11月の世界

 ろうや、と呼ばれているけれど、べつに、なんてこたぁない、ふつうの部屋に、わたしはいて。
 ときどき、めざめた。
 他者はだいたい、自己主張がつよく、わたしはたいてい、自己愛がはげしく、世界は定期的に、やさしさを削ぎ落としてゆくもので、おそらく一三〇日とちょっとの日々は、ひとりのにんげんの思想をゆがめ、だれかのやさしさにすがり、インターネットのなかに救いをもとめながらも、しらないあいだに抹殺されている。
 かなしみ。
 いかり。
 飽和して。
 海に帰るのは、いつか?

 となりで、きみが歌ってる。
 あかるい歌じゃない。
 でも、なんでか、微笑(わら)えた。

11月の世界

11月の世界

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-19

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