「つゆの空」

 いいなづけの居たる身のやるせなさよ
 そして、果敢無さよ
 誰もかれも鉛の弾をギッシリ隠し持ってる
 でも事実をひた否んで
 顔ばかり笑って
 指先はあらぬ方向
 足は急いて
 咽は酷使され
 嫌だ…心臓が見当らない
 あなたには心臓があった
 恐れか高揚か法悦か分らぬあの轟きは
 にわか雨の如く肌に沁みた
 わたしの鼓動の意味を知った
 目が見えるのを
 耳が聞えるのを
 指が動くことの
 わたしの肉体の何故はたらくかを知った
 互いに動けぬ宿命の中で
 あなたは業火に焼かれていた
 わたしも氷をたくさん浴びた
 ふたりが清水満ちる空で会えたなら
 情けの涙が雨と化けて降るでしょう
 ほら、あじさいの輝く…

「つゆの空」

「つゆの空」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-24

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