「雪の降りる場所」

 賑やかな図書館
 絵本の読みきかせや
 紙芝居
 高い天井
 日光の透明な温もり
 頬をゆるます親、子供
 されど物語は書庫に眠る
 地下…階。
 地下…階。
 黒き扉の狭間より
 一筋漏れる色の光
 時には赤
 時には山吹
 水
 草葉
 群青
 朝を惜しむ袂の紫…
 その光に触れようと意気込んでも
 つ、と光は逃げる
 追えば追うほど触れられぬ
 仮初の宿のうす衣
 ただ待ち詫びて
 焦がれて
 うっとりして
 夢にまで見て
 そして眼覚めて
 また、待ち(あくが)るる
 極彩色の雪たちが降りるのを

 書庫に物語は眠る
 多くの人を寄せ付けない
 闇空の書庫に
 松葉から零れた雪が…降りて来た

「雪の降りる場所」

「雪の降りる場所」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-21

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