累卵之夢

累卵之夢

編

大声で泣いてみたい

声を出し 
泣いて叫んでみたい

苦悩を抱き 

選択してゆく

進んでゆく

どこかで重ね
何も変わらないのに
言い訳を探すために
ずっと逃げている
ずっと人を夢見ている

『言い訳。』より

確立された詩

確立された詩

夕空はコントラストを失(うしな)い
溶(と)けた
黄昏(たそがれ)は移(うつ)り変わる

塗色(としょく)されぬ空
確立(かくりつ)なき心象(しんしょう)
風景(ふうけい)
先にしるしはなく

夜闇(やあん)を刻(きざ)む座標(ざひょう)もない

何処(どこ)にあるのかわからない

何処であるのかわからない


吐瀉(としゃ)された記憶(きおく)
静寂(せいじゃく)と破綻(はたん)へ
少しずつ欠けていく

緩(ゆる)やかに落ちていく

歩むごと零(こぼ)れていく

空蝉(うつせみ)の境界線(きょうかいせん)

倒錯(とうさく)した手影の群(む)れ
蛇(へび)のようにのばされる
光に映(うつ)しだされた
かみの前で

絡(から)め侵(おか)す
互(たが)いを濡(ぬ)らし

際限(さいげん)なく繋(つな)がり

温(ぬく)もる闇に満たされ

やがて

各(おの)々は消息(しょうそく)を絶(た)ち

各々が全(すべ)て忘(わす)れる



天には届(とど)かず
空とも向きあえず
顔を背(そむ)け

朝が夜にならずとも
ひとり
だだひとり
回り続けるだろう

あちらこちら

あちらこちら

夢なかの街をこちらに
持ちこみたいのならば
このまま続けること
だけを考えればよい
つまり
そうか
そう
なのだ


ゆらゆらゆらゆらゆら
ゆらゆり籠にゆらゆら
ゆらゆらゆらゆらゆら
ゆらゆらゆらゆらゆら
ゆらゆらゆり籠にゆら
ゆらゆらゆらゆらゆら
ゆらゆらゆらゆらゆら
ゆらゆり籠にゆらゆら
ゆらゆらゆらゆらゆら
      
                          
残片(ざんぺん)を加工し{ }↓   
→{   }下に積み    
前提(ぜんてい)とし{   }←
{  }↓意識(いしき)を囲(かこ)い
矛盾(むじゅん)としよう←{ }
偶像(ぐうぞう)を解剖(かいぼう)したが突(つ)き
止められない
  追求(ついきゅう)  諦念(ていねん)
目的(もくてき){    }具有(ぐゆう)
  用途(ようと)  物質(ぶっしつ)
変容(へんよう)する欲望(よくぼう)に答えを
持つなどできやしない
計算せよ!計算せよ!
         

わからない
なにもわからない!
なにもわからない!
そう叫(さけ)ぶ
どこに?
つまり
そうか
そう
なのだ


さかさのさかさのさか
さのさかなの魚のさか
さのさかさのさかさの
さかさの魚のさかさの
さかさのさかさのさか
さのさかさのさかなの
さかさのさかさのさか
さのさかさのさかさの
さかさの魚のさかなの


運命(うんめい)を廻(まわ)る回転木馬(かいてんもくば)よ
わたしは
救(すく)われるだろうか
いつしかこちらを
いや
見境(みさかい)なく
すべてを曖昧(あいまい)に
連鎖(れんさ)と呼び
呼ばれた
わたしを夢なかに
とどまらせてくれる
手段(しゅだん)とした
魂(たましい)に傷(きず)をつけてくれる
方法は救(すく)いである
そちらに
生きるゆえに
重(おも)たくなった心臓(しんぞう)は
不可逆(ふかぎゃく)的に傾(かたむ)く
もはや観測機(かんそくき)はない


こちら
を
続ける
の
ですか

あちら
で
終える
の
ですか

        
亡者(もうじゃ)
の
等式(とうしき)
は
あります
か

注連縄

注連縄

もうすこしであなたと交代(こうたい)できます。そうしたら疲(つか)れたと言って眠(ねむ)りましょう。その時まではおとなしく気取(けど)られないようにします。苦しくても縄(なわ)でぎゅっとしぼりだせば、ふわふわくらくらした心地(ここち)と現世(うつしよ)を抜(ぬ)けたような快感(かいかん)を経験(けいけん)できます。強くしめてもらう感覚(かんかく)は、ほんとうに特別です。なにせ分(わ)け隔(へだ)てられた常世(とこよ)に漂(ただよ)えるわけですから。なんだかもうどうでもよくて、頭の中に飾(かざ)りたいだけなのです。あらゆる実現(じつげん)、あらゆる破壊(はかい)はその日、わたしだけの世界の変化で、それはきっと星に手が届(とど)くという瞬間(しゅんかん)、祈(いの)りはあなたにではなく、静寂(せいじゃく)に届(とど)くという意味(いみ)で、わからなくなったもろもろすべてを暗闇(くらやみ)に溶(と)かす行為(こうい)なのです。なぜなら目を閉じると光はわたしのそばにあり、でもあまりに冷たく凍(こご)えてしまいそうだから、できる限(かぎ)り遠くに逃げようと急いだのですけれど、それほど早くはないから、鈍足(どんそく)だから追いつかれて、包(つつ)みこまれて、寒くて、とても寒くて、肩(かた)をふるわせました。だから時間は嫌(きら)いです。止まればいいのでしょうけど、そんな都合(つごう)のいい道理(どうり)はないと彼らに怒(おこ)られたので、いっそわたしがなくなってしまえば問題(もんだい)は万事(ばんじ)解決(かいけつ)するでしょうと、天まで続く苔(こけ)むした石(いし)階段(かいだん)をのぼりました。あたりは霧(きり)で覆(おお)われ、水を含(ふく)んだ緑(みどり)の匂(にお)いとひんやりとした空気、下界(げかい)を見下ろすとあれだけ騒(さわ)いでいた群衆(ぐんしゅう)はきれいな、それは見事(みごと)なまるい縁(えん)を描(えが)いてぐるぐるといつまでも回っているので、わたしはお腹(なか)を抱(かか)えて大笑いして吐(は)きました。羽(はね)の生(は)えた吐瀉(としゃ)物(ぶつ)は「かごめかごめ籠(かご)の中の鳥はいついつ出(で)やる」と、言いのこして飛び去(さ)りました。後(うし)ろに正面(しょうめん)はないので振(ふ)り返(かえ)ることもできずに前へ前へ行くしかなかったのですから、どうしようもありません。やがて血のように赤い大きな大きな門が見えてきて、カッチコッチという音もついに聞こえなくなり、ようやく天頂(てんちょう)に着(つ)いたのだと思えばほっとして頬杖(ほおづえ)ついて腰(こし)をおろしてしまいました。そうしたらなんだかうとうとしてきました。どうかだれもなにも知らないままでいて欲(ほ)しいのです。すべて次の世界に持(も)ち越(こ)しますから。さて、もうすこし待ったら出発しましょう。わたしですら受け入れてくれる、温かい闇へ向けて。

予言的6行詩

予言的6行詩

円環(えんかん)の文字(もじ)列(れつ)。誇大(こだい)妄想(もうそう)。
さらされた真偽(しんぎ)の分類(ぶんるい)。
どうか一緒(いっしょ)に散(ち)らばる書物(しょもつ)を拾(ひろ)い集(あつ)めてほしい。
わたしを腐乱(ふらん)の地に投(な)げ捨(す)て否定(ひてい)せよ。
違(ちが)う、間違(まちが)えているのだと。
打ちのめされ、象(ぞう)に虚言(きょげん)を吐(は)き安堵(あんど)する。


不正を働く天秤(てんびん)がおりてきた。
さあ告白しよう。わたしとは自覚(じかく)的(てき)な多次(たじ)創作(そうさく)だ。
しかし赤色(せきしょく)の救世主(きゅうせいしゅ)は創(つく)れなかった。
こぼれた黒インクは机(つくえ)に広がる。
海は地球平面説の証拠(しょうこ)だと魔女(まじょ)は叫(さけ)ぶ。
太古(たいこ)の昔、この世界を食べたのは象(ぞう)。


だれでもいいのに
だれもいないのに
だれかいないのに
だれもこたえない
ねえどこにいるの
蟻(あり)たち。


時を誤魔化(ごまか)した道化師(どうけし)。軽(かる)々しい嘘(うそ)偽(いつわ)りよ。
庇護(ひご)を求(もと)めカタコンベに逃(のが)れた。
彼らは這(は)いあがってくる。
足先から膝(ひざ)に腹(はら)に乳房(ちぶさ)から首筋(くびすじ)をなぞり
口を淫猥(いんわい)に触(ふ)れ眼球(がんきゅう)を通(とお)ってゆく。
なすがままに侵食(しんしょく)されよう。


抵抗(ていこう)せず、誇(ほこ)らかな石膏(せっこう)像(ぞう)は崩(くず)れた。
骸(むくろ)はかたかたと笑う。
欺瞞(ぎまん)をまとめ審判(しんぱん)の日をむかえる。
追及(ついきゅう)、弁護(べんご)、審理(しんり)、証明(しょうめい)、反証(はんしょう)、結審(けっしん)、遡及(そきゅう)。
自己(じこ)完結(かんけつ)できない酔(よ)いどれ達(たち)は死を歌い狂(くる)う。
ついにガベルは叩(たた)かれる。判決(はんけつ)の時。


だれも信じないし
信じてもいないと
いないのはだれか
だれとはわたしか
おまえはひとりだ
蟻(あり)たち。

増減する断片的で整合性のない物々

増減する断片的で整合性のない物々

  明確(めいかく)に音の減(へ)った世界
  ——————————
名前も知らない音楽を聴(き)いていた
ひとりでいる静寂(せいじゃく)に耐(た)えきれない
無機物(むきぶつ)に漂(ただよ)う魚にもうまくなれず
微妙(びみょう)な均衡(きんこう)だった▽かつての日々
許(ゆる)されず鰭(ひれ)は海の底へ消えてゆく
どちらかあるいはどれかもしくは
今この時よりしっくりくる雑音(ざつおん)を
選(えら)ぶだけなので想(おも)ってはいまいと
そう言い聞かせ△つまり海馬(かいば)とは
わたしの波であると自戒(じかい)をこめて
言い訳(わけ)を砂浜(すなはま)に付(ふ)しておいただけ


  欠けた時系列(じけいれつ)の情報網(じょうほうもう)
  ——————————
なぜ君(きみ)が飛びたかったのかわかる
今なら凸今なら凹今なら凸今なら
ここまで落ちていなかったわたし
いつか壊(こわ)れることは決まっていた
すべて何もかもどうしようもない
どうしていつも遅(おく)れるのだろうか
どうして間(ま)に合(あ)わないのだろうか
何一つこたえられなかった何一つ
翼(つばさ)の片割(かたわ)れなんてどこか知らない
暇(ひま)つぶしの後にふと訪(おとず)れる罪悪(ざいあく)感(かん)
空虚(うつろ)な気持(きも)ちでぱたぱたはためく


  償(つぐな)いのない架空(かくう)の手紙
  ——————————
こうなるのは最初(さいしょ)からわかってた
右目でしか泣けないわたしを厭(いと)う
空に夢を書くという苦しみの甘受(かんじゅ)
課題(かだい)もわからないままに提出(ていしゅつ)した
わたしというあなたのアナロジー
架(か)けられたシンパシーは崩落(ほうらく)する
空(むな)し手(で)によって握(にぎ)られた筆(ふで)は進み
逃(のが)れられない終末(しゅうまつ)によろけ向かう
手をとめ溜息(ためいき)を吐(は)き魂(たましい)は出てゆく
紙と向き合い擦(す)れきったインク跡(あと)
雲に隠(かく)れる光には届かないだろう


  妄想(もうそう)という言葉の魔法(まほう)
  ——————————
期待(きたい)し紺珠(かんじゅ)をつかんだはずなのに
藍色(あいいろ)が好きな理由(りゆう)を思い出せない
苦しい時にも歌える歌詞(かし)のない歌
枯(か)れてしまった言語(げんご)の韻律(いんりつ)と波長(はちょう)
歌えないわたしの心という不完全
理想主義者(アルケミスト)は今日も金を昇華(しょうか)する
笑えもしないのに笑顔(えがお)を繕(つくろ)う秘術(ひじゅつ)
代償(だいしょう)を忘れるなけっして忘れるな
夢見る幼子(おさなご)を拒(こば)み太陽を拒(こば)むのだ
上手(うま)く唱(とな)えられない忘失(ぼうしつ)した呪(のろ)い
それはきっとわたしにかけられた


  中途半端(ちゅうとはんぱ)な嘔吐(おうと)物(ぶつ)と虚(うろ)
  ——————————
見つめないと言い張(は)る見栄(みえ)を纏(まと)い
自意識(じいしき)の欠落(けつらく)と予兆(よちょう)のない戯言(たわごと)に
わたしは夜夜(よよ)踊(おど)らされているのだ
息(いき)を潜(ひそ)めて逃(に)げ終(お)わろうと懸命(けんめい)に
かの朝をむかえる焦燥(しょうそう)を感じつつ
やがて何もかも執着(しゅうちゃく)は消えてゆき
いつか言葉も選(えら)べなくなるのだと
大地にぽっかりと空(あ)いた穴を背(そむ)け
あれはわたしの吐(は)き出(だ)した嘘(うそ)かも
早く早く闇(やみ)に溶(と)ける舞台(ぶたい)の幕引(まくひ)き
騙(だま)され輝(かがや)く白い月の前でダンスを


  停止(ていし)する巨大(きょだい)な建造物(けんぞうぶつ)
  ——————————
建前(たてまえ)に隠(かく)された退廃(たいはい)—勃興(ぼっこう)と没落(ぼつらく)
どこへも行けない不可能(ふかのう)な巡礼(じゅんれい)で
不変(ふへん)を望(のぞ)めない石碑群(せきひぐん)を見上げる
ぬぐわれた懐(なつ)かしい感情(かんじょう)への嫌悪(けんお)
存在(そんざい)しえない聖地(せいち)への憧(あこが)れと嫉妬(しっと)
囲(かこ)まれた墓石群(ぼせきぐん)に怯(おび)え震(ふる)えながら
反抗(はんこう)ゆえ叶(かな)わぬ願(ねが)いそして祈(いの)りと
永(なが)く途切(とぎ)れない死する魂(たましい)への詠唱(えいしょう)
そんな都市(とし)はとうにかわっていて
最初(さいしょ)にわかっていてかわっていて
わかっていてかわるけどあんなに


  自動又連鎖的反芻思考(じどうまたれんさてきはんすうしこう)
  ——————————
今はもう思い返せない激(はげ)しい恨(うら)み
曖昧(あいまい)な思慕(しぼ)をひとつひとつ指差(ゆびさ)し
嘘(うそ)つき嘘(うそ)つき嘘(うそ)つきと言って回る
痛みのない悲涙(ひるい)をもとめ顔を覆(おお)う
あなたにとって愛情(あいじょう)は綺麗(きれい)なのか
あなたにとって愛情(あいじょう)は真実(しんじつ)なのか
ただ理由を忘れていくだけの毎日(まいにち)
わたしはどうしようもない愚者(ぐしゃ)だ
すこしの慰(なぐさ)めにもならないほどの
わずかな優(やさ)しさを胸(むね)に抱(いだ)き彷徨(さまよ)い
想(おも)ってはいけなかったのか忘れる


  墜落(ついらく)した星の記憶装置(きおくそうち)
  ——————————
昨日(きのう)のどこかに劣等感(れっとうかん)を感じる

明日(あす)のどこかに劣等感(れっとうかん)を感じる
だから絶望(ぜつぼう)の今日(きょう)に身をやつす
わたしは幸せから隠(かく)れる影法師(かげぼうし)

居場所(いばしょ)を失(うしな)い眠(ねむ)りつく人の心よ
あの夜空に浮(う)かぶ6等星に願(ねが)う

わがままでひとりよがりな物語
差しこむ光で目覚(めざ)めることなく
いつか消えるとわかっていても

終わりのない子守唄(こもりうた)を耳もとで
静(しず)かに休ませてくれますように


消息を知りたかった もういない誰か

消息を知りたかった もういない誰か

 そのような気もするのは、たぶんもう忘れてしまっているから。
 えぐり抜(ぬ)く痛(いた)みがただ唯一(ゆいいつ)の救(すく)いで、眼前(がんぜん)の人形(にんぎょう)は無意味(むいみ)であると知ってしまった。でも果たして、ほんとうにわかっていたのだろうか。忘却(ぼうきゃく)を知覚(ちかく)できないわたしは何に対し安らぎを感じ、求めればいいのだろう。
 いいえ、それすら空(むな)しいのかもしれない。
 だって、わたしはあなたを探した——もういないのに。
 大気(たいき)はわたしのすべてを逃(のが)さず抱擁(ほうよう)し、風は劣化(れっか)するわたしの表層(ひょうそう)をさらさらと砂のように崩(くず)し、天へとさらう。だからこの世に染(し)みつき、残(のこ)されたいっさいの感覚(かんかく)を過去(かこ)に遺(のこ)し、記憶(きおく)の収束(しゅうそく)、始点(してん)と終点(しゅうてん)を探しに出かけた。


 はじめは山とつまれた夢。
 人類(じんるい)は昔から眠るだけ寝て、起きる前に夢を捨(す)てる。それらは誰(だれ)にも片付(かたづ)けられず、ただ積(つ)もってゆく。
 わたしが夜、山頂(さんちょう)で寝(ね)ていないのに目を覚(さ)ますと、しんしんと雪がふっていた。肌(はだ)に触(ふ)れても寒くはない粉雪(こなゆき)だった。なぜならそれらは音であり、言葉であり、ビジョンだったから。
 良(よ)い夢(ゆめ)も悪夢(あくむ)もわけへだてなく、融雪(ゆうせつ)という自然の摂理(せつり)を知らない白雪は裸(はだか)のわたしにまとわりつき、仕立物屋の猿(さる)が泣(な)きながらわたしを採寸(さいすん)する。夢の印象(いんしょう)を人の体にあわせようと……ううん、消えてしまいたいから。
 なくなりたくてもなくなれない骸(むくろ)と化した夢たちは破壊(はかい)されようと意識(いしき)を求め、交(まじ)わろうとする。
 仕立物屋の猿(さる)は儚(はかな)さを失(うしな)った彼らを哀(あわ)れに思い、せめてもの救(すく)いとして、まとわせる意味をあたえようとしたのだろう。そうして山に浸透(しんとう)する雨水は川となり、海にそそがれ、やがて雲にあげられるように、循環(じゅんかん)をもとめ彷徨(ほうこう)せんと。
 わたしは彼らを鼻(はな)で深く吸(す)いこむ。
 うっすら桃(もも)の甘酸(あまず)っぱい香(かお)り。
 もしかすると彼らは海底(かいてい)にふりそそぐマリンスノーなのかもしれない。人々の無意識(むいしき)の死骸(しがい)や排泄物(はいせつぶつ)で、分解(ぶんかい)されようと漂(ただよ)っている。
 わたしは彼らを舌(した)にのせ、口に入(い)れる。
 うっすら柘榴(ざくろ)の甘酸(あまず)っぱい味。
 やがてわたしは暗闇(くらやみ)をほのかに照(て)らす雪山に、ゆっくりと沈(しず)む……。


 はじめは散(ち)らばった浜辺(はまべ)。
 おぼれたのかしら、たくさんの珊瑚(さんご)を吐瀉(としゃ)した。
 さざ波(なみ)で洗(あら)われる長い髪(かみ)、濡(ぬ)れた雪のように白いリンネルのワンピース、そしてスナガニと目をあわせるわたし。
 彼らの開(あ)けた小さな巣穴(すあな)に指(ゆび)を入(い)れ、鼓動(こどう)を感じる。スナガニはふしぎそうにわたしの手にのり、巣穴(すあな)にむかって腕(うで)を伝(つた)い、行ったり来たりして迷(まよ)う。
 そうか、わたしの腕(うえ)は臍帯(さいたい)、つまり今、三つの綱(つな)で海とつながっているのだ。
 海はなぜお母さんなのだろう。たくさんのスナガニを産(う)んだ時、彼女は苦しんだのだろうか。
 すると潮汐(ちょうせき)がわたしの体をたぐり、なすがまま転(ころ)がるように波にもまれ、砂と混(ま)ざりあう。
 たくさんの栄養(えいよう)をふくんだ水泡(みなわ)、ふくらみはじける七色の泡(あ)ぶく、歌い朗誦(ろうしょう)する海。降(ふ)りそそぐ光のカーテンが波長(はちょう)によらない音をきらきら輝(かがや)かせ、やがて深海(しんかい)に溶(と)け、息吹(いぶき)は波を起こし、遠く浜辺(はまべ)に打ち寄(よ)せ、散(ち)らばる言葉の源(みなもと)に耳をかたむける。
 これは誕生(たんじょう)の詩(うた)。そして太陽と月が波を引く時、ほとばしる血潮(ちしお)を詠(うた)う。
 息(いき)のできない場所から生(う)まれただなんて、お母さんは嘘(うそ)つきだ。吐(は)きだされた罪深いわたしはいつしか切り離(はな)され、ひとりで起きあがれない無力(むりょく)な赤子となった。
 浜辺(はまべ)のスナガニは心配そうに近(ちか)づくと、砂団子(すなだんご)をわたしの口に入(い)れた。
 ねえ、わたしおぼれたのかしら、たくさんの珊瑚(さんご)を吐瀉(としゃ)したの。


 はじめは寂寥(せきりょう)とした沼沢地(しょうたくち)。
 しがらむ水草、泥(どろ)だらけのワンピース姿(すがた)のわたしは名前の知らない母の歌を唄(うた)う。ベッドでうとうとする子どもの耳元で聞かれる古い子守唄(こもりうた)、ゆっくりと母音(ぼいん)の多いやわらかな声を発(はっ)し、青と緑に覆(おお)われた湿地(しっち)をわけもなく歩く。
 しばらくして老人の腰(こし)のように折れ曲がった白い枯木(こぼく)にすわる。
 夜の帷(とばり)がおりて、周囲(しゅうい)は濃(こ)い紫(むらさき)とチャコールへ変貌(へんぼう)してゆく。
 枯木(こぼく)の端(はし)っこには夜と同化(どうか)した鴉(からす)がこちらをじっと睨(にら)みつけていた。わたしの目玉をつつき、やわらかなお尻(しり)の肉を食べようと狙(ねら)っているのかしら。残(のこ)された骨(ほね)は巣(す)の一部にでもなるの?
 わたしは目を細(ほそ)め、手を胸(むね)に、唇(くちびる)は名前の知らない子守唄(こもりうた)を口ずさむ。
 くるぶしほどまで浸(つ)かった底なしの水面(みなも)に映(うつ)る、知らないわたしの青ざめた顔。枯木(こぼく)から飛びおりればきっとひとつになれるだろうけど、まだ子守唄(こもりうた)を歌い終(お)えていないから、ああ、もうちょっと待(ま)っていて!
 しびれを切らした青ざめた手は終(つい)の道へ案内(あんない)しようと水からぬらり出てきて、わたしの足首をむんずとつかむ。飢(う)えた鴉(からす)は獲物(えもの)を取られまいかと興奮(こうふん)しながらこちらにトントン近づく。それでもわたしの唇(くちびる)はかまわず知らない歌を唄(うた)う。


 わたしは夢見る時、あなたを忘れる。
 わたしは産(う)みだす時、あなたを忘れる。
 わたしは愛する時、あなたを忘れる。
 すべて忘れ壊(こわ)してしまった、いくつもの感情(かんじょう)であなたを形作(かたちづく)るから。
 音にして言葉にしたら、あとは捨(す)てにいくだけ。
 お願(ねが)い、聞かないで。
 これは忘れてしまったおとぎ話(ばな)し。
 書いたそばから忘れてゆく、むかしむかしのお話(はな)し。
 はじめは————。

ときのま

ときのま

——7:01A.M.
 でかける時間。
 どこに? 知らない。
 むりだ、うごけない。
 数日前、有料動画配信(ゆうりょうどうがはいしん)のお試(ため)し期間(きかん)を始めたのに、ぜんぜん引きとめてくれなかった。だけど、なにもかもいいんだ。もういい。あのぉスミマセン、そこで見おろす神さま、人生のお試(ため)し期間(きかん)はもういいんで、すこしのお金と終わらせるエネルギーをくれませんか。まだお酒も飲んじゃダメな歳(とし)だけれど、時間ならもうじゅうぶん使いつくしたんで。
こうして脳内時間(のうないじかん)だけはだらだらと過(す)ぎる。
 わたしを呼ぶ瑞香(※※※)ちゃんの声が聞こえる。学校、むかえにきたのかな、断(ことわ)らないと。
 地球外生命体(ちきゅうがいせいめいたい)の友人と交信(こうしん)するため、みだれたベッドの宇宙(うちゅう)で消息(しょうそく)を絶(た)つわたしの小型TMA(モノリス)を探す。昨夜(さくや)、あおむけでぼんやり眺(なが)めていた小型モノリスは、地球侵略(ちきゅうしんりゃく)をたくらむ宇宙人の睡魔(すいま)に襲(おそ)われ、どこかの星に落(お)っことしたみたい。でも、お布団(ふとん)にのまれてどこかにあるはず。わたしの頭を支(ささ)えた月の裏(うら)か……ない。どこにもない。
「うごけない」といいながらもベッドで息(いき)をあげてダンスするわたし。そしてあきらめ、直接(ちょくせつ)会えばいいやと横着(おうちゃく)な考えに移行(いこう)するわたし。
 いも虫のようにモゾモゾ這(は)い出る。床(ゆか)をモゾモゾ、モゾモゾ。
 すると瑞香(※※※)ちゃんはわたしを指(ゆび)でつまんで持ちあげ、手のひらにのせて、じっと見つめる。彼女はゲジゲジの虫とか平気(へいき)みたい。
「おはよう」と、瑞香(※※※)ちゃんは言う。
 いも虫がしゃべれないことに気づいたわたしは、サナギとなり妖精(ようせい)に羽化(うか)した。
「妖精(ようせい)は変態(メタモルフォーゼ)しないのよ」
「じゃあニンフね」と、わたしはちょっと恥(は)ずかしそうにこたえた。
 瑞香(※※※)ちゃんは笑顔(えがお)でうやうやしく会釈(えしゃく)し、なりたて新米(しんまい)ニンフの手をつかみ、カビ臭(くさ)い湿気(しけ)たコンクリート階段(かいだん)を軽(かる)々と駆(か)けおりる。
 古い浴室(よくしつ)のテカテカした水色タイルの地下鉄駅に出て無人改札(むじんかいさつ)をさっと抜(ぬ)け、発車(はっしゃ)ベルの鳴(な)り響(ひび)くホームに停車(ていしゃ)している黄色い電車へ飛び乗ると、待っていましたとばかりに電車は動きだす。だれもいない車内にイスはなく、がらんとして広く、整然(せいぜん)とならんだ吊(つ)り革(かわ)だけがリズムよく揺(ゆ)れ、「おいで、おいで」とわたしたちを誘(さそ)う。
「気をつけて。あの吊(つ)り革(かわ)は食虫植物(しょくちゅうしょくぶつ)よ。手をかけたら取れなくなる」
 瑞香(※※※)ちゃんはそう言ってニンフの肩(かた)をぎゅっとよせ、吊(つ)り革(かわ)を避(さ)けるよう壁際(まどぎわ)に立つ。彼女の首筋(くびすじ)から匂(にお)う、沈丁花(じんちょうげ)のうっとりするような甘い香り。
 窓(まど)の外は暗闇(くらやみ)に蛍光色(けいこうしょく)の閃光(せんこう)が前から後ろへ矢(や)のように流れている。
「こうして矢(や)をたくさん射(い)るのは、みんな狩りをしなければ生きていけないからよ」
 先住民(せんじゅうみん)は、それぞれ地下鉄各駅の間(あいだ)を縄張(なわば)りに、隠(かく)れて生活しているらしい。だけど最近(さいきん)は開拓民(かいたくみん)がやたら街の地下に穴をあけるから少数になってきているみたいだと瑞香(※※※)ちゃんはおしえてくれた。
 考えてもみると車内は明(あか)るいわけだし、地下を照(て)らす灯(あか)りは必要ない。車窓(しゃそう)だっていらない。駅はどこも同じで電光掲示板(でんこうけいじばん)や車内アナウンスがつぎの駅をつたえれば、地下先住民は人知れず穏(おだ)やかな日々を送れるのに。
「そうやってすべてを壁(かべ)で囲(かこ)い、実(み)を食べた人間は開(ひら)かれた目を背(そむ)けるのね」瑞香(※※※)ちゃんは窓(まど)にうつるニンフをまっすぐ見て言う。
 ニンフは顔を避(さ)け、隠(かく)れるように彼女の首に鼻(はな)をよせる。
「瑞香(※※※)ちゃん、なんの香水(こうすい)つけてるの? 花のいいにおい」

 定期券(ていきけん)はとっくに切れていて、ジョバンニのようにどこまでも行ける効力(こうりょく)なんてなかった。停車前(ていしゃまえ)に偶然(ぐうぜん)、朽(く)ちてボロボロになったから、たまたま車窓(しゃそう)から水がたくさん流れ、成長(せいちょう)した吊(つ)り革(かわ)はつた(・・)のように絡(から)まり、電車(でんしゃ)という意味(いみ)をうしなったから改札口(かいさつぐち)を通(とお)らずにすんだ。
 わたしたちはつたに覆(おお)われた西洋風(せいようふう)の東屋(あずまや)でアップルティーを楽しんでいた。
「ずっと遠くまで広がる、きれいなコスモス」と、瑞香(※※※)ちゃんはいたずらっぽく言う。
「わたしたちだけの秘密(ひみつ)の庭(にわ)ね」満足(まんぞく)げなニンフはティーカップに口をつける。「ここが宇宙(コスモス)か秋桜(コスモス)なのか、だれにもわからないもの」
——そして春か秋かも。——ふたりの思いは通(つう)じあい、くすくす笑う。
「わたしたち、転生(てんせい)したのかな」ニンフは言う。
「輪廻(りんね)、信じているの?」瑞香(※※※)ちゃんは聞く。
「ううん。わたしはわたしだけ」
「そっか……じゃあ不可知論者(ふかちろんじゃ)ね」
「わたしだって神さまにお願(ねが)いくらいする。すこしのお金と終(お)わらせるエネルギーをくれませんかって」
「でも死んだ人は神さまにお願(ねが)いをしないわ。沈黙(ちんもく)の国へ去(さ)るためにお金(かね)もいらない」
「じゃあなぜ悩(なや)む人に光を、苦しむ者に命をあたえたの?」すこし不満(ふまん)げなニンフ。
「わたしにプレアデスの鎖(くさり)は解(と)けない」と、瑞香(※※※)ちゃんはおだやかにつぶやく。「オリオンの紐(ひも)も」
「それなら瑞香(※※※)ちゃんとどこまでも一緒(いっしょ)に行く! 沈黙(ちんもく)の国だって!」
「見て。はじまる」瑞香(※※※)ちゃんはすっくと立ちあがり、目を輝(かがや)かせ、前方を指(ゆび)さす。
 宝石のような星々はいっせいに流れ、金色の花びらは散(ち)りぢりに舞(ま)っていく。
 ああ、ふたりだけのコスモス、みんな、みんな、還(かえ)ってしまう。
 はじまりの時を恐(おそ)れるニンフはあわてて瑞香(※※※)ちゃんの手をとろうと腕(うで)をのばす。
 でもすでにいなかった。間(ま)に合(あ)わなかった。だから、だから、わたしは時間を憎(にく)んだ。
「ただあなたの字(あざな)になれば、それでよかったのに!」
 ニンフはそう叫(さけ)び、ひとりぼっちで泣(な)きじゃくる。
 
 目をひらき、いつもの天井(てんじょう)が見えた。
 すうっと涙がほおをつたう。
 涙の温度は絶対(ぜったい)に言わない。おしえれば、もう会えなくなるから。ほんとうの無機物(むきぶつ)になる前に、後悔(こうかい)できそうなものを探しにゆく。

「もしももうそも、もうじゅうぶんだよ」
 ニンフは鼻(はな)で笑う。
 どこかで時を知らせようとモノリスは震(ふる)え鳴(な)っていた。

——7:00A.M.

ゲネ——GENE

ゲネ——GENE

  わたしはこの名を捨(す)てたかった
  
きみはその名から逃(に)げたかった

  ほどけた紐先(ひもさき)にのびる
  手すりのない二重(にじゅう)螺旋(らせん)階段(かいだん)を
  それぞれ駆(か)けあがる男女

 誰(だれ)の目にも投影(とうえい)されない不可視(ふかし)の関係(かんけい)。交(まじ)わらないのにどうして目指(めざ)せるのだろう。どこへ行こうとわたしたちは変わらなかったはず。行くべき場所や帰るべき家はない。しかし右手にしっかりと見えない天への鍵をにぎっている。失(うしな)われた楽園できみはわたしたちはひとりなのだと教えてくれた。きみのやわらかな手はわたしの顔にそえられ、耳もとで吐息(といき)に近い声を吹(ふ)く。
 出逢(であ)った時はおたがい、かわいた涙(なみだ)を掬(すく)う方法すら知らない幼子(おさなご)のような精神(せいしん)でも、やがては目をつむり、額(ひたい)を、頬(ほお)を、鼻(はな)を、唇(くちびる)を、首を、手を、魂(たましい)すらも縫(ぬ)いあわせ、ドレスにできる関係(かんけい)まで成長(せいちょう)した。つぎはぎだらけのボロ切(き)れを身にまとい、深い森で開(ひら)かれるささやかな舞踏会(ぶとうかい)をわたしたちの始まりにしたのは遠い昔の話。幸福(こうふく)は口にする作為(さくい)ではなく、感じあう体験(たいけん)だと確信(かくしん)していたのは嘘(うそ)ではなかった。

  アンティークドレスの裾(すそ)をつまみ
  逃げるようにして去(さ)る女

 鏡映反転(きょうえいはんてん)は見え方(かた)なのだという。つまりきみとわたし、鏡(かがみ)を境(さかい)に溶(と)けあうことのない、ひとりとひとりとしての実相(じっそう)と鏡像(きょうぞう)。いつからか自然(しぜん)に……そう、天井(てんじょう)に描(えが)かれた雲ひとつない青空のように純粋(じゅんすい)で屈託(くったく)なく、わたしたちはふたりでいるのをやめるべきだと思った。ひとりとひとりではなく、ただひとりだけで歩(あゆ)む必要があるのだと。ふたりの愛にひとつの目的があるとしても。
 そしてきみは今、時間に追(お)い立てられたシンデレラのように上へ上へと急ぎのぼる。終(お)わらない反転(はんてん)からの逃避行(とうひこう)、ミノスの迷宮(めいきゅう)に果(は)たして出口はあるのだろうか。きみにとって透明(とうめい)なガラスの靴(くつ)は避(さ)けられない運命(うんめい)、永遠性(えいえんせい)から切り離(はな)された過去(かこ)に落とし、時の使者(ししゃ)に見つからないよう願(ねが)っているのだろう。唯一(ゆいいつ)解(と)けなかった魔法(まほう)の靴(くつ)を。あらゆる束縛(そくばく)への恐(おそ)れ、あるいは深層(しんそう)の夢へ密航(みっこう)を遂(と)げるためだとでも? それゆえきみはクロッシェ帽(ぼう)で顔を隠(かく)す。

  ふたつの階段(かいだん)を結(むす)び合わせる
  数々の巨大な白い梁(はり)を見あげる男

 それらはねじれた梯子(はしご)のようにどこまでも続く。すると無数(むすう)の写真(しゃしん)がふってきた。印画紙(いんがし)は地上で輪舞(りんぶ)する群衆(ぐんしゅう)の天恵(てんけい)また糧(かて)となり、啓発(けいはつ)を受けた多くのハエが彼らの周囲(しゅうい)を飛びまわる。過ぎ去った日々、気休めほどの影像(えいぞう)をとらえたわたしたちの瞬間(しゅんかん)を人々は飽(あ)きることなく貪(むさぼ)り、消化(しょうか)してゆく。
 受容(じゅよう)、羨望(せんぼう)、嘲笑(ちょうしょう)、嫉妬(しっと)、嫌悪(けんお)、裁定(さいてい)、忘却(ぼうきゃく)の吐瀉物(としゃぶつ)にハエは卵(たまご)を産(う)みつけ、欠陥(けっかん)ある情報(じょうほう)としてうじ(・・)がわく。ゆえにわたしはこの名が嫌(きら)いだ。きみもその名を嫌(きら)う。わたしたちは禁忌(きんき)を共有(きょうゆう)し、自我(じが)を絶(た)えず侵(おか)され蹂躙(じゅうりん)された。さあ手を出し、わたしたちの恥部(ちぶ)を喰(く)らえ、喰(く)い続(つづ)けよ! そして吐(は)くがいい。それがお前たちに許(ゆる)された自由なのだから。わたしたちは絶(た)えず食べられ、食べつくされ、すべてなにもかも吐(は)きだされ、ハエがまとわりつく。ああ、もはや残された欺瞞(ぎまん)を手放(てばな)せはしない。

  丸い梁(はり)にそれぞれ彫(ほ)られた
  理解(りかい)できない文字を口にする女

 その四つの文字がわたしには大きな意味(いみ)をもつように思えて、出来心(できごころ)のように反芻(はんすう)せず言葉にしてしまった。わたしが望(のぞ)んだからきみは応(おう)じた。告白(こくはく)したのはわたしで、きみはそれに囚(とら)われるであろうと悟(さと)りつつも、承諾(しょうだく)し、共に誓(ちか)った。わたしがわたしのためにつむぎ続けるきみとは、そういう女だ。菫(すみれ)がやがて枯(か)れようとも、わたしたちに訪(おとず)れる凋落(ちょうらく)をまったく恐(おそ)れずに!
 対(つい)の文字は多くの組み合わせで配列(はいれつ)されるように、わたしたちにも多くの像(かたち)があるのだと信じていた。欠(か)けたものを補(おぎな)い、一体(いったい)になれるはずだと。それゆえ透明(とうめい)な湖(みずうみ)の底(そこ)にある泥(どろ)をかき混(ま)ぜ沼地(ぬまち)となっても、照(て)りつける太陽を引きずりおろし、星ひとつない闇夜(やみよ)となっても、わたしたちは破綻(はたん)を克服(こくふく)し、複製(ふくせい)のため梁(はり)に傷(きず)をつける。

  終(お)わりを告(つ)げる時計の音にざわめく群衆(ぐんしゅう)
  女をひたすら追(お)いかける男

 カリヨンのように荘厳(そうごん)な合唱(がっしょう)が鳴(な)り響(ひび)く。恐怖(きょうふ)に取りつかれた人々は助けを求め、地上を捨(す)て天へとのびる階段(かいだん)に雪崩(なだれ)のごとく押(お)し寄(よ)せる。吐瀉物(としゃぶつ)は汚濁(おだく)した海(うみ)となり、彼らを飲みこむ。荒(あ)れた海は階段(かいだん)と梁(はり)にぶつかり、波飛沫(なみしぶき)をあげ破壊(はかい)してゆく。わたしたちの足もとはぐらりとゆれ、きみの細(ほそ)い足は階段(かいだん)のふちによろめきむかう。
 カルバリで髑髏(どくろ)は堕(お)ちろ、堕(お)ちてしまえと狂(くる)ったように叫(さけ)ぶ。女はちらりとこちらを見て笑い、手で顔を覆(おお)うと迷(まよ)わず身を投(な)げた。帽子(ぼうし)は飛翔(ひしょう)する白い鳩(はと)となり、わたしは天を強く仰(あお)ぐ。天使(てんし)に付(ふ)され、それより劣(おと)るわたしたちに与(あた)えられなかった翼(つばさ)をどうか背中(せなか)に! わたしはきみを追(お)いかけねばならない。きみにたどりつかねばならないのだ! きみはあくまでわたしの名から逃(のが)れるのだろうが、それでもわたしは鍵(かぎ)を放(ほお)り投(な)げ、きみに追(お)いつく。

  アポトーシスにむかう階段(かいだん)と梁(はり)
  中空(ちゅうくう)を舞(ま)う男女

 はじめの天と地、海なき新しい天と地、構造(こうぞう)の異(こと)なる世界よ。わたしはダイダロスの翼(つばさ)で飛ぶ。天井画(てんじょうが)の高貴(こうき)な空は裂(さ)け、階段(かいだん)とそれをつなぐ白い梁(はり)を崩落(ほうらく)させた。地上では死の渦巻(うずま)く闇がすべてを無(む)へと帰(かえ)す。わたしは破(やぶ)れた空にたずねる。きみは虚構(きょこう)へと昇天(しょうてん)していたのかと。そこまでしてわたしの名から逃(のが)れようと懸命(けんめい)に。すると、たくさんの雨が下からふる(・・・・・)。あたたかな雨(あま)つぶはわたしに違(ちが)うとこたえた。では、わたしたちは複製(ふくせい)のため、幾十億(いくじゅうおく)体(たい)もの偶像(ぐうぞう)を生(う)みだすために対価(たいか)として、結合(けつごう)における刹那(せつな)の快楽(かいらく)と苦痛(くつう)を共(とも)に分(わ)かちあい、消えてゆくのか。
 雨粒(あまつぶ)が輝(かがや)きはじめる。それは空の裂(さ)け目から差(さ)しこむ栄光(えいこう)の反映(はんえい)だった。わたしの翼(つばさ)の蝋(ろう)は溶(と)けてゆく。そう、傲慢(ごうまん)なイカロスは海に落ちたのだ。わたしはむかってきた青紫(あおむらさき)の雲(くも)へ飛びこみ、かきわけるように進(すす)む。役割(やくわり)を全(まっと)うした翼(つばさ)、まとわりつく虚飾(きょしょく)、あらゆる記憶(きおく)を脱(ぬ)ぎ捨(す)て、なにもなく、なにものでもない姿(すがた)で雨の源(みなもと)を求(もと)め続(つづ)ける。ようやくわたしはこの名から解放(かいほう)されたのだ。雲をつき抜(ぬ)けた先に見えたのは光芒(こうぼう)に照(て)らされたきみだけだった。わたしたちはこれからもこの世(よ)という舞台(ぶたい)で観客(かんきゃく)を前に光をあび、歌(うた)い、踊(おど)り、語(かた)り、重(かさ)なり、別(わか)れ、逃(のが)れ、追(お)いかけ、そして終幕(しゅうまく)まで演(えん)じ続(つづ)ける。
 さあ、きみと新しい生命(いのち)を書きこむ稽古(ゲネ)を終(お)えよう。

  男は女の手を
  女は男の手を
  ————暗転(あんてん)

かの器を夢む

かの器を夢む

人と仮定(かてい)された器(うつわ)に
失(うしな)い忘れた感情(かんじょう)を見つけよう
不確(ふたし)かな行為(こうい)を繰(く)り返(かえ)し
傷(きず)つき ひび割(わ)れた器(うつわ)
絶望(ぜつぼう)の縁(ふち)からあふれこぼるる雫(しずく)は
魂(たましい)の質量(しつりょう)を減(へ)らす泪(なみだ)とし


嘘(うそ)で散(ち)った現(うつつ)の砕片(さいへん)
変(か)わらぬ結末(けつまつ)を幾百(いくひゃく)もばら(・・)撒(ま)く

無形(むけい)の真実(しんじつ)は
道化(どうけ)の手を取り
その身を侵(おか)しあう

つながり 関係(かんけい)し 交(ま)じり
息(いき)ある土塊(ちり)となった
もはや真実(しんじつ)と呼(よ)べぬほど
不純物(ふじゅんぶつ)そのもの
それでも愛されるのだろうか
わたしのはらんだ あの欲(よく)は


表裏(ひょうり)なきテラコッタをのぞき
底に残された命の符号(ふごう)を探す
夢という言葉
朝という言葉
歌という言葉
光という言葉


風立つ草原で器(うつわ)に口づけし
腕(うで)広げ 漆黒(しっこく)の蝶(ちょう)と舞(ま)い踊(おど)り
抱(いだ)けると信じていた
青空に笑いかけ
無私(むし)の手をかかげる
あおむけにふわりと倒(たお)れ
まぶた閉じ
それでも救(すく)いを求め
どこまでも打(う)ち沈(しず)む こゝろ
なにもかもわからぬまま
深く 深く 暮夜(ぼや)に祈(いの)ろう


西風は数多(あまた)の墓標(ぼひょう)を旅し
ヒヤシンスの香りと
眠る器(うつわ)たちのささめきを届(とど)けた
大地の呻(うめ)きに耳をかたむける
伝わらなかった 挨拶(あいさつ)を
聞こえなかった 返事(へんじ)を
日々とらわれて なぜと
どうか解(と)き放(はな)してほしい


恩寵(おんちょう)を知らず摧破(さいは)した器(うつわ)たちよ
いつかひとつになるのだ
それでも残(のこ)るのだろうか
わたしの生(う)んだ あの罪(つみ)は

行路

行路

 鷹(たか)は蒼空(そうくう)に新(あら)たな流線(りゅうせん)を思うままに引く。
 たむける花束(はなたば)を手に歩(あゆ)んだ道を消す、ただひとりのわたし。
 遠く、丘(おか)の上には動かすことのできないほど大きな石が見える。おそらく古代(こだい)の人々が神秘(しんぴ)の方法(ほうほう)で削(けず)りだしたのであろう神殿(しんでん)。そこには捨(す)てきれず、引き剥(は)がせない記憶(きおく)が静(しず)かに眠っている。

 草原(そうげん)に吹(ふ)きおろす冷たい風はわたしの影(かげ)を波(なみ)のように揺(ゆ)らす。しかし神殿(しんでん)にむかいならぶイトスギたちの時は止まっていた。わたしはまだ腐敗(ふはい)してゆく時間、生から死を遂(と)げる流れの不可逆的(ふかぎゃくてき)な決(き)め事(ごと)に縛(しば)られているのだ。それゆえ頬(ほほ)や唇(くちびる)にぱちぱちとあたっては消えてゆく光の粒(つぶ)を感じたり、知らない花の香(かお)りが青草(あおくさ)の甘(あま)い朝露(あさつゆ)と混(ま)じりあい、呼吸(こきゅう)するたび鼻腔(びこう)をくすぐり、至福(しふく)や恋慕(れんぼ)に近い陶酔(とうすい)を楽しむ無邪気(むじゃき)な肉体(にくたい)に多少(たしょう)の愛着(あいちゃく)を覚(おぼ)えてしまう。すると消したはずの道が現(あらわ)れ、神殿(しんでん)は靄(もや)に覆(おお)われ、イトスギは多くの手となり、わたしにむかって伸(の)び、絡(から)みつく。
 わたしはひとつ忘れ、代わりに免罪符(めんざいふ)をひとつ得(え)る。そして彼らはわたしを許(ゆる)す。こうしてゆっくりと一歩ずつ、歩いては道を消し、消しては道を歩く。定(さだ)められた手順(てじゅん)を踏(ふ)むと、やがて影(かげ)の波(なみ)は止(や)んだ。

 足元(あしもと)に赤瓦(あかがわら)の葺(ふ)いた屋根(やね)に石造(いしづく)りの家が建(た)っていた。かがんで窓から中をのぞくと部屋(へや)にはドールハウスのようなミニチュア家具(かぐ)がならぶ。一番奥のマントルピースのそばに揺(ゆ)りイス、本とマグを乗せた丸いサイドテーブル、壁(かべ)には古い静物画(せいぶつが)がいくつもかけられ、動物の置物(おきもの)やティーセットを飾(かざ)る磨(みが)かれたマホガニーの飾(かざ)り棚(だな)まで整然(せいぜん)と配置(はいち)されている。わたしは目を輝(かがや)かせ、あちらこちらに視線(しせん)を移(うつ)す。胸(むね)にときめく暖炉(だんろ)の炎が灯(とも)りはじめ、食事(しょくじ)の準備(じゅんび)をすませ、家族の帰りを待つ面影(おもかげ)を重(かさ)ねる。食卓机(しょくたくづくえ)にはレースのプレースマット、白磁(はくじ)の皿(さら)と銀製(ぎんせい)カトラリー、中央に立つ三灯(さんとう)の真鍮(しんちゅう)燭台(しょくだい)は質素(しっそ)なテーブルフラワーを照(て)らす。背後(はいご)の道は再び現(あらわ)れ、神殿(しんでん)は霧(きり)に隠(かく)れ、イトスギは愛する人の形となり、わたしの首を絞(し)めた。
 わたしはまたひとつを忘れ、かわりに免罪符(めんざいふ)をひとつ得(え)る。そして彼はわたしを許(ゆる)す。こうしてゆっくりと一歩ずつ、歩いては道を消し、消しては道を歩く。定(さだ)められた手順(てじゅん)を踏(ふ)んだ時、家は燃えて灰(はい)となった。

 天蓋(てんがい)つきのベッドでマネキンはひざまずいて祈(いの)る。今日(きょう)の感謝(かんしゃ)と明日(あす)の平安の願(ねが)いは息吹(いぶき)となり、天へ捧(ささ)げられた。そして涙(なみだ)をこぼす。ネグリジェ姿(すがた)のマネキンは赦(ゆる)しを請(こ)うている。過去(かこ)の過(あやま)ち、内在(ないざい)する罪(つみ)の法則(ほうそく)に苦悩(くのう)し、みじめな自分を救(すく)ってもらうため、せめて一夜(ひとよ)の眠りをわけ与(あた)えてもらおうと。わたしは悲嘆(ひたん)に暮(く)れ、悔悛(かいしゅん)する敬虔(けいけん)なマネキンを慰(なぐさ)めるために近(ちか)づく。すると良心(りょうしん)は訴(うった)え弁明(べんめい)しあい、善悪(ぜんあく)の天秤(てんびん)は呵責(かしゃく)でかたむき、無性(むしょう)な不安(ふあん)に襲(おそ)われる。ベッドの周囲(しゅうい)は闇(やみ)にのまれ、マネキンは顔をあげ、なにかに気づき振(ふ)り返(かえ)ると、花束(はなたば)を持つネグリジェ姿(すがた)の少女がふるえていた。マネキンはためらうことなく少女のそばに寄(よ)り、抱(だ)きしめ、長い黒髪(くろかみ)を耳元(みみもと)からうなじに優(やさ)しく撫(な)で、キスをする。呼吸(こきゅう)のリズムはだんだんと一致(いっち)し、ほどけていた魂(たましい)がひとつになるよう結(むす)ばれ、安堵(あんど)そして喜悦(きえつ)があなたからわたし、わたしからあなたへと駆(か)け巡(めぐ)り、全身(ぜんしん)は心地(ここち)よく満(み)たされてゆく。朦朧(もうろう)としたわたしは天蓋(てんがい)つきのベッドで横になろうと足をむける。背後(はいご)の道は再生し、神殿(しんでん)は霞(かす)み、イトスギはわたしの胸(むね)を締(し)めつけた。
 わたしはまたひとつを忘れ、かわりに免罪符(めんざいふ)をひとつ得(え)る。そして彼はわたしを許(ゆる)す。こうしてゆっくりと一歩ずつ、歩いては道を消し、消しては道を歩く。定(さだ)められた手順(てじゅん)を踏(ふ)んだ時、天蓋(てんがい)つきベッドと寝(ね)ているマネキンは夜に落ちていった。

 くるぶしほどの高さの透明(とうめい)な水に足を入れたわたしを泉は責(せ)める。静寂(せいじゃく)を破(やぶ)り、美しく投影(とうえい)していた神殿(しんでん)を汚(けが)してしまったから。わたしの立たせた水紋(すいもん)はさざなみとなり、水没(すいぼつ)した街(まち)に争(あらそ)いを起(お)こす。泉は膝(ひざ)の高さに——罵(ののし)り、傷(きず)つけあう音が聞こえる——腰(こし)までくるとカラスが平和(へいわ)を鳴(な)き、肩(かた)に、そして頭の先まで水に浸(つ)かると再び静(しず)かになった。水底(みずぞこ)で青草(あおくさ)がゆらゆらと腰(こし)をふり、わたしを誘(さそ)う。人が呪(のろ)われた地に足をつけ歩き続(つづ)けるのはなんと重労働(じゅうろうどう)なのだろう。胎動(たいどう)を起(お)こしたあの時から、感覚(かんかく)に目覚(かんかく)めたあの時から、旅の準備(じゅんび)をし、やがて、外界(がいかい)でもがきあがいて立ちあがるのだ。
「そうよ……だから」と、青草たちは言う。「楽になりなさい」
 乳(ちち)を授(さず)けようと母は揺籃(ようらん)に横(よこ)たわる赤子(あかご)を抱(だ)き寄(よ)せる。むかしむかし、人は善悪(ぜんあく)を知る前、神の胸元(むなもと)で眠(ねむ)る赤子(あかご)だった。誰(だれ)もいない地上はどこまでも穏(おだ)やかで、どこまでも静(しず)かな揺(ゆ)り籠(かご)ように、そこで人は満足(まんぞく)してさえいればよかった。あの時なぜ少(すこ)しばかり背(せ)伸(の)びしたのだろう。子のままでありさえすれば、わたしは今ごろ。しかし禁忌(きんき)の柵(さく)をよじ登(のぼ)り、刹那(せつな)の自由を追(お)い求(もと)め、泣(な)きながら、あてのない旅を始(はじ)めてしまった。
「そうよ……だから」と、青草たちは言う。「楽になりなさい」
 わたしは力を抜(ぬ)き、ふくんでいた息(いき)を泉にゆだね、肺(はい)は水で満(み)たされてゆく。すると消したはずの道は示(しめ)され、神殿(しんでん)はゆがみ、イトスギは一本の紐(ひも)となり、わたしにむかって伸(の)び、臍(へそ)につながろうとした。
 わたしはまたひとつを忘れ、かわりに免罪符(めんざいふ)をひとつ得(え)る。そして彼はわたしを許(ゆる)す。こうしてゆっくりと一歩ずつ、歩いては道を消し、消しては道を歩く。定(さだ)められた手順(てじゅん)を踏(ふ)んだ時、泉は干上(ひあ)がっていた。

 大理石(だいりせき)の階段(かいだん)はのぼるごとに崩(くず)れ、神殿(しんでん)を前にした時、背後(はいご)は光でも闇(やみ)でもない、遍(あまね)く儚(む)となった。わたしは入(い)り口(ぐち)中央(ちゅうおう)の台座(だいざ)に花束(はなたば)を供(そな)える。すると巨大(きょだい)な扉(とびら)は音を立てずに開(ひら)き、むこうでは許(ゆる)された鷹(たか)が蒼空(そうくう)で思うまま流線(りゅうせん)を描(えが)いていた。
 自由の選択(せんたく)に揺(ゆ)らぐ、ただひとりのわたし。それでもみずからの意志(いし)で選(えら)び、決(き)まった道を歩(ある)き続(つづ)ける。なにも残(のこ)さず、なにも叶(かな)わないと知っていても。
 孤児(こじ)たちは今日も天に抗(あらが)い、手を伸(の)ばす。
 ゆえに残(のこ)りの手順(てじゅん)は遅々(ちち)たる歩(あゆ)みとなるだろう。
 しかしゆける。
 戻(もど)れない夢(む)へ。
 これが最後(さいご)なのだと。
 やがて、扉(とびら)は無(む)となった。

累卵之夢

 累卵之夢【るいらんのむ】は星空文庫さんにてpublic domainとなっている、あさい寝床さん(https://slib.net/a/26216/)の作品集を独自解釈し改変を加えた詩や散文です。
 散りばめられた言葉の観念や反復された語句を掘り起こし、意味を付しては削りを繰り返し、時を逆転させ、作品を構築しました。
 今にも崩落しそうな自己と他者の混在した思考集積また自家撞着、悶え、痛み……。これら「わたし」にとって「夢」であり、「あなた」にとって「儚」である形象は「無」ではないかと思索し、題を『累卵之夢』としました。

改変作品一覧(同順)
『確立されない詩。』,『どちらとどちら。』,『次。』,『どれでもいい。』,『増減する断片的で整合性のない物々。』,『空。』,『時間。』,『遣取。』,『逆説。』,『許。』

表紙絵『累卵之ム』

累卵之夢

それをつかみ、そしてかさねる——。

  • 自由詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-28

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 確立された詩
  2. あちらこちら
  3. 注連縄
  4. 予言的6行詩
  5. 増減する断片的で整合性のない物々
  6. 消息を知りたかった もういない誰か
  7. ときのま
  8. ゲネ——GENE
  9. かの器を夢む
  10. 行路