3 - 2 - 次の次。

私にも、年相応の痛々しい期待と、そこまで引き摺って来た万能感を残す頃があった。当然そんなことはないという一般的な現実を多くの人が少しずつ知るように、私も、子どもが大人になるように、少しずつ、成長と共に壊れてきた。知った現実を直視出来ない弱さを、ずっと捨てられなかった。


生きたくないというただの感想だけで幽世まで逃げるなんて、なんて軽率なのだろう。首を伸ばせば地に足も付くと云うけれど、きっと私は付かない。そこで生涯の失敗を悔いていればいい。あさい光はきっと暗闇とよく馴染むだろうと、待ちわびているのはお前だけではない。けれど、永遠に迎えは来ないだろう。喜ばしいことさ。私は自重で地獄に辿り着く。
いつかの次の次がここだとして、それでも数カ月前しか偲べない。嗚呼、望ましい滑らかな連続性すら首を絞めた。首を絞める道具にした。次の、次。死した先に記憶など持ち越したくない。君はいない。誰に任せることなく、思い出は自ら殺さなければならない。捨て逝くことの出来なかったそれを殺す為に、私はまだ存在している。けれどどうしようか。私はもう、今すぐに、寝床に深く沈み込んでしまいたい。

―――綺麗に言葉にまとめれば、誰かが綺麗だと勘違いするだろうか。
―――ねぇ、私はそれを試しているのだっけ。

こうして叫ぶだけの毎日だけれど、けれど矢張り、新しい生など望めぬ程に幸せな生涯でした。


浅く乏しい光でも、いっときは誰かの拠り所になれただろうか。
貴方の、君の、意味を遮る代名詞になどならぬ内に、私は記憶から薄れていくことが出来たのだろうか。
どうか何も知らないでいて欲しい。
たとえ、何も知らさないことで傷付けてしまったとしても。
私にはない明日も貴方達にはあるのだから。
君にも、あっていて欲しいと思うのだから。

3 - 2 - 次の次。

3 - 2 - 次の次。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-05

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