冬服、見れなかった
地縛霊になってもうすぐ一年が経つ。あの人を見るようになってから、席はだいたい、一番後ろの一番右。日光がもろに当たる。
なんとなく安心できるというぐらいのもの。
何もかも変えてしまうほどではない。
刷りたてのコピー用紙みたいなもの。
同じとこで降りてみるなんてしないよ。
地縛霊だから。
一本早いのに乗ってみるなんてしないよ。
地縛霊だから。
まだシャツの袖を捲っていたあの人。それが最後。しばらくしても全然暑かった。日本の気候はやはりおかしいのだ。
これから先、どうなるかは分からないが
そろそろ成仏できるそうだし。
このバスともお別れになるし。
きっと今日もあの人はいないのだろうが
ピーナツクリームはおいしい。
これなら何枚でも食べられる。
ああ。結局、冬服、見れなかった。
冬服、見れなかった