「つゆの空」
いいなづけの居たる身のやるせなさよ
そして、果敢無さよ
誰もかれも鉛の弾をギッシリ隠し持ってる
でも事実をひた否んで
顔ばかり笑って
指先はあらぬ方向
足は急いて
咽は酷使され
嫌だ…心臓が見当らない
あなたには心臓があった
恐れか高揚か法悦か分らぬあの轟きは
にわか雨の如く肌に沁みた
わたしの鼓動の意味を知った
目が見えるのを
耳が聞えるのを
指が動くことの
わたしの肉体の何故はたらくかを知った
互いに動けぬ宿命の中で
あなたは業火に焼かれていた
わたしも氷をたくさん浴びた
ふたりが清水満ちる空で会えたなら
情けの涙が雨と化けて降るでしょう
ほら、あじさいの輝く…
「つゆの空」