「シャルティア」

 白亜の西洋館
 噴き上げせぐる泉のオブジェ
 白い、白い。
 等しく陽に照らされて
 をとめは庭に佇む

 フレア薫る白いワンピイス
 胸の下でゆるやかにくびれて
 ふあふあと足先まで広がる
 可憐なむすめシャルティア

 おまえの前には黄色な花が立っている
 おまえの後ろには黒い裏山
 振り向かなくっていい
 彼方(あちら)へお行き
 その白いワンピイスが
 肉体ごと溶けそうなお庭の中へ

 可憐なむすめシャルティア
 摘んだ木苺を大切に籠に入れて
 こけないように
 ゆっくり
 ゆっくり
 向こうへお行き
 此処等の菜の花は
 ワンピイスの刺繡になろう
 やわらかな草の針で留めたらいい
 可憐なむすめシャルティア
 あの暖かい日の場所へお行き
 こけたら送り狼に連れ戻されよう
 こけないで
 こけないで
 此方を見ないで
 シャルティア、さあお行き
 お花畑で遊びなさい
 春の陽炎に抱かれて
 のぼせるくらいぼうっとしたらいい
 シャルティア、シャルティア、
 もう帰って来てはいけないよ
 彼方でお友達とたんと遊ぶがいい
 可憐ないぢらしいむすめよ


 さようなら

「シャルティア」

「シャルティア」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-28

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