「見えない小鳥」
見えない小鳥をこごむで撫でる
ぴい、とも
ちい、とも
ちゅちゅちゅとも鳴かないで
此方にずっと話しかけて居る
「 ねえねえ…
ねえねえ… 」
見えない小鳥は何処に居る?
この、灰の山の上に居る
このお山は
着物を引ッ裂いて
確かに両手で引ッ裂いて
マッチを摺って
この手で摺って
そうして着物に放り込んだのだ
袴も帯も扱きもかなぐり捨てて
自ら生んだ炎にくべた
この手で生んだ火で燃やした
山もすぐに風に消される
なのに風は雨だけを呼んで来て
自分は全く動かない
雨の糸ばかりが
見えない露を縫いつけて
針も無いのに
何も消えはしなかった
灰の山に雨の積る
重なった雫は綻びを埋める水溜りとなりて
傷をたちまち泉に変える
淵に変える
汀に変える
山には炎の名残と炎の赤子が入り混じり
その両方に一つずつ足をおろして
すっくと立つ
見えない小鳥は撫でられて
話して居る
呼んで居る
問うて居る
「 ねえねえ…
ねえねえ… 」
小鳥の囀りは聞えない
それでも
それでも
………
「見えない小鳥」