「暖かい午後」
冷えた心が
急激に熱をかぶって
かなしい雪が流れていく
うつくしい翼のよろいがほつれていく
ほつれる心
ほつれる心
白糸銀糸の蜘蛛の糸
震える水滴がぽとりと落ちた
雪の地面に小さな窪みのひずみを穿ち
釣糸でも垂れて来そうな冬の空
真冬の昼の空
太陽に肌は火照り
頭と心ばかりがカッカして
胸は熱く 足は冷たい
せめて逆しまなら良いものをと揶揄する左手
右手は何も言わずにひとりで唄って居る
その甘ったるい調子外れの高音は
真冬の昼の子守うたにはなるだろう
ほら、御覧。
土の上によろいの破片が眠ってる
羽と
鱗が
頭を寄せて抱きあって眠ってる…
向かうより幼い子どもが
傷だらけの身体に花の毛布を抱えてやって来た
赤い足痕足早にやって来た
ふたりを凍え死なせたくないのであろう
雲にかぶる月のようにふたりは眠る
「暖かい午後」