「病」

 くしゃくしゃのまっさらな千代紙
 誰のだろう
 誰のだろう
 小さくて白い何かの破片
 ぺらぺらしてて いぢらしい
 直ぐ風に押しつぶされそうになるのがいぢらしい
 だからくしゃくしゃになったのだろう
 それでも風は容赦無い
 一滴の真実の慈愛でもくれたなら!

 くしゃくしゃのまっさらな千代紙
 このままだと唾棄されて捨てられちゃう
 可哀想な千代紙
 今、鶴に化かしてあげよう
 白い鶴になって
 弧を描いて飛んでゆけ
 遠く遠くの雪山に
 紫陽花のあおむらさきの鱗輝くまで
 静かに眠っているがいい
 今では兎も夢に遊むで
 暖かな洞穴で寝息を唄う
 鶴よどうか結んでおくれ
 雪の町に住む私のうつくしい姉さまと
 私の惨めな息の根を
 姉さま、姉さま、私だけのうつくしいお姉さま。
 きっと雨の慈しみの刻に参ります
 あなたの治める霊山に
 踏み入りますことお許しください
 麗しい花の鱗の衣召して
 ほのかなその両袖で
 ずっと私を隠してください
 あなたの御姿に縋らせたまえ
 私のうつくしいお姉さま
 もう鶴を幾にん作ったか分らないのです
 くしゃくしゃの千代紙はたくさん生れるから
 お姉さま、お姉さま
 私を抱き締めてください。

「病」

「病」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-28

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