗られ、2枚の鉄扉が手前に開くようになっている。
 扉には鍵穴があり、もちろんロックされていた。
 しかしそのキーに新介は見覚えがあった。
 先ほどの私物の中に、長い金色のキーが目についたのだ。
「きっとこれだろう」
 試してみると、はたしてそれが金庫のキーだった。
 鍵穴にピタリと収まり、カチンと気持ちの良い音がする。
 つまり姉は、このキーを常に肌身離さず身に着けていたということだ。
 新介は、恐る恐る扉をひき開けた。
 金庫の内部には、雑然と物が積み上げられていた。
 写真立てや個人的なノート、学校の教科書といった、金庫の中身にふさわしいとは思えないものばかりだ。
 その中である物が、新介の目をひきつけた。
「あっ」
 と思い、手に取ると、ボール紙製のカードなのだ。
 いかにも子供向けの商品で、鮮やかな色で、文字と写真が両面に印刷されている。
「くそっ…」
 思わず新介は、悪態をつかなくてはならなかった。
 そのカードには見覚えがあったのだ。
 見覚えどころか、これはかつて新介の所有物だった。
 小学生時代、新介は怪獣ものの映画やテレビ番組が大好きで、いつも見ていた。
 学校でも、友人たちとは怪獣の話ばかりしていた。
 そういう新介の宝物は、怪獣の名と写真が印刷されたハガキ大のカードだった。
 1枚何円と駄菓子屋で安く売られていたのだが、新介は何十枚と買い集めた。
 それを毎日眺め、大切にしていたのだが、その中の1枚がある日、行方不明になった。
 しかもそれは、最も気に入っている火炎怪獣のもので、新介は家中を探し回ったが、結局発見することはできなかった。
 泣きべそをかき、とうとう捜索をあきらめたが、その後の数日間を文字通り新介は涙とともに過ごし、ショックがあまりにも大きかったのか、あれほど好きだった怪獣への情熱も、急速にしぼんでいったのだ。
 それ以来、何事かに熱中することも関心を持つことも、新介はきっぱり止めてしまった。
『何かを好きになると、それだけ失ったときの衝撃も大きい』
 と小学生なりに学んだのだろう。
 それ以後、新介は何事にも情熱を燃やさず、深く関わることを拒否する人間へと成長していった。
 そして今、その火炎怪獣のカードが金庫の中から出てきたのだ。
「これじゃあ、犯人が誰か分かりきっているじゃないか…」 
 新介が言うのは、もちろんひき逃げ犯のことではない。
「姉が盗んで、ここに隠していたのだ」
 そう思って見回すと、思い当たらないこともない。
 例えばこの金庫の中、怪獣カードの次に目についた数学の教科書だが、高校生用のもので、裏返すと所有者の名が書かれている。
 女の名で、新介に覚えはないが、かつての姉の同級生ではなかろうか。
 そういえば、
『理系クラスへ進みたいと数学の猛勉強を始めた誰かが、そのとたんに数学の教科書を紛失してしまい、大いに困っているらしい…』
 という話を、姉が母親にしているのを小耳にはさんだ記憶がある。
「ははあ」
 と新介はうなずいた。
 幼い頃からずっと、姉は『良い子』
 小学校へ入学してからも、常に『優等生』で通っていたのだし、家族としても疑ったことは一度もない。
 しかしどうやら、見かけの姉と真実の姉との間には、かなりの乖離があったようだ。
「おやおや」
 その次に発見した物体は、新介の確信をさらに深めた。
 大学入試の受験票だった。日付は10年弱の昔。
 つまり姉自身が受験生だった時期に重なるのだ。
 貼り付けられている顔写真にも、氏名にも見覚えはないが、これも姉の同級生なのだろう。
「受験票を紛失して、この受験生は受験できたのだろうか」
 新介は思いをめぐらせたが、まず受験は不可能だったろう。
 姉の行為は、新介自身を含め、少なからぬ人々の人生を狂わせたのだ。
 新介は、金庫の中の品々を調べ続けた。
 そのたびに、隠されていた姉の姿が浮かび上がる。
 そのバラエティーに、新介は退屈する暇もなかった。
 誕生日プレゼントだったのだろう。誰かの名が裏面に刻まれた女物の腕時計。
 どこかの男の名が書かれた表彰状が細かくちぎられて、封筒の小さな中に納まっていた。
 この男が何をし、何故に表彰されたのかすら、もはや新介は確かめるのも面倒だった。
 それほどまでに姉の『戦利品』は数多かったのだ。
 数え上げれば15点近い。


 ひき逃げ事件はまだ解決しなかったが、姉のために、新介も葬儀を行わなくてはならなかった。
 最初は親戚だけを集め、ごく小さく済ませるつもりだったが、新聞記事を見た連中から問い合わせが入り始め、内輪というわけにはいかなくなったのだ。
 だから会場を借り切っての大掛かりなものになったが、さすがは姉ということだろう。
 学校時代の同窓生が全員姿を見せているのではないかと思えるほど賑やかな葬儀になった。
 なんと先日の若い刑事の顔まであったほどだ。
「捜査とは直接関係ないのですが、来てしまいました」
 と刑事ははにかんだ。
 式が始まり、焼香、出棺ととどこおりなく進んだが、新介が驚いたのは、そこで帰ったりせず、骨上げまで居残ろうとする者が親戚以外にも何人かあったことで、全く予想外だった。
 考えてみれば、これらは姉に特に近く親しかった人々だろう。ほとんどが中学、高校の同級生たちだ。
 午後遅くには骨上げも終わり、葬儀は終了した。
 参列者たちとは別れ、帰宅するために新介も駐車場へ向かったのだが、そこで声をかけられた。
「新ちゃん」
 振り向くと参列者の一人、姉の親友だった女だ。顔は新介も知っており、名は沢口といった。
 沢口はチラリと見まわし、まわりに人がいないことを確かめたようだ。
 沢口の後ろを、同じような年齢の女が二人ついて来ている。
「ねえ新ちゃん、私の腕時計、今からでもいいから返してくれないかな?」
 と沢口は言った。
「えっ?」
「知ってるでしょう? とぼけないでよ。まだ新品だったのよ。裏ブタに私の名前が彫り付けてあるわ」
 金庫の中のあの腕時計のことだと気づき、新介は体がカッと熱くなりかけたが、返事はできなかった。
 その前に別の女が口を開いたのだ。
「私もそうよ。あの時は別の大学を受験しなおさなくてはならなかったんだから、せめて受験料を返してほしいわね」
「受験料って?」
「直子の部屋の金庫の中身を見たでしょう? 盗品の山だったはず。大学の受験票があったでしょ? あれが私のよ」
「あれは…」
 ここで別の女が口をはさみ、ポケットから取り出した紙きれをヒラヒラさせた。
「これ、数学の教科書を買いなおした時の領収書ね。ちゃんと払ってもらうわよ」
「だけど…」
 本当に新介は、どう答えてよいやら分からなかったのだ。
 沢口が鼻を鳴らした。
「何言ってんのよ。直子の正体は、学校の女子はみんな知ってたのよ。アホな男子と先生たちが知らなかっただけでね。目が曇ってるにもほどがあるわよ」
「じゃあ、なぜ本人に返還を要求しなかったんだい? 機会はいくらでもあったろうに」
 すると女たちは鼻を鳴らし、
「そんなことできるわけないわよ。直子は先生たちのお気に入りで全学のマドンナ。こっちは何もなくて目立たないただの生徒じゃあね。返せ、そんなもの知らないわで、始めから勝ち目なんかありゃしない」
「そもそも金庫のことをどうして知ってるんだい?」
「直子は、私のことを親友と思ってた。私はそんなこと、思ったこともないけどね。
 直子はいろいろ話してくれたのよ。中身が何かまでは言わなかったけど、自分の部屋には大切なものを入れる金庫があって、そのキーはいつも肌身離さず持ってるってさ」
「中身は盗品の山だろうと予想したのかい?」
「その通りよ。だけどそれだけではない」
「…」
「直子はこんなことも言ってた。持ち物のうちで特に大事なものは、同じ金庫の中でも特別な場所に入れてあるってさ」
「特別って?」
「それが何なのかは知らないのよ。でも封筒に入れて、金庫の内側、天井部分にセロテープで張り付けてあるそうよ。親友と思ったから話してくれた秘密だけど、約束を守る義理はないしね…」


 盗品の返還を約束して、新介は沢口たちとは別れた。
 車に乗り、骨壺を手に帰宅したのだ。
 だが玄関を入っても骨壺は下駄箱の上に置いたままで、階段を駆け上がっていった。
 姉の部屋に入ると、金庫はドアを開けたままになっていた。
 新介は、金庫の中身を空にしたと思い込んでいたのだ。
 だが内部に手を突っ込むと、確かに天井板には指に当たるものがある。
 沢口が言っていたように封筒で、セロテープで張り付けてあるようだ。
 新介はすぐに取り出した。
 それほど大きなものではないが、開けてみると新聞記事の切り抜きと、メモ用紙らしい白い紙が一枚ずつ入っている。
 切り抜きは社会面の記事らしいが、目立つのは余白部分に新介自身の手書き文字でメモ書きがあることで、

『神戸 505 あ 〇〇〇〇』

 と自動車のナンバープレートのようだ。
 記事は3年前の日付で、近隣の町で起こったひき逃げ事件を扱っていたが、こちらも被害者は姉と同じように死亡していた。
 ただ記事の終わり方が奇妙で、事故の状況から見て、その瞬間を目撃した者が少なくとも1名はいたに違いないと思われるものの、いまだに警察に名乗り出る者はなく、
「目撃者はぜひ名乗り出てほしい」
 と記者は記事の最後を結んでいた。
 もう一枚の紙は正真正銘のメモ用紙で、こちらにも走り書きがあるが、新介の知らない書き手によるもの。

『すべておっしゃるとおりにいたします。毎年クリスマスに100万円を郵便小包にて』

「ふうん」
 そういえば新介には思い当たるフシがあった。
 クリスマス近くのある日、姉が留守をしている家に小包が届き、新介が代わりに受け取ったことがあるのだ。
 差出人の名など覚えてはいないし、どうせ偽名だったろうが、あれがそうだったのだろう。
「紙幣で100万円といえば、あのくらいの大きさなのか」
 そういえば、過去2回ほど同じことがあったような気がする。
「あれっ?」
 不意に気がついて、新介は急いで自分の部屋へと向かった。
 姉の部屋と同じように2階にあるが、こちらもよく片付けられているとは言い難い。
 自分の部屋だから、立ち入るのに何の遠慮もない。
 独身男らしい殺風景さだが、その中で一つだけ、額に入れられた風景画が壁に目立つ。
 なんということのない風景画だが、もちろん新介が自分の意志で置いたのではなく、あまりの殺風景さに母親がどこかから持ってきて、勝手に飾ったのだ。
 新介には何の関心もなかったが、外してしまうことさえ面倒に感じられ、そのままになっていたた。
 その風景画を壁から取り外し、新介は裏返した。留め金をゆるめ、裏ブタを外したのだが、
「やはりないな」
 先ほどの新聞記事は、新介がここに入れて隠しておいたものなのだ。
 つまり姉は、新介の留守を狙って、家探しまでしていたことになる。
 だがおかげで、新介は納得することができた。
 3年前、ひき逃げを目撃したのは新介自身なのだが、なんだか面倒くさい気がして、ナンバーを警察に届けたりはしなかった。
 怪獣カードが消えて以来、新介はそれほど人との関わりを避ける性格へと変わっていたのだ。
 それでもひき逃げの記事を新聞に見つけた時、記憶していたナンバーだけメモ書きして、そのまま忘れることにしたのだ。
 それを風景画の裏に隠したことさえ、今日この瞬間まで思い出すことはなかった。
 それを姉は盗み出した。きっとまた、弟の人生を左右するネタを求めてのことだったろう。
 しかしあの新聞記事には、もっと別の使い道がある。そのことに姉は気づいた。
 ナンバープレートだけを手掛かりに、警察官でもない姉が、どうやってひき逃げ犯と連絡を取ることができたのかは分からないが、興信所をひそかに雇うことだって可能かもしれない。
 金庫の中にあった品々を見てもわかる通り、いつの間にか姉は、他者の運命を操り、人生を支配することに喜びを感じるようになっていたのだろう。
 ひき逃げ犯も、そのワナの中に落ち込んでしまったのだ。
 しかし全てが姉の思い通りに運ぶわけではない。
 ひき逃げ犯はついに、姉に反旗をひるがえす気になったのだろう。
 毎年毎年、100万円という金を吸い上げられることが我慢できなくなったのか。
 ならば、どうやって姉を黙らせたらいい?
 皮肉にも3年前と同じ方法を用いることにしたのだろう。
 3年前は純粋に交通事故だったのが、今回は事前に準備し、足のつきにくい盗難車を用いた、というところか。
「これは警察に届けないわけにはいかないよなあ」
 もちろん新介には、姉のカタキを討ちたいという気持ちなどなかった。
 怪獣カードのこと一つとってもわかるように、新介にとって姉は敵でしかない。
「しかし、すでに2人も死んでいる以上は…」
 他人の運命を支配するという遊びが、最後には姉自身の命を奪ってしまったのだ。
 気は進まなかったが、新介は警察へ出かける気になった。
 まあいいさ。あの若い刑事をつかまえて、面倒なことはすべて押し付けてしまえばいい。
 事情を知った時に若い刑事がどんな顔をするのか、それだけは新介も楽しみだった。


 後日、ひき逃げ犯はあっけなく逮捕されてしまった。
 ナンバープレートが分かっているのだから、難しい捜査ではなかったのかもしれない。
 裁判にかけられ、当然のごとく有罪判決を得たが、それがどういう人物であるかということにさえ、もはや新介は興味がなかったのだ。
 ただ新介があきれ、同時に運命も感じたのは、ひき逃げ犯の正体が、新介や姉と同じ学校の卒業生だったことだ。同級生だったのだ。
 学校時代の姉のこともよく知り、あこがれを感じてもいたそうだ。
「あこがれの元マドンナから脅迫を受けたら、犯人もさぞかしビックリしたろうよ」
 それが、この事件について新介が持った唯一の感想だった。
(終)

窃盗症

窃盗症

姉が死んだ。ハハハ…

  • 小説
  • 短編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-03

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