「暖かい午後」

 冷えた心が
 急激に熱をかぶって
 かなしい雪が流れていく
 うつくしい翼のよろいがほつれていく
 ほつれる心
 ほつれる心
 白糸銀糸の蜘蛛の糸
 震える水滴がぽとりと落ちた
 雪の地面に小さな窪みのひずみを穿ち
 釣糸でも垂れて来そうな冬の空
 真冬の昼の空
 太陽に肌は火照り
 頭と心ばかりがカッカして
 胸は熱く 足は冷たい
 せめて逆しまなら良いものをと揶揄する左手
 右手は何も言わずにひとりで唄って居る
 その甘ったるい調子外れの高音は
 真冬の昼の子守うたにはなるだろう
 ほら、御覧。
 土の上によろいの破片が眠ってる
 羽と
 鱗が
 頭を寄せて抱きあって眠ってる…
 向かうより幼い子どもが
 傷だらけの身体に花の毛布を抱えてやって来た
 赤い足痕足早にやって来た
 ふたりを凍え死なせたくないのであろう
 雲にかぶる月のようにふたりは眠る

「暖かい午後」

「暖かい午後」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-22

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